ミュージアムインタビュー

vol.184取材年月:2022年6月柏崎市立博物館

別々の目的で構築された、ふたつのデータベース。
ゆくゆくは一本化するために、準備を進めています。
係長(学芸員)   伊藤 啓雄 さん

-I.B.MUSEUM SaaSをご導入いただいたきっかけは、小学生の地域学習の副読本と「偉人と文化財」データベースをコンテンツの二本柱とした『柏崎市WEBミュージアム』の構築でしたね。

伊藤さん:ええ。市の企画政策課が中心となって立ち上げた事業で、当館は文化財情報の担当という位置づけでしたので、撮影などの作業もお手伝いしました。平成26年から28年のことですね。

-WEBミュージアムに博物館の資料情報を提供するというお立場だったわけですね。

伊藤さん:そうですね。当時、当館では財団の運営から市の直営へと体制変更の準備が進んでいた頃でして。教育委員会の文化財業務の移管などがWEBミュージアムの構築時期と重なって、かなり忙しい時期でした。

-ご苦労が偲ばれますが、その甲斐あってWEBミュージアムも素晴らしい出来になりましたね。I.B.MUSEUM SaaSは主にWEBミュージアムのデータベース部分を担うものとしてのご導入となったわけですが、すでに独自の収蔵品データベースをお持ちでしたよね?

伊藤さん:はい、地元企業がMicrosoft Accessで作ってくださった収蔵品管理用のデータベースを利用していました。WEBミュージアムでの公開用データベースは別で構築したんです。

-その後、管理用のデータベースもI.B.MUSEUM SaaSに移行されましたが、それまで数年のタイムラグがありました。その間、Access側とWEBミュージアムとふたつのデータベースがあったのですね。

伊藤さん:そうなんです。最終的には、OSのバージョンアップでAccessのデータベースが使えなくなると知ったタイミングで、全面移行に踏み切りました。業者さんから「これからはクラウドサービスの時代ですよ」とアドバイスをいただいたこともありまして。

-なるほど。そこで、WEBミュージアム用としてご契約いただいていたI.B.MUSEUM SaaSを選定していただいたということですね。

 



-そんな経緯で、現在はWEBミュージアム用と収蔵品管理用として2種類のデータベースをI.B.MUSEUM SaaS上で運営されています。いずれは一本化する方向でお考えなのですよね。

伊藤さん:そうですね。収蔵品データを更新したら、そのままWEBミュージアムに反映できるところまでは漕ぎ着けたいですね。まだこれからの段階ですが、御社のサポート担当の方にはいろいろと相談させていただいています。

-どうぞ何なりとお申し付けください。一本化構想の実現にあたっては、何か課題があるのでしょうか。

伊藤さん:はい、その前にもう少し検討しなければならない部分が残っています。

-どんなことでしょう?

伊藤さん: WEBミュージアムの準備当時は、『柏崎ふるさと人物館』という施設がありましてね。平成30年3月に閉館したのですが、WEBミュージアムでも「地域の子どもたちに地元の偉人について知ってもらおう」という想いがあったんです。

-人物情報については、WEBミュージアムにも特集コンテンツがありますよね。そう言えば、当時のご担当の方も、人物のデータをとても大切に考えておられるご様子でした。

伊藤さん: そうなんです。特に人物からの検索を便利にお使いいただけるように作られているのも、そのためなんですよ。

-なるほど。それぞれのデータベースでは思想が違うので、一度すり合わせが必要となるわけですね。

伊藤さん:ほかにも、WEBミュージアムでは小学生向けの副読本を掲載しているように、学校での利用を考えて小学校区別に検索できるように作ったのですが、収蔵品データベースにはない項目を使っているんです。このあたりも調整が必要で。

-データ項目から見直すとなると、本格的に検証が必要になりそうですので、弊社もお手伝いできればと思います。さて、収蔵品データベースとしての使い勝手はいかがですか?

伊藤さん:やはり検索機能が使いやすいですね。それから、以前のデータベースでは備考欄に入力していたような情報を、専用の項目で管理できるのも便利です。ただ、曖昧な情報を登録する際には、逆に少し迷うことがあります。

-項目を厳格に作り過ぎると登録が難しくなりますし、かと言って柔軟性を持たせ過ぎると今度は検索に影響しますから、難しいですよね。一本化の際には課題となる可能性もあるかと思いますので、お困りの時はサポート担当にご相談ください。

伊藤さん:ぜひよろしくお願いします。

-ほかに気になる点などはございませんか? 使ってみたい機能とか。

伊藤さん:新しい資料を受け入れる際には文書で手続をするのですが、そうした書面もシステム上で作ることができれば便利なので、帳票機能は使いこなせるようになりたいですね。しかし、当館は市の仮想環境でシステムを運用している関係上、システム内のデータを通常利用の環境へダウンロードするのにひと手間かかるのが少し気になります。こればかりは仕方がないと思うのですが。

-そうですね、やむを得ない部分かと思います。そうしたご不便を上回る機能をお届けできるよう、細かい機能を改善して参ります。

伊藤さん:細かい機能と言えば、新旧の字体の違いを気にせずに登録できるようにしたいんです。たとえば、当館のデータでは「刈羽郡」という地名が頻出するのですが、過去の資料では「刈」に草かんむりを付けた「苅羽郡」と表記する例が多くあります。どちらの字で検索してもヒットさせることは可能でしょうか。

-可能です。異体字・類義語検索機能を使えば、館に必要な環境を作ることができますよ。市町村合併で新旧の自治体名とか、生涯に何度も改名した戦国武将の名前とか、あらかじめご登録いただけば大丈夫です。

伊藤さん:それはありがたいですね。操作を教えていただけますか?

-かしこまりました。では、改めて説明会を開催させていただきますね。

 


-ところで、出発点となったWEBミュージアムのご利用状況は、その後いかがですか? 以前、市内の学校の先生にお話を伺ったことがあるのですが、「ぜひ授業で活用したいけれど、準備に時間がかかる」とのことで。

伊藤さん:当館でも、アクセスを解析して状況を把握していきたいと思っていたところなんですよ。授業でどのくらい使っていただいているかまでは分かりませんが、副読本の改定に伴って内容の差し替えなども行いましたので、継続的に利用されているように思います。

-それは何よりです。先生方にはぜひ積極的にお使いいただきたいですからね。

伊藤さん:今後は、端末やネットワークを整備するGIGAスクール事業も本格化していきますから、期待できると思いますよ。

-今後が楽しみですね。ところで、WEBミュージアムとは別扱いのコレクション検索サービスとして、収蔵品データベースのインターネット公開のご予定などはいかがですか。

伊藤さん:そちらもぜひ進めていきたいと考えています。実は、企画展のパネル用として作成した解説文のテキストデータを、公開用にも使えるように登録を始めたところなんです。

-それは素晴らしいですね。弊社もぜひサポートさせていただければと思います。本日はご多忙の中、ありがとうございました。

 

写真提供:柏崎市立博物館

Museum Profile
柏崎市立博物館 柏崎市民の憩いの場である赤坂山公園に佇む、「米山をとりまく自然と文化―そして創造のまち―」をテーマとした博物館。霊山・米山へといざなう常設展示室では、里山の豊かさや米山信仰を中心に、ジオラマや映像を交えて分かりやすく展示。地元・柏崎の先人たちについても検索できるほか、原寸大ナウマン象の骨格標本やプラネタリウムも大人気。公園エリアを含めて、家族や友人たちと丸一日ゆったりと楽しめる地域のランドマークです。

〒945-0841
新潟県柏崎市緑町8番35号(赤坂山公園内)
電話:0257-22-0567
ホームページ:https://www.city.kashiwazaki.lg.jp/k_museum/