ミュージアムリサーチャー

ミュージアムレポート

博学連携という言葉が誕生してすでに久しい。今、学習指導要領の中では、鑑賞の単元で地域の美術館を活用することが推奨されている。また博物館側にも、文部科学省や中央教育審議会の施策として学校と連携を図るなど、教育事業への貢献が求められている。相互の連携は必須の方向にありながら、現実として理想的には進んでいないのが現状だ。

このようななか、千葉県では、美術館と学校と大学の三者が協力して博学連携を行う試みがなされている。千葉県立総合教育センターのカリキュラムサポート室の提案によって始まった研究会は、このカリキュラムサポート室のメンバーのほか、千葉県立美術館職員、県の小中学校の美術科専科の教員、大学の博物館教育研究者(筆者)で構成されている。多くの博学連携は博物館と学校の二者で行われるが、この取り組みは県の教育センターと大学の参加によって、より汎用性のある連携カリキュラムを作ることを目標に進められてきた。

研究会ではまず、博学連携を行うにあたっての美術館側、学校側双方の課題を話し合った。そのなかから、①物理的問題の解決(時間・距離・資源)、②効果的なカリキュラムの開発、③評価との連動、この3点が欠かせないこととして浮かび上がった。実際、各地の事例をみても、両者の間の物理的な隔たりを埋める手だてに苦慮しているケースが多々見受けられる。この課題を解決するには、有効なツールと評価を持ち込み、有機的にはたらかせることが重要だと考えたのだ。

ここで新しくツールとして導入したのが、COM教材だ。COMとはCognitive Orientation of Museum(博物館認知オリエンテーション)の略称で、美術館の作品の紹介や、その鑑賞法の理解促進などを目的としている。総合研究大学院大学によって開発されたこのCOM教材は、事前に行われた千葉県立美術館での実験によって、利用効果が確認されている。また、この実験は、美術館と大学が協力関係を築く契機ともなった。

今回は、このCOM教材を利用して、ICTを活用した「美術館来館準備学習カリキュラム」を開発する。パソコンを操作してまなぶCOM教材は、美術館訪問の予習授業に非常に適しており、子どもたちは館訪問の理由や意義を確認したり、館内で実物の作品を鑑賞するときの方略(まなび方)を身につけたりすることができる。このように効果的な事前学習ツールとして利用するだけでなく、館への訪問が難しい学校には美術館からの出張授業をCOM教材の内容に組み込むこともできるため、さまざまな用途を想定したバリエーション豊かなカリキュラム設定が考えられる。

現在、学校種別や学年別の学習内容を踏まえて、COM教材とそれに連動したカリキュラムの具体的な開発が進んでいる。将来的には、ティーチャーズパックとして各学校に提供される予定だ。今後も美術館、学校、地域のセンター機関、そして大学が垣根を越えて、地域の子どもたちに美術鑑賞の面白さやそこでの感動を伝えていくべく、挑戦を続けていく。

 

 

 

 

 

 

Museology-Lab.<br />
奥本 素子(総合研究大学院大学)

 

Museology-Lab.
今回執筆をお願いした奥本様が所属するMuseology-Lab.とは、博物館学を学ぶ若手研究者の自主的な研究会です。
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