ミュージアムインタビュー

vol.144取材年月:2019年3月石川県西田幾多郎記念哲学館

原稿はもちろん、手紙やメモの類いまで。
システムに登録したいデータはたくさんあります。
学芸員 井上 智恵子 さん

-昨年4月にI.B.MUSEUM SaaSをご導入いただきましたが、まずは経緯からお聞かせいただけますか?

井上さん:私が着任した平成27年には、データベースシステム導入の検討が始まっていました。直前の展示リニューアルで企画展スペースができたことで資料整理が厳しくなりつつあったのですが、よいタイミングで学芸員をひとり増員できることになって。これをきっかけに、あれこれと整理に着手できる環境が整った…という流れですかね。

-人員減の時代に増員とは凄いですね。もしかして、それが井上さんですか?

井上さん:実はそうなんです(笑)。

-着任された時点では、資料データはどんな状態だったんですか?

井上さん:Excelと画像データはありましたね。それをまとめてシステムにアップロードする作業を御社にお願いしたのですが、私の方がほかの業務で忙しくなってしまって、お渡しするデータの準備に手間取って…。ご迷惑をおかけしましたが、おかげさまでデータの公開も実現することができました。

-お役に立てたのでしたら何よりです。とても順調なご様子なので、安心しました。


-さて、システムを導入されての印象はいかがですか?

井上さん:当館の前身にあたる旧西田記念館が1968年にできて以来、ずっと収集してきた資料の情報をサッと引き出せるようになったのは大きいですね。たとえば短歌の掛け軸を探す時、画像を見ながら検索できると、知識でアタリを付ける必要もなくなりますし。ずいぶん快適になりましたよ。

-インターネットで閲覧する外部の研究者の方々にとっても同じことが言えそうですね。

井上さん:そうなんですよね。実は最近、ヨーロッパではちょっとした西田哲学ブームになっていて、西田の書を研究する人が増えているようなんです。そこで、「海外からのアクセスも意識したい」という当館の館長の意向もあって、データ整備には力を入れています。

-素晴らしいですね。資料整理の方は順調ですか?

井上さん:まずまずといったところですね。でも、まだまだやりたいことがたくさんあるんですよ。たとえば、手紙の情報なら、本文を丸ごと入力していきたいと思っているんです。あとは、原稿やメモの類いなども。

-それは凄い。でも、重労働になりますね。

井上さん:大変ですね。でも、実現できれば研究にはとても役に立つと思うんです。たとえば、写真を撮っていたのでいち早く公開できた墨蹟は、他館からの問い合わせが増えました。当館が何を持っているのかを示すことができれば、それはそのまま資料の活用が広がるということを実感しましたので、ぜひトライしたいんです。

-まさに仰る通りだと思いますので、弊社も貢献できるとよいのですが。


-今後はデータの充実がカギとなりそうですね。

井上さん:そうですね。まず、企画展などで使った資料を中心に、情報を足していこうと考えています。

-効率的な方法ですよね。そうした方針は、ほかの館でも耳にします。

井上さん:展示の時には採寸したりしますからね。たとえば、昨年は京都大学での展示があったのですが、データベースを出力したものを持参して現場でいろいろと追記したりしましたので、まずはこういうデータをシステムに登録していきたいですね。あと、外部で持っている資料をデータベース化できたらいいなあ…とか。

-外部のデータですか? 具体的にはどんなものでしょう?

井上さん:西田幾多郎の関連資料は、各地の大学などが所蔵していますので、それらの情報の蓄積もできないかなと考えているんです。

-なるほど。大分類を分けて外部資料を登録すればシステムとしては対応できると思いますが、各方面の協力が必要になりますね。

井上さん:そうそう、それで思い出したのですが、西田幾多郎の遺族宅から直筆のノートがたくさん見つかったんです。学生時代のノートから、大学で教鞭をとっていた時の講義ノートまであって、思想が変化していく過程や変化のきっかけなどがわかるのではと言われています。

-それは凄いですね! 資料整理にも気合いが入りますね。

井上さん:来年は西田幾多郎の生誕150年にあたることもあって、ノートを翻刻、テキスト化して、一部を出版する計画があります。でも、肝心のノートが水損していたものなども多くて…。(写真を示しながら)ほら、こんな状態で。

-これは大変そうですね…。文字が判読できないものもあるのでは?

井上さん:そうなんですよ、特に赤のインクが滲んでしまっていて。赤外線や紫外線など、いろいろな方法を試してみたのですが、残念ながら読み取れなかったものもあります。

-私も、東日本大震災の被災資料の手当てをお手伝いしたことがあります。文化財レスキューに関わった方々から、ノウハウをお持ちの方が見つかるとよいのですが…。

井上さん:もし専門の方がいらっしゃったら、ぜひご紹介ください。

-かしこまりました。自信はありませんが、少し声をかけてみますね。

井上さん:ぜひお願いします。あと、このノートは、少し触ると壊れてしまいそうなものもたくさんあるじゃないですか。こういう時のデジタルデータだと思うので、この場で少しご相談してもよろしいですか?(笑)

-もちろんです(笑)。どんなお話でしょうか?

井上さん:今まではノートを1ページずつ画像にしてきたのですが、中には見開きで見たほうが分かりやすいケースもありまして。左から右に矢印がまたがっているページとか。そこで、システム上で2枚を横に並べて表示できないかな、と。

-(写真を見て)なるほど、これは確かに並べたほうが見やすいですね。IIIF用のビューワを使えば実現できるかもしれませんが、すみません、ちょっとお約束できる段階ではないかもしれません。検討事項とさせていただけますか?

井上さん:いえ、「あったらいいな〜」くらいの話ですので、お気になさらず。でも、ついでに、縦書きの表現ができるといいな〜…とか(笑)。

-社に戻ったらSEに確認してみますね(笑)。おそらく技術的には難しいような気がしますが、どんなシーンでご利用になるんですか?

井上さん:縦書きの繰り返し記号が、横書きのテキストデータだと表現できないんです。

-あ、平仮名の「く」のような記号ですね。確かに縦書きでないと無理ですね…。

井上さん:まあ、「あったらいいな〜」という要望ですので(笑)。

-恐縮です(笑)。

井上さん:でも、このノートのデータは、翻刻テキストが出版されたら合わせて公開することも考えられますので、今年は頑張らないと。

-いただいたご質問は社に持ち帰って改めてお返事しますが、弊社も可能な限りのお手伝いをさせていただきますね。本日はお忙しいところ、貴重なお話をたくさんお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。

Museum Profile
石川県西田幾多郎記念哲学館 日本を代表する哲学者・西田幾多郎の思想や人生を紹介する、日本で唯一の哲学の博物館。思索を導く言葉がパネルやカードになっていて、タブレットで「哲学対話」を楽しむこともできます。安藤忠雄氏設計の建物には、随所に「考えるためのスペース」が。また、西田自身が京都在住時に使用していた書斎「骨清窟」も同じ敷地に移築されていて、当時の空気を感じることもできます。多様なイベントも好評な唯一無二のミュージアムです。

ホームページ : http://www.nishidatetsugakukan.org/index.html
〒929-1126 石川県かほく市内日角井1
TEL 076-283-6600