ミュージアムインタビュー

vol.139取材年月:2018年10月郵政博物館

情報を公開すると、その分野の専門家が集まる。
博物館のデータは、みんなで充実させていくのです。
館長 井上 卓朗 さん
学芸員 本間 与之 さん

-まずは I.B.MUSEUM SaaS を導入いただく前の話から、お聞かせください。

井上さん:とても古い話になりますが、よろしいですか?

-もちろんです。むしろそちらをお聞きしたいです。

井上さん:当館の前身の逓信総合博物館時代に、私は当時の郵政省から希望して博物館に来ました。当時の郵政省には卓上の電子計算機、今のパソコンの原形のようなものがあって、仕事でそれを触っていましてね。そんな経験があったものですから、館に着任後、切手のデータベース構築に取り組むことになったわけです。

-な、なんだか、ものすごく貴重なお話のようですが、それはいつ頃のことなのでしょうか?

井上さん:昭和60年代ですね。情報化に積極的だった当時の郵政省は大型コンピューターを持っていまして、電話回線でつないで運用していたんです。情報を検索する時には数式を入れるようなイメージでした。

-いま50歳代の私が学生の頃のお話ですね…。

井上さん:古い話ですみません(笑)。

-とんでもないです。勉強になります。別に機会を頂戴して、弊社の社員全員に聞かせたいです。

井上さん:それで、平成9年でしたかね、展示全面改装の時に本格的なサーバーを入れて運用する方式になりました。展示室と学芸員室を有線LANでつないで、展示室でも検索ができるように…と。

-凄い。当時としては、まさに最先端ですよね。

井上さん:そうですね、そこまでは良かったんですけどね(笑)。

-何か問題が?

井上さん:切手に加えて、資料や図書、写真などデータを拡充してきたのですが、システムが古くなってもバージョンアップする予算がなくて。ある時、ついにディスクが破損して、すべてのデータが消失してしまったんです。DATだったか、バックアップは取っていたのですが、復旧が難しくて。

-背筋が凍ります…。

井上さん:いろいろな会社さんに相談しても無理とのお答だったのですが、1社だけデータを取り出すことにチャレンジしてくれたんです。

-凄いですね、尊敬します。

井上さん:その会社さんも、「研究を兼ねて」ということだったんですけどね。3~4年かかりましたが、ASP方式のシステムとして復活できました。

-データ構築のエピソードも凄いですが、消失の方も半端ではないですね…。サーバーを手元に置くのをやめられたのも納得です。

-でも、その業者さんのご貢献は素晴らしいですよね。私が言うのも何ですが、引き続きその業者さんのASPシステムを利用された方がよかったのでは。

井上さん:仰る通りなのですが、条件的に解決できない部分が出てしまいまして。利用料が従量課金制だったり、データの一括更新をそのつどお願いしないといけなかったり…。

-なるほど、確かに大きな課題ですね。

井上さん:私どもとしても、とても申し訳ない思いだったんですけどね。

-弊社も同じ思いです…。引き継ぐ責任を痛感します。

井上さん:そんなわけですので、なにとぞよろしくお願いします(笑)。

-かしこまりました(笑)。ところで、システムを実際にお使いの本間さんは、どんなタイミングで着任されたのでしょう?

本間さん:平成19年ですから、ひとつ前のASPのシステムが現役だった頃ですね。

-I.B.MUSEUM SaaS では、課題だった一括更新ができるようになったわけですが、いかがですか?

本間さん:実は、一括登録機能は、ちょうど昨日から使い始めたばかりなんです。

-あれ、そうなんですか? ご導入から1年半くらいになりますが、それまではどうなさっていたのですか?

本間さん:とりあえず1点ずつ登録していました。一括登録はとても便利ですが、操作に慣れていないと少し怖い面もありますからね。

-なるほど。

本間さん:あと、ユーザの利用権限を少し検討したかったこともあります。

-利用権限ですか? 詳しくお聞かせください。

本間さん:一括登録は、管理者権限の機能ですよね。でも、実際に登録するスタッフ全員を管理者にするわけにはいかないじゃないですか。

-仰る通りですね。

本間さん:そこで、一括登録作業を行う時だけ、そのスタッフの権限を変更するようにしたんです。ただし、仮登録までに制限して、本登録は私自身が内容を確認した上で行うというルールを決めて。でも、仮登録した状態で、次の一括登録を行うと、前の仮登録が消えてしまいますよね。

-はい、そうですね…ん? 仮登録の状態を維持できないということは…。

本間さん:結局、私が作業できる時でないと一括登録は進まないということになるわけなんです。

-それはご不便ですね。改善を検討しないと(メモ)。

本間さん:ぜひよろしくお願いします。でも、これからは画像の一括登録も使って行こうと思っているんですよ。操作が難しそうですけど(笑)。

-では、改めての操作説明会を開きましょう。

井上さん:ありがとうございます。ついでに、画像と合わせてPDFファイルも登録できるといいですね。図書資料は特にPDFが有効ですので、システムが保管棚というイメージになります。

-なるほど。実は、PDFの登録は最近ご要望が増えてきましたので、こちらも前向きに検討しますね(メモ)。

-ほかの機能のご利用はいかがでしょう? たとえば、入出庫の情報などはお使いですか?

本間さん:当館は年4回の特別展の大半を所蔵資料で行っていますから、重要な機能です。使いこなしはこれからなんですけどね。

-公開機能と組み合わせてお使いいただくと、現在展示中の資料などを自動的に表示することもできますよ。ぜひご活用ください。

井上さん:現在は主に文化遺産オンラインで公開していますが、I.B.MUSEUM 上での公開も本格的に検討したいところです。公開して多くの人の目に触れると、情報も集まってくるものですからね。

-何かご経験がおありなのでしょうか。ぜひ詳しくお聞かせください。

井上さん:当館は、逓信省時代の資料を所蔵していますが、陸海空すべての交通と通信が対象になるんです。

-幅が広すぎて大変そうですね。

井上さん:そうなんです。おっしゃる通り、船や航空、灯台、街道や飛脚など、範囲がとても広いのですが、情報を公開するとそれぞれの分野の専門家からご助言をいただけることが多いんです。そんなプロセスを経て情報が正確になっていくことは、意外によくあるものなんですよ。

-改めてじっくりうかがいたいお話です。最後に、今後の方針などについて。

本間さん:データベースを充実させて、公開点数を増やしていきたいですね。切手以外はかなり出来上がっていますので、今後は切手についても頑張ります。

井上さん:早稲田さんはシステムを通じて学芸員をサポートすることを目指しておられますが、ぜひ頑張っていただかないと。管理システムの操作スキルを学芸員資格の条件の一部にするくらいの勢いで(笑)。

-頑張ります(笑)。そのためにも、ぜひ今後も学ばせてください。今日は本当に勉強になりました。ありがとうございました。

Museum Profile
郵政博物館 平成26年に東京スカイツリータウン・ソラマチに移転オープンした、郵便と通信に関する博物館。明治35年、万国郵便連合加盟25周年の記念事業として開館した郵便博物館がルーツです。郵便にまつわる歴史や物語を7つの世界に分けて紹介する常設展示は発見の宝庫で、日本最大となる約33万種の切手展示も壮観。デジタル技術を駆使した展示も充実していて、人と人との心のつながりを実感させてくれる個性と温かみにあふれる博物館です。

ホームページ :https://www.postalmuseum.jp/
〒131-8139 東京都墨田区押上1-1-2東京スカイツリータウン・ソラマチ9F