ミュージアムリサーチャー

ミュージアムレポート

このサイトでも何度か紹介しております「陸前高田被災資料デジタル化プロジェクト」。今回、岩手県立博物館様の「日曜講座」より、当プロジェクトに講演依頼をいただき、メンバーが講師を務めることになりました。講師は2名、うち1名が当社の社員。講演で喋るなんて初めてということで、心配で仕方がない私は、親のような気分で付き添うことにしました。

東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田市立博物館様の写真資料を中心に、洗浄からデジタル化までの処理を行うのが件のプロジェクト。岩手県立博物館様は、窓口としてプロジェクトをサポートしてくださっています。今回、「平成の大津波被害と博物館 ~被災資料の再生をめざして~」という企画展が開催されていることもあって、「日曜講座」のテーマが文化財レスキュー活動となったようです。

 

 

 

 

 

 

いざ本番。パソコンとプロジェクタの接続に手間取ってしまい、開始前からハラハラしましたが、いざ始まってみるとなかなか堂々としたものでした。聴衆の様子が気になる私はチラチラと後ろを振り返ってみましたが、参加された皆様はとても熱心に話に耳を傾けてくださっているご様子でした。

特に印象的だったのは、質疑応答でお礼の言葉を発する方がおられたことです。地元の文化を守るのに、遠く離れた東京の若い人々が汗を流していることに対して、感謝しておられるのでしょう。そう思って会場を見渡してみると、メンバーの親くらいにあたる年齢の方がほとんど。講演に対する高いご関心と、頑張る若者たちへの暖かい眼差しが感じられました。他のメンバーにも、ぜひ見せてあげたかった…。

さて、講演の内容は、海水損した写真を乾燥させ、クリーニングし、デジタルデータ化して現物を保管するまでの作業過程の紹介が中心でした。作業風景を写した写真や、実際の作業道具を示しながらの、かなり具体的な説明です。前例のない作業であるため、メンバーが試行錯誤を繰り返して最適な方法を確立した様子、また、くっついてしまったガラス乾板を時間をかけて剥がす様子など、地道な作業の数々がスライドに映し出されるたびに、参加者の多くが大きく頷いておられました。

 

 

 

 

手前味噌ではありますが、公平に見て、講演は大成功だったと思います。私自身はまるで出番がなく、単なるおせっかいな同伴者で終わったことが、何よりの証拠です。また、テーマはプロジェクトの活動紹介だったのですが、内容以上に、活動に対するメンバーたちの真摯な姿勢を知っていただけたことが、何よりも嬉しく思いました。今回の講座が、「文化を守ろう」という思いが広がる一助となることを願ってやみません。

貴重な機会を与えてくださった主催者・ご関係各位に、改めてお礼を申し上げます。この講演は、実に良い経験となりました。本当にありがとうございました。