ミュージアムインタビュー

vol.113取材年月:2015年12月遠野市立博物館

常勤と非常勤の学芸員がうまく役割分担すれば
データの整備はより円滑に進むと思います。
博物館係長(学芸員) 長谷川 浩 さん
学芸員 小原 志穂 さん

-I.B.MUSEUM SaaSのご導入は1年半ほど前ですね。

長谷川さん:そうですね。システム導入の検討を始めたのは7~8年前になりますけどね。

-それはずいぶんと長いですね。当時はどんな様子だったんですか?

長谷川さん:当館は昭和55年に開館しまして、紙の台帳とカードをずっと併用してきました。5か所ある収蔵庫ごとに台帳があって、博物館内の収蔵庫の前室に置かれていて。

-それは厳しいですね。探すだけでひと苦労だったでしょう?

長谷川さん:ええ、特に問い合わせへの対応にはとても時間がかかっていました。それで「これをなんとかしなきゃ」ということになりまして。

-ご苦労、お察しいたします…。でも、導入を検討されてから実現まで間がありますが、やはり予算の問題で?

長谷川さん:そうですね。当時はどこの会社さんに相談しても数百万円はかかりましたからね。

-弊社も I.B.MUSEUM SaaS のサービス開始前ですね。

長谷川さん:大きな金額ですから、5年、10年と長期計画にしたり工夫したのですが、実現はしませんでした。やはり導入は難しいのかな、と思っていた頃に、御社からクラウドのご案内をいただいたんです。

-なるほど。逆にタイミングが良かった、と。

長谷川さん:金額のハードルも一気に下がりましたから、予算の問題は解消されました。あとはセキュリティ面で検討課題が残ったのですが、「手元に置くよりむしろ安全なんです」と担当部署に説明して。いただいたデータセンターの資料などを参考にさせていただきましたよ。

-お役に立ったなら何よりです。あとは入札やプロポーザルなどの業者選定の段階ですが、確か割とすんなりお申し込みいただきましたよね。

長谷川さん:ええ。この金額でこれだけの機能のあるサービスは他にないですしね。

-ありがとうございます。

-長くご苦労を重ねられた末の導入となったわけですが、実際にお使いになってみて、いかがでしたか?

長谷川さん:まず、分類と項目の設定を、御社の営業スタッフの方が丁寧にやってくださいました。Excelから一括でも登録できますし、運用開始時点では問題なかったと思いますよ。

-館の中でも、今は小原さんが一番使ってくださっているそうですね。初めて画面をご覧になった時はいかがでしたか?

小原さん:私は去年の4月に着任したのですが、すでに基本データが入っている状態でした。「どうやって使うんだろう?」と戸惑う機能もありましたが、そんなに困ることはなかったです。

長谷川さん:早稲田さんも操作説明に来てくだいましたしね。

-本当は、その疑問に思われるような点をなくさなければならないのですが…すみません。

小原さん:御社がご提供くださるマニュアルのほかに、前任者が使い方を説明する資料を作ってくれていましたから、大丈夫ですよ。

-恐縮です。それで、今はどのような作業をシステムで行っていらっしゃるんですか?

小原さん:より詳しい情報の登録ですね。写真も含めて。

長谷川さん:写真は、紙の資料カードをスキャンして、データを加工しているんですよ。

-え~! 点数もかなりあるでしょうから、大変では?

小原さん:手間はかかりますけどね。

-データの登録を、企画展の準備のような業務と違って「期日」がないですから、先延ばしになってしまうケースが本当に多いんです。何か着実に進めるためのコツがあるのでしょうか?

小原さん:特別なことはないですね。特別展がない期間などに、一人で集中して作業しています。年度の初めに職員それぞれの役割を決めるのですが、そこで私がデータ整備の担当になりましたので。

-それでも、よくお一人で…。

長谷川さん:そうですね、本当によくやってくれていると思いますよ(笑)。

小原さん:ありがとうございます(笑)。

長谷川さん:コツと言えば、当館の体制もデータ整備には有効なのかもしれませんね。

-と仰いますと?

長谷川さん:常勤学芸員が私を含めて2名、非常勤学芸員が彼女1名なのですが、行政事務についてはすべて常勤学芸員が担当しています。その間、彼女にデータ整備をお願いできるということもありますね。

小原さん:全員常勤だと、むしろ役割分担が難しくなるかもしれませんよね。

-なるほど。ところで、I.B.MUSEUM SaaSについて、何か「残念な点」はありませんか?

小原さん:特にないですけど…。

-本当に? きっと何かおありかと。

小原さん:そうそう、大分類が変更できないことかな? 変えたいケースが割とあるのですが。

-なるほど。I.B.MUSEUM SaaSでは、大分類ごとに異なる項目体系を用意できますが、「ある分類では存在していた項目が別の分類では用意されていない」というケースでは、大分類を変更すると行き場がなくなるデータが出てくるかもしれません。ですので、仕様上は「変更できない」としているんです。

小原さん:そうなんですか…。

-あ、でも「どうしても」というときのために、裏技はあるんですよ。それはこの「かしこい使い方」をご覧ください(画面を示しながら)。ここに詳しく記載しています。

小原さん:そうなんですか。では、後ほど。

-他にはいかがです?

小原さん:そうですね…。たとえば、資料番号「2」で検索すると、「2」がつく番号がみんな出てきてしまうのが困るかな?

-そんな時は、資料番号が「2」と「等しい」という条件を入れると、「2」だけを取り出ますよ。(システムを示しながら)ほら、こんな感じで。

小原さん:なるほど!

-やっぱり、操作説明が不足していますよね。もっと深くフォローしないといけないですね…。

-台帳とカードからシステムに仕事の道具が変わったわけですが、その点はいかがですか?

長谷川さん:今までは収蔵庫まで見に行っていたのが、自分の席でできるようになったわけですから、時間のロスは減りました。一度調べに行くと、1時間くらいかかることもありましたから。

-お役に立っているようで何よりです。では、今後の課題は?

長谷川さん:まずはデータの精度を上げることですね。30年も経つと、古い台帳と最近の台帳で違いが生じていることもありますから。

-そうですよねえ(しみじみ)。

長谷川さん:それから、台帳と現物を照合して、データをさらに確実なものにしていきたいです。

-現物ですか? 小原さんに相当ご負担がかかるのでは…?

長谷川さん:もちろん、専任職員2人で3年がかりくらいの作業量を想定していますよ。市役所全体の人員雇用計画に、この事業の担当者を組み込んでいただけるよう今後も協議を続けていきます。

-なるほど。導入のご準備から今後のビジョンまで、実に計画的で着実に進めておられますね。本日はとても勉強になりました。ご多忙の中、ありがとうございました。

<取材年月:2015年12月>
Museum Profile
遠野市立博物館 「民話のふるさと」岩手県遠野市に、日本初の民俗専門の博物館として、昭和55年に開館。『遠野物語』を軸に、人々の暮らした文化、歴史の展示が充実している博物館です。大画面のシアターやジオラマ・スクリーン、人々のぬくもりが伝わってくる民具などが印象的。建物は、図書館と遠野文化研究センターが一体となっていて、興味を持ったらその場で深く調べられる環境も。遠野や民話をじっくり学びたい方には、まさに理想的な文化施設です。
ホームページ : http://tonoculture.com/tono-museum/
〒028-0515 岩手県遠野市東舘町3-9
TEL:0198-62-2340