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わせだマンのよりみち日記

2019.01.27

若者たちは、なぜ「移り住む価値あり」と思うのか ~北海道東川町訪問記

北海道東川町に出かけてきました。今回は初訪問で、滞在時間は4時間ほどとごく短い旅だったのですが、それでも町のファンになってしまうほど惹きつけられました。ここでは、当日の日程の一部をご紹介します。

旭川郊外の街ということで、役所の方と旭川駅で待ち合わせ。駅にある中原悌二郎記念旭川彫刻美術館ステーションギャラリーでは、「暮らしを彩る 北欧の名作椅子と日用品展 織田コレクションから」という展覧会が開催中でした。というわけで、今回の「超・ショートステイ」の幕開けは、こちらの見学です。

椅子研究家の織田憲嗣氏が長年にわたって収集してきた、20世紀の優れたデザインの家具と日用品のコレクション。北欧を中心とした椅子、テーブル、照明やテーブルウエアなど、多岐にわたります。どれも個性的なのですが、特に椅子のいかにも座り心地がよさそうなルックスには感心させられました。

 

せっかくなので、いくつか気になった椅子をご紹介しておきましょう。

見た瞬間に「欲しい」と思ったのが、こちらのチェア。一見複雑なカタチに見えますが、頭から背中、ふくらはぎまでフィットする形状であることに気付きます。すぐ眠り込んでしまいそうですよね。

 

続いては、案内してくださったスタッフの方のイチ推し作品です。写真では少し分かりにくいですが、脚の付け根の金具がおしゃれなんですよ。さりげない高級感が素敵です。

 

そして、最も驚いたのがこの椅子です。何と背もたれがテニスラケットのガットで出来ているのです。ラケットを持った時、「何かに使えそうだな」と思った経験はありませんか? 見るからに適度な弾力が得られそうなオーラを発散していて、座り心地が想像できようというものです。

なお、これらのコレクションは、実は織田憲嗣氏から東川町に順次譲渡されています。つまり、町による公有化が進んでいるさなかなのです。個人のコレクションを自治体が想いごと受け継ぐことはままあるのですが、なかなか粋ですよね。

さて、ひとしきりコレクションを鑑賞した後、そのままスタッフの方の車に同乗させていただきました。向かう先は、「東川町複合交流施設 せんとぴゅあ」です。

こちらは、多様な交流の拠点となる施設として2016年10月にオープン。もともと学校だった建物が利用されています。現在の東川町は、『写真文化』『家具デザイン文化』『大雪山文化』が盛んとか。まず「写真」については、30年も前から「写真甲子園」を開催しているのだとか。近年はその活動が映画化されているほどなのだそうですので、写真好きの方にとっては「聖地」かもしれませんね。

先ほども話題に挙げた家具については、旭川家具の30%を生産する町ですので、こちらも知る人ぞ知る「本場」です。件の織田コレクションの譲渡もひとつの契機に、デザインミュージアムの設立を目指すことになるようです。

今回お邪魔した「せんとぴゅあ」は、この東川町の文化の中心地にあたります。

展示室内には、さまざまな展示がズラリと壮観。なお、こちらでも織田コレクションを愛でることができました。もう少し時間があれば、じっくり学びながら鑑賞できたのですが…。

しばし見とれ、今回の訪問目的である打ち合わせを終えると、あたりはもう真っ暗に。外に出ると、こんな素敵な樹が目に入りました。雪がよく似合いますね!

なかなかゴージャスな飾り付けはみんなでワイワイと賑やかに仕上げ、留学生の皆さんとクリスマスに点灯式をされたのだとか。言われてみれば、気のせいか本当にサマになっていて、温かい雰囲気を発散しているような…。説明を聞いて、思わずもう一度眺めてしまいました。

次にご案内いただいたのがこちら。木をふんだんにあしらった図書館スペースです。

街なかを歩いたわけではないのに、なぜか「なんだか居心地のよい町だな」と感じていたのですが、ここでその理由がはっきりわかりました。秘密は次の写真、子ども用の椅子です。

これらは、「誕生する子どもを迎える喜びを地域の人々で分かち合いたい」という思いから2006年にスタートした「君の椅子」というプロジェクトの椅子なのだそうです。東川町に生まれる子どもたちに、町内の工房で製作された手作りの椅子を贈るもので、毎年デザインが変わるのだとか。

贈られた子どもたちは、物心がつくころに「自分の生まれた町は素敵な椅子の産地なんだ」と知ることになるでしょう。同時に、地域の人たちの温かさにも触れることになります。

やさしい気持ち、温かさ。到着してからずっと、私はそれを感じていたのだと思います。

そしてここにも、素敵な織田コレクションの椅子が。本当に「町の顔」になりそうですね。

ショップもおしゃれです。木の温もりに誘われた気がして、つい木製のペン置きなどを買い込んでしまいました。

そして、この旅の「気持ち面のハイライト」です。お話をうかがって、深く納得したというか、嬉しく感じたこと。

いま、日本の地方都市は、大きな街を除くと例外なく過疎に悩んでいる。私は漠然とそんな印象を抱いていたのですが、東川町は人口が増加しているのだそうです。「あぁ、それ、分かる気がするかも…」と、何だか嬉しくなりました。

今回の旅では、3人の若者とお会いしました。そのうち2人は、静岡と大阪からの移住組。東川町には、彼らのように、ほかの地方からやってきて住みついた人が多いのだとか。スタッフの方によれば、出身地は違っても「東川町が大好き」という思いを共有している人々だそうです。

若い人が増えると、おしゃれな店もできる。街が育つと、また若い人が移住してくる…まさに好循環ですよね。織田コレクションや「君の椅子」プロジェクトが象徴的ですが、地元の横顔を人の心で温めるという粋な計らいも、きっとこの町の空気づくりに大きく貢献していくのでしょう。

何とも短い滞在でしたが、個人的には大きな学びを経験したような感触が。そんな出張となりました。

 


●東川町ホームページ
https://town.higashikawa.hokkaido.jp/
●東川町複合交流施設 せんとぴゅあⅠ
https://town.higashikawa.hokkaido.jp/arts-exchange-center/
●写真甲子園
https://syakou.jp/
●生まれてきた赤ちゃんに椅子を贈る「君の椅子」
https://town.higashikawa.hokkaido.jp/special/chair/