ミュージアムインタビュー

vol.138取材年月:2018年8月久留島武彦記念館

仮に将来、館長や私が異動になったとしても、
その後も継続できるデータ環境を作っておきたいですね。
主事・学芸員 藤原 明奈 さん

-いきなり私事で恐縮ですが、私はボーイスカウトで活動した経験がありまして。有名な児童文学者であると同時に、日本にボーイスカウトを紹介した「父」の一人でもある偉人の功績を顕彰する館とお聞きして、楽しみにしていました。ぜひ展示を見学させてください。

藤原さん:もちろんです。のちほどゆっくりご覧になってください。

-ありがとうございます。さて、こちらは昨年春に開館されましたが、資料の収集などは開館前からなさっていたんですよね。

藤原さん:ええ、館長は大学院生の頃から研究を続けていたそうです。ここ玖珠町では、久留島武彦と言えば郷土の偉人としてその名前は知られているのですが、具体的にどんな人かという点は認知がいまひとつで。そこで、館長が講師となって「久留島学講座」を開催したり、町で「久留島武彦研究所」を作ったりしていたようです。

-私も、「日本にボーイスカウトを紹介してくれた人」とは習いませんでしたので、広く知らしめるべきだと思いました。藤原さんはいつごろから関わっておられるのですか?

藤原さん:開館の半年ほど前に着任しました。資料はExcelでリスト化されていたのですが、資料の種類が多くてたくさんのファイルに分けて管理されていたので、見つけるのが大変で。旧・久留島記念館で作成したリストや豊後森藩のリストなどは紙のファイルもありましたし、実物はあってもそこに記載されていない資料もあったりして、整理が必要な状態でしたね。

-なかなか大変そうですが、さまざまなものが入り交じっているのは、長く管理されてきた証でもありますよね。

藤原さん:そうですね。でも、こっちの台帳に記載して、あっちのExcelに入力して…というのは、少し大変ですからね。最近も、学校や公民館の倉庫などで新たな資料が見つかったりしましたし。

-記念館の開館が話題になって、「そう言えばウチにも」という感じで資料が集まったのでしょうか。ただでさえお忙しい時期に、かなりハードな状況だったのですね。

-そんな中でも、現在は3,000点近くの資料データをインターネットで公開されていますよね。しかもほとんどが画像付きですから、当時の状況をお聞きするとなお驚異的なお仕事ぶりだと思います。

藤原さん:ありがとうございます。

-いまはお困りのこととかはありませんか?

藤原さん:システムそのものでは特にないですね。ただ、開館から半年後にインターネット接続の環境が変わりまして、画像のアップロードなどの作業ができる端末が1台になってしまったんです。画像ファイルをアップロードするのにも、いろいろと手続きが必要になって…。

-自治体のセキュリティが厳しくなったんですね。

藤原さん:こればかりは仕方がありませんからね。

-新規のデータ登録は、今でも頻繁にあるのでしょうか。

藤原さん:はい、かなりあります。久留島武彦は交流範囲がとても広く、いろんな地方に赴いて活動していましたから、今も各地で資料が見つかっているんですよ。

-と言うことは、その都度システムに登録しておられるのですか?

藤原さん:そうなんです。職員のシフトなどの関係で、ためてしまうと大変なので、できるだけマメに登録したいんですよね。これについては、地元の業者さんが提案してくださることになっています。

-では、システム上での操作面はいかがですか? 問題はありませんか?

藤原さん:そう言えば、著者情報の登録をする際に項目を変更しようとしたのですが、操作方法が分からなかったことがありました。去年までいた職員がシステムにとても詳しくて、専用のマニュアルを作ってくれたのですが、まだ全員で使いこなすレベルにまでは達していなくて。

-弊社のサポートも十分ではないようですね…申し訳ございません。皆さんがお集まりになれる時に、そのマニュアルの使いこなしも視野に入れながら改めて操作説明会を開かせていただければと思います。

藤原さん:よろしくお願いします。

-では、先ほど仰っていたバラバラのExcelファイルが一元化された点はいかがでしょう。お役に立っていますか?

藤原さん:もちろん。当初は一部のデータに抜けがあったり、写真がまだ登録できていなかったりしましたが、かなり使えるレベルに整ってきました。

-画像データは導入後に整備されたのですか?

藤原さん:そうです。臨時職員の方々に本の表紙のスキャン作業をお願いして、少しずつ登録を進めました。

-すごいですね。今日もそうですが、来館者へのご対応などでお忙しいでしょうに…。本当に頭が下がる思いです。

-今後の見込みはいかがでしょう。まだデータは増えていきそうですか?

藤原さん:そうなるでしょうね。当館は、町で唯一の博物館ですから、受け入れる資料は必ずしも久留島武彦関連のものとは限りませんしね。

-なるほど。たとえばどのような資料が?

藤原さん:たとえば、町の北にある中津市の耶馬渓が日本遺産に認定されたことを受けて開催された企画展の資料とか、朝鮮半島にわたって初めて綿の栽培に成功した玖珠町出身の明治期の外交官・若松兎三郎の書籍とか。だんだん幅が広くなってきていますね。

-となると、分類体系に影響が出そうですね。見直しなどを検討なさる場合は、弊社もお手伝いいたしますね。

藤原さん:ぜひお願いします。今後は、野村証券創業者の野村徳七やボーイスカウト日本連盟の初代総裁を務めた後藤新平など、久留島武彦とかかわりのあった人物の関連資料なども登録していきたいと思っておりますので。

-弊社もさっそくサポート強化の方法を検討いたしますね。それにしても、ここまでデータを整理されても、まだまだ先は長そうですね。

藤原さん:そうなんです。もしも館長や私が異動などでいなくなっても持続できる状態には仕上げたいですね。

-公開ページの評判などはいかがですか? 利用者の皆さんは満足なさっていますか?

藤原さん:おかげさまで、東京の大学からも資料調査で訪れる研究者がいます。小学校などでもお使いいただいているようです。ただ、館内の大型モニターの様子を見ている限りでは、ホームページを閲覧してもデータベースページまでは辿り着かない方も少なくないように思いますので、この点は改善の余地がありそうです。

-まずはホームページ内にバナーを置いたりするとよいかもしれないですね。それから、SNSの活用もPR手法としては手軽な部類ですよね。

藤原さん:PRと言えば、久留島武彦の童話を絵本にして出版しているんです。毎回違う画家に絵を描いてもらい、これまで9冊出しました。先日はこの絵本をテーマにオーケストラのコンサートが開催されたんですよ。

-それはすごい、強力なPRじゃないですか! これからどんどん認知度が高まれば、先の課題も自然に解決に向かうかもしれませんね。素晴らしいお取り組みだと思いますので、勉強のために1冊買って帰ります(笑)。

藤原さん:お買い上げありがとうございます(笑)。

-今日はいろいろと勉強になりました。ありがとうございました。

 

<取材年月:2018年8月>

Museum Profile
久留島武彦記念館 童話の里・玖珠町に2017年4月にオープンした記念館です。木の温かみに溢れた館内には、航海をテーマに船内をイメージした空間や映像システムで童話の語りを体感できる空間などがあり、「日本のアンデルセン」と呼ばれる児童文学者・久留島武彦の人物像や足跡を楽しく学ぶことができます。ボーイスカウトを日本に紹介し、口演童話などを通じて児童教育に力を尽くした情熱を受け継ぎ、子どもたちの夢を明るく照らすミュージアムです。

ホームページ : http://kurushimatakehiko.com/
大分県玖珠郡玖珠町大字森855番地
TEL:0973-73-9200