ミュージアムインタビュー

vol.15取材年月:2006年4月岡山市立オリエント美術館

データベース・システムは、館内情報の「蔵」です。
構築の際、データをどう集積するかをしっかり考えることですね。
学芸員 四角 隆二さん

-四角さんが着任された当時、すでにI.B.MUSEUMが導入されていたそうですね。

四角さん:ええ。私が着任した2001年の1〜2年前だと聞いています。

-導入当時のお話、なにかお聞きになってます?

四角さん:けっこうスンナリと決まったそうですよ。中近東文化センターさんなど、性格の似た施設ですでに利用されていたということが大きかったんじゃないですかね。

-なるほど。着任されたとき、皆さん、I.B.MUSEUMを使いこなされていましたか?

四角さん:それが、そうでもないんですよねえ(笑)。当時の先輩なんかは「高いお金を払ったのに使えないんだよ」と言ってましたね。

-えっ!? それはまた、どうしてですか?

四角さん:使用する側が、それまで使っていた、紙の台帳からの切り替えがうまくいかなかったからではないかと思います。収蔵品データベースとは、収蔵品がもつ様々な情報を統合化できることが最大の利点であって、「台帳の電子版」ではありません。データベースの概念がよく分からないから、使わない。使わないから、「使えない」。そういうことだと思います。

-あ・・・なるほど(笑)。それにしても、四角さんだけが使えて、他の人には使いにくいものだったんでしょう?

四角さん:私の場合は、中近東文化センターさんで、ほぼ同じものを使った経験があったことが大きかったと思います。経験上、データベースソフトの概念を、ある程度わかっていましたからね。他の職員たちは、ワードやエクセルに慣れ親しんでいましたから、多少の抵抗感があっても仕方がないですよね。

-確かに、「敷居が高い」とお考えになる方はいらっしゃいますね。使っていただければ、「簡単じゃないか」と思っていただけるはずなんですけど(笑)。

-ということは、こちらで稼働中のI.B.MUSEUMは、四角さんが浸透させてくださったのですね。有り難うございます。それで、皆さんには、どんなキッカケで使っていただけるようになったのでしょう?

四角さん:使い分け、ですかね。私は、I.B.MUSEUMは「データの蔵」として使っています。必要なときに「蔵」から引っ張り出してきたデータを、必要に応じてファイルメーカーで加工、変形して使っているんです。

-具体的には、どんな感じなんでしょう?

四角さん:I.B.MUSEUMに限らず、データベースソフトには、ちょっと融通が利かないところがあるものです。逆に言えば、データの安全な保管場所ということになるんですが、自由なデータづくりに関しては、決して「柔軟」とは言えませんよね。

-その通りですね。

四角さん:一方、ファイルメーカーなどは、データを自在に加工できるソフトです。たとえば、展示用のプレートや調査表なんかも、必要に応じて見栄えを変形することができます。だからこそ、データが壊れてしまいやすいという難点があるわけですけど。

-なるほど、それぞれの利点を組み合わせるということですね?

四角さん:そういうことですね。うちの資料は、たとえば「年代」とか、一見普遍的に思われる情報でも、研究成果によって変更されることがあるんです。そんな時、展示用のプレートなんかも変更しなくてはなりませんから、その都度、ファイルメーカーで作るんですよ。

-I.B.MUSEUMにもっと柔軟性を持たせれば、ワンストップで解決するようになりますね。データ加工機能を強化するべきでしょうか?

四角さん:う〜ん。それはどうでしょうね。個人的には、今くらいで十分だと思うんですけど。「安易に変更できませんよ」ということは、イコール「安全性が高いですよ」ということですからね。これでいいような気もしますよ。

-いえいえ、安心感があって、かつ使いやすいソフトを目指せばいいわけで! 今後、ぜひ考えていきたいと思います!(興奮気味)

四角さん:・・・まあ、私はこの使い方がとても気に入っていますよ(苦笑)。

-すみません、ちょっとアツくなってしまいました(汗)。でも、今日のお話は参考になりました。市販のデータベース・ソフトと組み合わせて使うという事例は、ありそうでなかなか見かけないんですよ。他の館の皆さんにも参考にしていただける活用方法だと思います。ご指摘、ありがとうございます。

-では、I.B.MUSEUMは、100点満点で何点いただけますか?

四角さん:80点から90点は付けられるでしょうね。ホントに細かい使い勝手というか、「痒いところに手が届く」ようなバージョンアップがあれば、点数はもっと上がると思いますよ。

-ありがとうございます!

四角さん:でも、営業の方からお聞きしたところでは、最新バージョンではそのあたり随分改善されているそうですね。うらやましい(笑)。

-恐縮です(汗)。四角さんのように、館の皆さんがいろんなアドバイスをくださったおかげなんですよ。

四角さん:もっといいシステムになるといいですね。

-頑張ります。では、これからシステムを導入される館の皆さんに、ご助言をお願いします。

四角さん:仕様の検討に入る前に、データベースによる管理に必要な項目について、思いつく限り書き出すことが重要でしょうね。さっきも言いましたが、データベース・システムというのは、情報を集積する場所ですから、それができなければ意味がないわけで。データベースの概念をあらかじめ理解しておくことも、きっとプラスになりますよ。

-事前の準備が重要ということですね。では、四角さんご自身の今後の目標や課題についてお聞かせください。

四角さん:まずは、I.B.MUSEUMからファイルメーカーに移して加工したデータの中から、長期的に保存すべき情報を選別して、I.B.MUSEUMに戻す作業を完全にすること。それから、岡山市は情報化が進んだ自治体と言われていますから、市のネットワークにうちのデータベースを連結させて、職員や教員の方々がいろいろと使えるようなものにしていきたいですね。それから、3Dで展覧会の様子を保存したり、インターネットに公開してプロモーションに活用したりしていきたいです。

-積極的な展開をお考えですね。私たちも、ご一緒にアイデアを出し合っていけるようがんばります。本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

<取材年月:2006 年4月>

Museum Profile
岡山市立オリエント美術館 西日本におけるオリエント研究の拠点であり、公立としては国内唯一のオリエント専門美術館です。最高裁などを手がけた建築家、岡田新一の設計による建物は、時の流れに風化されない機能美を誇ります。代表的なコレクションは、アッシリア・レリーフ「有翼鷲頭精霊像」。メソポタミアを初めて統一したアッシリアの芸術と、個性あふれる建物で、訪れる人にちょっとした「タイムスリップ体験」を提供するような素敵な美術館です。

ホームページ : http://www.city.okayama.jp/orientmuseum/
〒700-0814 岡山県岡山市北区天神町9-31 
TEL:086-232-3636