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わせだマンのよりみち日記

2018.10.28

郵便と拳銃の不思議な関係とは ~郵政博物館見学記〜

「え!? なぜここに拳銃が展示されているのですか?」

その日、館長と学芸員のお二人にフロアをご案内いただいていた私は、思わずそう口にしました。ここは東京都墨田区の郵便博物館、拳銃とは縁遠いテーマのミュージアム。「昔の郵便配達の様子などが展示されているのだろうな~」とホノボノした気分で訪れていたので、ケースの中を見てギョッとしてしまいました。

ちなみに、訪問直前までイメージしていたのが、以下の写真のような光景でした。この展示風景なら予想の範囲内だったのですが…。なぜ拳銃が展示されているのかは後ほどご紹介するとして、ひとまず館内を眺めてみましょう。


まずは、代々の郵便配達車に、配達員のカバンなどの展示から。カバンの方は、いま使えばむしろオシャレに感じられそうなものもあって、とても興味深かったです。しかも、もとが郵便カバンですから、きっと耐久性もバツグンなはず。アウトドアやサイクリングなどに便利そうですよね。

こちらのポスト、明治41年に登場した「回転式」と呼ばれるもので、ハンドルを回すと投函するための口が見えるようになっています。私は、こう使うものだとは知りませんでした。


郵便と言えば切手。ここでは世界中の切手がズラリと展示されています。とにかく壮観でただただ圧倒されるのですが、それもそのはず、数にしてなんと約30万種。切手ファンの皆さんにとっては、まさに「聖地」ですよね。

郵便局と言えば、私たち庶民にとっては「貯金」の拠点でもありますよね。というわけで、続いては郵便貯金に関する展示です。

左上のそろばん、少し斜めになっているのにお気づきでしょうか。実はこれ、敢えてこのデザインが採用されたものだとか。帳簿をつけながら使うそろばんは、この形が便利なのだそうです。そういえば、税理士の先生が左手で電卓を叩きながら右手でペンを持ってメモを取る姿を見たことがありますが、いわゆる「職業上のスタイル」でしょうか。

そして、ここで冒頭「拳銃」が出てきます。展示にもビックリしましたが、館長の解説で二度驚きました。

江戸時代は飛脚がお金を運んでいたこともあり、郵便配達では、明治初期の時代から「盗賊から身を守ること」が大きな課題。そのため、配達員には拳銃の携帯が許されていたのだそうです。山間部に配達する際には、当然、熊や猪に出くわすこともあったので、猛獣除けという意味もあったわけです。

驚いたのは、この後です。実は、警察官が拳銃の携帯を許可されたのはずっと後で、大正12年とされているとのこと。つまり、郵便配達員の方々は、何と警官より半世紀以上も先に「武装」していたことになるのです。それだけ、昔の郵便配達には危険が伴ったということでしょうか。

いや〜、このエピソードは、本当に驚きました。あまりに印象的だったので、家族はおろか、仕事で乗ったタクシーの運転手さんにお話ししてしまったくらいです。

とは言え、おっかない展示物は、ここだけです。館内は、全体を通して温かみがいっぱい。郵便や通信は、もともと「誰かに何かを届ける」ことが基本。それを仕事にするということは、「人の想いを預かる」ことなんですよね。

ミュージアムですから、展示品の大半は年季が入ったもの。届ける職業の方々の手で使い込まれたアイテムは、彼らの責任感・使命感の深さをそのまま伝えてくれるかのようです。館内の隅々に感じられる「人の温もり」は、受発信した人々だけでなく、「間に入ってそれを大切に伝えた人々」の心も浮き彫りになっているように思えるのです。

郵便博物館は、東京スカイツリー・ソラマチタウンにあります。とても居心地のよいミュージアムなのでおすすめですが、距離的に足を運びにくい方には公式ガイドブックが市販されています。この一冊だけでも魅力の一端を垣間見ることができますので、ぜひどうぞ。

郵政博物館 https://www.postalmuseum.jp/