ミュージアムインタビュー

vol.141取材年月:2018年12月滋賀県立琵琶湖博物館

前システムはまだ運用できましたが、早めに移行しました。
「その時」が来た後では遅いですから。
総括学芸員 里口 保文 さん

-I.B.MUSEUM SaaSのご導入は1年ほど前ですが、データベースは長く運用してこられたんですよね。構築当初はどんなご様子だったのですか?

里口さん:私が着任したのは開館翌年の1997年で、その時にはすでにデータベースはありました。取り組み始めたのは、開館前の準備室時代だと聞いています。

-すごいですね。Windows95の時代ですから、開館前から専用のデータベースを構築されるというのは「先見の明」だったのでは。

里口さん:準備室のメンバーの中に、将来はそういう社会になるだろうと考えた方がいたようです。当時は館のホームページをつくり始めたくらいで、サーバに構築されたデータベースに学芸員が自分のデスクのPCからアクセスできたというのは、当時としては確かに珍しかったのだろうと思います。

-その時代、私は別の業界にいましたから、当時のデータベースシステムをうまくイメージできません(笑)。

里口さん:地学のデータベースの画面設計は私が行ったのですが、スラッシュなどを駆使して枠を作っていましたね。

-テキストですよね。

里口さん:そうです(笑)。画面にマウスは対応していなくて、カーソルを使って作業しました。資料整理やデータ入力の担当は別にいて、学芸員はデータを用意して彼らに入力してもらうというスタイルでした。

-構築費用もさることながら、人件費も相当かかっていますよね。いま登録されているデータベースは、手間と予算、それに20年という時間もかけて蓄積したものなんですね…。


-長い年月をかけて構築し、改善してこられたシステムを、I.B.MUSEUM SaaSに移行された理由は?

里口さん:だんだん予算が厳しくなってきて、「いずれシステムを維持できなくなったらどうしよう」となったんです。

-将来の話として…ですね。

里口さん:ええ。「もう無理!」となってからでは遅いので、早めに検討し始めたわけです。

-そこまでして培った環境から移行するのは忍びなかったでしょうね…。

里口さん:そうなのですが、実は従来のシステムで出来ていたことは、ほとんどI.B.MUSEUM SaaSでもできると知って驚いたんですよ。最初は、「この料金でここまでのことができるの?」「本当に?」と半信半疑だったくらいで(笑)。

-ありがとうございます(笑)。確かに、I.B.MUSEUM SaaSも開発費は大変な金額に上っていますが、たくさんのお客様にご利用いただいているので成立しているんです。

里口さん:クラウドの強みですね。時代は変わるものですね。

-本当に…(しみじみ)。でも、ひとつ大切な機能が足りなかったんですよね。

里口さん:複数項目を一度に入力する機能、ですね。I.B.MUSEUM SaaSを導入した当初は搭載されていなくて困りました。入力担当者から「いつできるようになるの?」と聞かれても応えられなくて。

-ご迷惑をおかけしまして…。それにしても、なぜそこまで必要だったのですか?

里口さん:たとえば和名を入力すると、学名をはじめいくつもの情報が一度に全部入るという仕組みが必要だったんです。当館の場合、入力する方はその分野の専門家ではありませんので、ある和名に対応する学名などをいちいち調べて入力しなければならないとなると…。

-手間がかかるだけでなく、ミスも誘発しますね…。でも、I.B.MUSEUM SaaSにその機能がないことは、当時の担当からご説明していなかったのでしょうか?

里口さん:いえ、ちゃんとご説明いただいていましたし、代案のご提案もいただいていたんです。

-学名などの情報をExcelでリスト化する…という方法でしょうか。

里口さん:そうです、その方法です。同じ効果が得られれば代案で行うつもりだったのですが、やはり不便で。

-I.B.MUSEUM SaaSの機能改善は、定期的に会議を開いて、お客様のご要望などの実現性を検討しております。実は、この機能についても、会議で担当者から説明があったんです。

里口さん:そうだったんですか。

-担当者は、利便性や必要性をずいぶん力説したので、そんなに必要なのかと(笑)。背景事情をお聞きして、納得しました。開発してよかったです。

里口さん:ありがとうございますとお伝えください(笑)。私が担当する地質の分野では、地名を入れると地質や地層名、年代などが一気に入りますし、魚類の担当者も「スペルミスがなくなる」と喜んでいます。実現して本当に助かっているんですよ。

-弊社スタッフも喜ぶと思いますので、会議でお伝えしますね。


-さて、こうして長く改善を積み重ねてこられたデータベースですが、今後さらに積み上げたいことなどは?

里口さん:いろいろありますよ。まずはデータ項目の見直しですね。

-I.B.MUSEUM SaaSを導入されたときに、かなり見直しされたと聞いていますが。

里口さん:ええ。担当の方に項目を分野ごとに並べた表を作っていただいて、項目の重複などをご指摘していただきながら統合を進めたんですよ。

-歴史あるデータベースは、整理が必要になりますよね。

里口さん:もともと毎年、分野ごとにデータベースを構築してきたものですし、作った担当者も別でしたからね。他の分野との整合性を考える機会はなかったので、今回の移行はとてもいい機会になりましたし、勉強にもなりました。

-それでも見直されるのですか?

里口さん:はい。たとえば、分野をまたいだ共通項目を作ったのですが、ある分野ではほとんど情報がない項目も含まれているんです。画面にブランクの欄がたくさんあると、入力する側としてはかなり使いにくいそうで。

-項目の位置は自由に変更できますから、あまり使わない項目は後ろのタブに移動してみてはいかがでしょう?

里口さん:入力者にとっては、それでもいいかもしれません。でも、管理者にとっては、データの性質ごとのタブ分けは大切にも思えますので、一度検討してみます。

-ほかには、どんなことがありますか。

里口さん:個人的には、写真をどんどん増やしていきたいですね。画像やサイズがわかる情報が充実していれば、展示の準備のうちデータベースで完結できる部分がかなり増えると思いますので。

-画像も、歴史あるデータベースの課題になりやすいテーマです。あとは、分野ごとの登録情報の均質化とか。

里口さん:当館にも当てはまると思います。これまでは、分野ごとに別々のデータベースを作っていましたので、どうしてもデータベース化のニーズの高いもの、準備しやすいものが先に構築されがちで。でも今回のシステムで、枠は先に用意できましたから、新たに構築する必要がなくなって、登録するだけになりました。これが大きいですね。

-今回、新たに搭載した帳票作成機能なども併せてご利用いただくと、データベースの効果はより高まるはずですよ。弊社も、できる限り細かくサポートさせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

Museum Profile
滋賀県立琵琶湖博物館 琵琶湖の生い立ちや人々の歴史、自然と人々の暮らしの展示に加え、湖の生き物の水族展示も展開する、全国的にも珍しい総合博物館。ロビーからは、琵琶湖自体がメインの展示であるかのように湖を見晴らせます。多様な標本を手にとって観察できる「おとなのディスカバリー」や、同じ趣味をもった人々と集うことができる「はしかけ制度」や「フィールドレポーター制度」などの仕組みが目白押し。多彩な魅力に溢れるミュージアムです。

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