ミュージアムインタビュー

vol.131取材年月:2017年11月横山隆一記念まんが館

サポートがあるとないとでは、実現できることも違ってくる。 遠く離れた館同士がノウハウを共有できる環境を。副館長   田所 菜穂子 さん
主任    寺尾 志保 さん

-田所さん、本当にご無沙汰しております。12年前、このインタビュー企画の記念すべき第1回として取材させていただいて以来ですね。

田所さん:もうそんなになりますか。なんだか、懐かしいですねぇ(笑)。

-このインタビューも、もう130回を超えました。あの時、前例のない中でお引き受けくださったことが礎になっているんですよ。しかも、職場が変わられても、こうしてまたご縁があって…。本当に感謝しております。

田所さん:いえいえ。そう言えば、代表になられたばかりでしたよね。

-はい、右も左も分かりませんでした(笑)。今回は、あの頃よりも詳しくお話を伺えると思いますので、よろしくお願いいたします。

田所さん:こちらこそ。

-では、さっそく今回のご導入時の状況から。従来のシステムはとてもよくできたものだったと聞いていたのですが。

寺尾さん:ええ、当館の職員も一緒になって作り込んだものでしたから。やりたいことが機能として盛り込まれたシステムでしたね。

-なのに、なぜI.B.MUSEUM SaaS を?

寺尾さん:理由はいくつかあります。まず、作り込みに関わった職員以外には、少しとっつきにくい面があったんです。たとえば、全文検索ができないとか。

-なるほど。

寺尾さん:「この情報はこの項目にある」と分かっていれば使いやすいのですが、新しく着任した職員にはハードルが高いですからね。

-導入されたのは15年ほど前とのことですし、当時はそれが普通でしたね。これも、時代の移り変わりですね。

-いくつか理由があると仰いましたが、ほかはいかがでしょうか。

寺尾さん:あとは、コスト面ですね。以前のシステムは、サーバの買換えやOS変更に伴うシステムの改修など、何年かおきに結構なお金がかかっていました。御社のクラウド型システムは、いつも送ってくださる資料やホームページを拝見しては「いつかこういう方向に変えないと」とは思っていたんです。

田所さん:もうひとつ大きかったのは、多言語化ですね。最近はインバウンド対応が求められるようになっていますが、早稲田さんの「ポケット学芸員」なら多言語のご案内ができますから。

-タイ語でも解説が配信されていて、充実していますよね。でも、予算がついても製品選びの手続きは大変だったのでは?

寺尾さん:市の自由民権記念館で先に導入されていたことが大きかったですね。検討プロセスも参考にさせていただきました。

田所さん:類似サービスの比較表も作りましたよ。アプリも含めて「これしかないね」と自分たちでも確認できました(笑)。

-なるほど(笑)。もともとアプリはシステムの追加機能だったのですが、貢献したんですね。

寺尾さん:アプリといえば、ひとつアイデアがありまして。

-なんでしょう?

寺尾さん:来館者に手書きでお願いしているアンケートが簡単に入力できるようなものがあったらありがたいかな、と。展示を見終わったらタブレットが置いてあって、タッチして回答する…というシステムなら、皆さん気軽にご協力いただけると思うんです。

-それはいいアイデアですね! さっそく検討してみますね。

-さて、実際の運用で気になることなどはありますか?

田所さん:どうでしょう。システムへの注文と言うより、私たち自身の問題かな?

寺尾さん:そうですね。I.B.MUSEUM SaaS は項目を自由に変更できる機能がありますが、「もっと効率良く作業できるスキルをつけないと」と思います。当館の場合、システム担当は学芸員ではないので、やはり項目のカスタマイズは恐る恐る…になってしまいますから。

-サポートが不十分ですね。申し訳ございません。

田所さん:いえいえ、システムにはある程度の期間にわたって使ってみないとわからないことがありますから。

-たとえば、導入1年後にヒアリングを実施して、項目の修正などを再提案する…というようなお話でしょうか。

寺尾さん:そうです。それをやらないと、本当は改善の余地があっても諦めてしまって、システムに合わせて「人間をカスタマイズ」してしまう…みたいな(笑)。

-なるほど(笑)。本当はシステムの機能で対応できることでも、不便をお感じになったままお使いいただいているのだとすれば、大変申し訳なく感じます。

田所さん:たまに御社の方がひょっこり顔出してくださるので、その時にお話しできればいいんですけどね。

寺尾さん:そうですね、できれば3か月くらい前に予定がわかっていたら、相談事項をまとめておいたりできるのですが。

-10年以上が経っても零細企業のノリのままで、ホントにすみません(汗)。もう少し計画的にサポートできるように工夫しますね。

寺尾さん:項目の立て方ひとつを取っても、御社は他館の事例など豊富なノウハウをお持ちだと思いますので、そういうアドバイスがいただけたら嬉しいです。

-確かに。そこまでやれてこそ「専門企業」ですよね、頑張ります。

寺尾さん:そう言えば、御社は学芸員の業務ノウハウの共有サイトのようなものを運営されていましたよね。

-「学芸員オンライン」ですね、はい、運営しております。とは言え、なかなか思うように更新できないのが現実なのですが…。

寺尾さん:I.B.MUSEUM SaaS の中に、コミュニティのようなものがあったらいいと思ったんですけど。

-詳しくお聞かせください。

寺尾さん:たとえば、御社に質問するほどのことではないけれど、「これどうするんだっけ?」という話ができるユーザ同士の情報共有の場…みたいな。

-なるほど!(メモ)

田所さん:ほかの方々が何に悩んでいるか、お互いに分かるといいですよね。高知はミュージアムのネットワークがあって、勉強会のようなこともやっているのですが、小規模な組織だと参加できないことも多くて。

-参加したくても、なかなか持ち場を離れられないですもんね…。

田所さん:そういう館にとって、インターネット上の情報交換、ノウハウ共有の場はとても有効だと思いますよ。

-I.B.MUSEUM SaaS ユーザ館が増えたからこそ成立する話ですので、こちらも検討してみますね。ところで、資料情報のインターネットでの発信については、いかがですか?

田所さん:画像については、当館は権利関係のハードルが高いので、ちょっと先になるでしょうね。当館の3階ではマンガが無料で読めますので、どんなマンガがあるかをインターネット上で公開するのはよいことだと思うのですが。

寺尾さん:データの見直し、重複などの整理が要りますからね。

-となると、やはりサポートが重要ですね。

寺尾さん:そう思います。サポートがあるとないとでは、実現できること自体が大きく変わるのではないでしょうか。

-お話をお聞きしていると、システムは導入が出発点だと痛感します。

田所さん:これからも是非よろしくお願いしますね。

-はい、サポート強化は明確に課題と意識して頑張ります。本日はご多忙のところ、本当にありがとうございました。

 

<取材年月:2017年11月>

Museum Profile
横山隆一記念まんが館 戦前から戦後の激動期に国民に笑顔を振りまいた「フクちゃん」の作者で、日本の漫画家として初めて文化功労者となった横山隆一氏の生誕の地・高知に2002年に開館。常設の「フクちゃん通り」は、まさにあの作品世界が再現されていて、童心に帰って楽しめます。全長9メートルに及ぶご本人デザインのオブジェ「魚々タワー」や、漫画を中心に10,000冊以上を無料で閲覧できる「まんがライブラリー」なども大人気。漫画王国・高知の中心的存在です。
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