ミュージアムインタビュー

vol.40取材年月:2007年8月岐阜県現代陶芸美術館

実務の中で使ってみて、初めてわかることが多い「システム導入」。実際の館内業務に合わせた仕様と、コミュニケーションが重要 です。学芸員 岩井 美恵子さん

-こちらでは、開館と同時にI.B.MUSEUMを導入いただいていますよね。準備室時代も含めると、すでに6年もご利用いただいている計算になりますね。

岩井さん:ええ。地元の大学の先生、他県の美術館学芸員さんなど専門家の方のご意見などをもとに、館内のシステム化をNTT西日本さんにお願いすることになったんですが、その時に一緒に導入しました。もう5年以上も前の話になるんですね。

-では、NTT西日本さんが、I.B.MUSEUMを選定してくださった、と。

岩井さん:形としてはそうなんですが、早稲田さんは相当早い段階からご提案いただいていたみたいですよ。主な準備作業や最終的な決定は私たち学芸員が行なったわけではないので、詳しいことはわからないんですけどね。

-なるほど。それにしても、開館の直前直後という最もお忙しい時期に、システム化の推進作業を行うのは、かなり大変だったのでは?

岩井さん:ええ、負担がかかることが予想されましたので、システムの導入開始時期を開館の半年前に設定したんですよ。半年あれば、その間に馴れるだろうと。

-リハーサル期間を十分に取られた、と。それはいいアイデアかもしれませんね。

岩井さん:ところが、現実はそんなに甘くなかったですね、やはり。

-と仰いますと?

岩井さん:結局、馴れるまでにはある程度の時間がかかったといことですね。本当に使いこなせるようになったのは、開館後1年ほど経ったくらいの頃でしょうか。想像以上に、実際に使ってみないと分からない部分がありました。

-ということは、軌道に乗せるまで1年半かかったことになりますが、その間に問題やご苦労もあったのでしょうね。ぜひ詳しくお聞かせください。

-準備期間中に馴れることができなかったのは、何が原因だったのでしょうか?

岩井さん:システムって、使ってみて気づくこともたくさんありますよね。リハーサル期間中も「使っている」ことには変わりないんですが、やはり本当に「仕事として」使う場合とは緊張感が違うんです。単に「触る」だけではダメだということですね。

-「お試し」ではなく、実務のツールとして使って初めて溶け込んでくる、と。

岩井さん:ええ、そういうことだと思います。実務を想定して練習しても、実際の仕事では、想定していなかったことが発生することもありますし。

-でも、あらかじめリハーサル期間を取らなかった場合に比べると、それでもスムーズに進んでいたほうなのでしょうね。弊社製品に限らず、収蔵品管理システムは、導入しても使いこなすまでに相当時間がかかる館もありますし。

岩井さん:ああ、そうかもしれませんね。でも、当館の場合は、早稲田さんの営業さんも手伝ってくださいましたからね。契約後はさまざまな形でフォローしてくださって。当時は、本当にありがたかったんですよ。

-ありがとうございます。では、他に問題になっている点は? 使い勝手の面とか。

岩井さん:細かいところでは、使いやすいとは言えない部分がいくつかありました。

-ということは、よりよい運用方法のアドバイスが不足していたのでしょうか? 操作まわりの細かい部分についてのご相談とか…。

岩井さん:いえいえ、それほど深刻なものでもありませんから。私たちも初めての経験だったので、目の前にある仕様を受け容れて使っているという感じですかね。

-でも、もう少しサポートできたかもしれませんね。当初の関係が良好だった分、弊社がもっと積極的に要望をお伺いできたのでは?

岩井さん:言われてみれば、そうかも知れませんね。人としてのコミュニケーションは良好だったと思いますが、私たちは「何がわからないのか、自分自身もわからない」というレベルからスタートしますから(笑)。

-初めてのご経験ですから、無理もありませんよね。

岩井さん:最初は大丈夫と判断していても、実務上では、思わぬところでつまづいてしまったりするんですよね。

-本当は、そういう時にこそご助言を差し上げなければならないのですが…。

岩井さん:最初は細かく相談していたんですけどね。営業さんも、開発に関する打ち合わせには出てくださっていましたが、その後は、担当が代わられたりして「ちょっとした疑問もすぐに問い合わせることができる」ような関係ではなかったかも。

-ご迷惑をおかけしました。

岩井さん:いえいえ、SEの方もよくやってくださいましたから。ただ、ちょっと「システムに対する期待が高すぎた」ということかもしれません。お陰様で、いまは大きな問題もなく使いこなせていますし。

-いえ、ご期待をお持ちになることは当然ですから。弊社の反省材料にさせていただきますね。率直なご意見を、ありがとうございます。

-そんなわけで、恒例の質問を。今回は、覚悟してお聞きします。I.B.MUSEUMは100点満点で何点くらいいただけますか?

岩井さん:そうですね…。細かい部分を減点させていただくと、70点くらいといったところでしょうかね。

-フォロー体制の問題ですね。昨年、サポートの部署を立ち上げて納品後のご相談体制を強化しているのですが、少し遅かったようです…。

岩井さん:そうなんですか。皆さん、喜ばれると思いますよ。当館も期待しています。

-ありがとうございます、頑張ります。ところで、今後のシステム運営の展望について、お聞かせください。導入からかなり時間が経過していますので、そろそろリニューアルなどをお考えになる時期かと思いますが…。

岩井さん:いえいえ、そこは予算の問題がありますからね。もう少し先になると思います。当館がリニューアルする頃には、Windows Vistaのように、より直感的に操作できる仕様になっているといいんですけどね。

-I.B.MUSEUMの次期バージョンでは、インターフェイスの改善にも力を入れる予定ですので、ご期待にお応えできるよう頑張りますね。では、最後に、これから導入される館の皆様へのアドバイスをお願いします。

岩井さん:できるだけ実際に近い環境で、実務の場面を細かく想定して仕様を決めることが大切だと思います。先行館に見学に行く時には、実際に触らせてもらうくらいが良いと思いますよ。

-先ほどの「実戦で使ってみないとわからない」というお話に通じるところがありますね。おおいにご参考になると思います。本日はありがとうございました。

 

<取材年月:2007年8月>

Museum Profile
岐阜県現代陶芸美術館 古くから陶磁器づくりが栄えた岐阜県東濃地域。地元文化と地場産業の複合拠点・セラミックパークMINOの一翼を担う、現代陶芸の専門美術館です。個人作家の陶芸作品のほか、手づくりの実用陶磁器、モダンデザインの系譜としての産業陶磁器など、ユニークなコレクションが勢ぞろい。また、天井から32本の鉄製アームで展示室を吊り下げた並進振子免震システムなど最先端の技術を採り入れる一方、子供用の「作陶体験」機会を提供するなど、地道な教育普及活動も盛ん。地場産業を誇りに思う地域の人に愛され続ける美術館です。

ホームページ : http://www.cpm-gifu.jp/museum/index.html
〒507-0801 岐阜県多治見市東町4-2-5
TEL:0572-28-3100