ミュージアムインタビュー

vol.27取材年月:2006年10月高松市歴史資料館

理想を追うだけでなく、時には柔軟な考え方を。
これこそ、「使える」データベースづくりのコツだと思います。
館長補佐 藤井 雄三さん

-高松市歴史資料館さんは、複数文化施設の合同ホームページで、他館の収蔵品と一緒にデータを公開されています。たくさんの館にご利用いただいているI.B.MUSEUMですが、こちらのような事例は大変珍しいんですよ。

藤井さん:あ、そうなんですか。

-ええ、1例のみなんです。利用者の立場としては、地域の文化財情報がひとつのサイトに集約されているというのは、本当に素晴らしいことですよね。

藤井さん:そう言っていただけると、とても嬉しいですねえ。

-このような形態が実現するきっかけは、どんなことだったんでしょうか。

藤井さん:以前使っていたシステムをリース替えする時に、別々だった市内各館のデータベースを共有できないかと言う話が持ち上がったんです。そこで、いくつかの業者さんに方法の提案をお願いしましてね。早稲田さんにも声をおかけすることになったのは、確か当時、高松市美術館が貴社のシステムを使っていたからです。 営業の方も熱心でしたし。

-はい、お世話になっていました。複数の業者を比較されて、当社をお選びいただいた理由は?

藤井さん:入札で決めていますから、最終的には「価格で決まった」ということになりますね。

-そうなんです、当社最大の強みですから、価格は(笑)。さて、今日、一番お聞きしたかったのは、「たくさんの館を取りまとめられる時のご苦労」についてでして。想像するだけで、相当な努力を費やされたのではないか、と…。

藤井さん:ええ、確かに当時は大変でしたねえ。館の性質が違えば、当然、管理する項目からして異なるので、足並みを揃えるにはどうしても調整が必要になりますよね。

-実際、どう着地されたんですか?

藤井さん:例えば管理項目の決定では、最大公約数的な考え方で「必要部分以外は削る」という方法を採ると、逆に収拾がつかなくなります。そこで、「項目は、原則、全部残す」という方向になりました。ブランクも多くなりますが、現実的ですよね。

-なるほど。それでも、交通整理される側は、大変ですよね。

藤井さん:いえ、私たちより、むしろ御社のSEさんが大変だったんじゃないかな?(笑)。打ち合わせでは、種類の違う施設の担当者を、一度に相手にしなければなりませんからね。頑張ってくださったと思いますよ。

-ありがとうございます。担当SEも喜びます。

-さて、この新しい試みですが、運用はうまくいっていますか?

藤井さん:ええ、順調ですよ。館によって多少のばらつきはありますが、入力も着々と進んでいます。

-それはよかったです。この試みは本当に意義のあることだと思いますので、ぜひ成功していただいて、全国に類似例が広がって欲しいです。

藤井さん:そうですね、今後も頑張りますよ。

-では、(運用も順調だし、期待しながら)I.B.MUSEUMおよび弊社の仕事について、100点満点で何点いただけますか?

藤井さん:すみません。点数はちょっと申し上げられません。

-え! 何か問題が?

藤井さん:いえいえ、そういうわけではなくて、各館の現場でシステムを使っている人に聞いてみないと、決められないんです。館によって、人によって感じ方が違うと思いますし…申し訳ないんですけど。

-なるほど、仰る通りですね。

藤井さん:とは言っても、私が見る限りでは、御社のSEさんは本当に良くやってくださっていると思いますよ。

-お気遣いありがとうございます。逆に、弊社に対してご要望などは?

藤井さん:そうですねえ…。そうそう、3Dレイアウトの件なんですけどね。納品いただく時に、実際の館の設計に即して壁の配置なんかを作っておいてもらえると便利ですね。建物どおりに画面を作るのは、人によっては意外と大変だったりしますので。

-なるほど。3Dレイアウト機能はユーザの自由度を重視しているのですが、建物の壁は基本的に不変ですもんね。検討させていただきますね。

-では、今後の課題や構想を教えていただけますか?

藤井さん:市町村合併で増えた市の文化施設のデータベースが合流できるようにしたいです。行政サイドの事情・予算が許せば、なんですけどね。

-ここまでの流れや主旨を考えれば、むしろそのほうが自然ですよね。でも、そうすると、また「交通整理」のご苦労がやってくるのでは?

藤井さん:いえいえ、今度は前ほど大変じゃないですよ(笑)。すでに類似施設のデータベースが存在していますからね。対象となる館の基本的な体系は、すでに用意されているわけですから。

-なるほど、そうなると今後が楽しみですね。個人的にも期待しています。さて、それでは、この先進的な事例を取りまとめられた藤井さんから、これからシステムを考える文化施設の方にアドバイスをお願いします。

藤井さん:アドバイスですか。そうですね…。あらゆることに対して、「固執しないこと」が重要だと思いますよ。

-先ほどの「項目を自然なまま残す」といったことですか?

藤井さん:ええ。項目設定に限らず、管理システムを完成させるためには、いろんな調整作業が必要になります。理想形を描くのはいいのですが、それに固執してしまうと、何か問題が発生した時に逆に物事が進まなくなるのではないでしょうか。ときには「単なるデータなんだ」というくらい気軽に考えて、割り切ることも大切と思うのですが。

-面白い視点ですね。大きなプロジェクトの調整役をやられた方ならではのご意見だと思います。

藤井さん:あとは、「単純に組み立てる」という考え方を基本に置くことかな。出発点はできるだけシンプルにしておくことが大事だと思います。

-実感がこもったお話ですね。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

<取材年月:2006年10月>

Museum Profile
高松市歴史資料館 市民が高松市の歴史を学び、郷土に親しめる施設として、平成4年にオープンした資料館。常設展示は、高松における歴史のなかでも特徴的なものをとりあげ、原始・古代から近・現代までを時代順に紹介しています。主な展示物として,重要文化財の田村神社古神宝類や、常設展示のシンボルとなっている高松藩御座船飛龍丸模型があげられます。また、学習室においては、Q&Aコーナーやビデオコーナー、シミュレーションゲームなどにより、遊びながら高松の歴史が学べるように配慮されています。その他、年3回の特別展示や講演会・館内講座・館外講座・小企画展なども随時開催。図書館、菊池寛記念館もあるサンクリスタル高松に入っていて、3つを同時に楽しむことができる地域の文化スポットです。

ホームページ : http://www.takamatsu-webmuseum.jp/     (高松市収蔵品管理システム)
       http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/643.html (高松市のホームページから)
高松市教育委員会 教育部 文化財課 歴史資料館 
〒760-0014 香川県高松市昭和町一丁目2番20号
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