ミュージアムインタビュー

vol.59取材年月:2009年6月鉄道博物館

機能をたくさん詰め込みすぎたという反省もあるので、
次のプロジェクトを進めるなら「シンプル」がいいですね。
学芸部 主幹学芸員 川野 敬子さん
学芸部 主任 田邉 優子さん

-館内を拝見して改めて驚いているのですが、相変わらず来館者が多いですね。

川野さん:そうですね。お陰様で、多くの方にご利用いただいてます。

-館の皆さんもご多忙と思いますが、その中でシステムがきちんとお役に立っているかどうか。本日は、そのあたりを確認させていただくために参りました。

川野さん:はい。でも、有意義なお話ができるかどうか…。

-……なにか問題でも? では、まず導入当時のお話からお願いできますか?

川野さん:早稲田さんとは、当館の前身の「交通博物館」時代からのお付き合いなんですよ。移転に伴ってシステムを一新したのですが、まずはそれまで使っていた機能を継承することが優先課題でしたね。

-ずいぶん長くお付き合いいただいてますよね。ありがとうございます。これだけの大きな博物館ですから、新規開館の準備は大変だったでしょう?

川野さん:そうですね。私は他の業務に追われていたので、システムの打ち合わせは担当に任せていました。交通博物館時代に使っていたシステムをもとに、改良したい部分を担当者に伝えるのが精いっぱいでしたね。

-具体的には、どんなシステムを描いておられたのでしょう?

川野さん:当館には、大きく分けて博物館資料と写真資料、図書資料があるのですが、以前はそれぞれ個別のデータとして管理していたんです。これらを一本化して、ひとつのデータベースにまとめたいな、と。

-なるほど。資料と図書を一括して管理したいというご要望は、他の館でもお聞きしますよ。新システムで統合されて、使い勝手はどうでしたか?

川野さん:それが、当初に思っていたほどの効果がなかった…ですよね?

田邉さん:そうですね。データの種類をまたいで検索する機会はあるにはあるんですが、運用を始めてみると、そんなに頻繁に使うわけじゃないかな、と(笑)。

川野さん:もちろん便利なんですけどね。

-なるほど。当時は、運用後のシミュレーションを十分に行うだけの時間も取れなかったでしょうからね。田邉さんは、開館後に着任されたんですよね?

田邉さん:はい、そうです。開館の1か月後でした。

-初めて画面をご覧になった時のことを、覚えていらっしゃいますか?

田邉さん:ええ…でも、言っちゃっていいのかしら?(笑)

-あ、ちょっとお待ちください。心の準備を…。

-ひょっとして、難しすぎて操作方法がわからなかった…とか?

田邉さん:その通りなんです。「これ、どうやったら検索できるの?」というのが最初の印象でした。

-そうだったんですか……。

田邉さん:あ、でも、博物館の仕事は初めてでしたから。当時は資料の量だけでも驚いていたくらいですから、要するに素人だったんですよ…そんなに気を落とさずに(笑)。

-いいえ、初めてご覧になる人でも、直感的に理解できる画面でなければ。明らかに弊社が悪いです。

川野さん:まあまあ(笑)。私たちがたくさんのことをお願いして、盛り込む機能が増えてしまった部分もあると思いますよ。いろいろと欲張って細かくなりすぎてしまったのかもしれません。

-お心遣い、ありがとうございます。

川野さん:いえ、本当に(笑)。早稲田さんの担当SEの方は、ちゃんと対応してくださいましたし。でも、今になって考えると、あまり使わない項目などを絞っておけば、もっと見やすい画面になっていたかも知れませんね。

田邉さん:そうそう。初めて見た時の印象をお聞きになったので、それをお答えしただけですから。

-ありがとうございます。では、今は慣れていただいてますか?

田邉さん:ええ、おおむねは。検索機能は毎日使っていますから、もう違和感はありませんよ。ただ、登録する操作は、まだ慣れていないかな? 理解し切れていない部分があると言いますか。

川野さん:登録の操作は、情報を書き換える作業にもつながりますから、いくつもチェックを挟む仕組みになっています。仮登録機能など、いくつか段階を設けているので、ちょっと慣れが必要になりますね。

-そこを分かりやすく使っていただくのが私たちの仕事ですので、さっそく社でも検討してみますね。それから、なにかお困りごとが発生した時、弊社スタッフにお問い合わせいただいていますか? 対応はいかがでしょう?

川野さん:ええ、いつも親切に教えてくださいますので、問題ありませんよ。ただ、全国を飛び回っておられるので、とてもお忙しそうですよね。

-お気遣いは無用ですので、バンバンつかまえてくださいね。

川野さん:でも、本当にお忙しそうですよ、担当のWさん。

-いえ、ここだけの話ですが、あの男、いわゆる鉄道マニアでして…筋金入りの(笑)。ふだんは一切顔に出さないようですが、内心は大喜びで訪問させていただいているはずです。

田邉さん:ですよね!(笑) いや、そうじゃないかと思ってたんですよ。

川野さん:なーんだ、そんなに鉄道がお好きだったんだ。それなら、遠慮なく甘えちゃおうかな(笑)。

-ぜひそうしてください。では、そんな担当者も含めて、弊社システムを100点満点で採点していただけますか?

川野さん:難しいですね、点数をつけられるほど使いこなしてないですから。敢えて言うと、70点くらいかな?

田邉さん:そうですね。私も60~70点といったところですね。

-減点部分は、先ほどの「操作画面の難しさ」でしょうか?

川野さん:それよりも、私自身の反省も含めて、ですね。開館準備で忙しかったこともありますが、仕様の検討にもっと深く関わるべきでしたね。担当から打ち合わせ内容がフィードバックされてきた時の検証が甘かったのかもしれないな、と思っています。

田邉さん:私も、自分自身の使いこなしも含めての点数です。用意してある詳細な項目を上手く使いこなせば、もっと仕事に役立つ形で運用できるはずなんですが、まだまだですね。

-弊社がしっかりサポートして、もっと使いこなしていただけるようになったら、点数は上がりますかね?

川野さん:もちろんですよ。

田邉さん:逆に、別の減点個所が見つかったりして(笑)。

-なるほど。ははは…(あり得そうで怖い…)。

-最後に、システムについての今後のビジョンなどをお聞かせください。

川野さん:何よりも機能群を使いこなすことが第一ですね。次のプロジェクトを進めるとしたら、今度は特に図書の情報を来館者用端末で公開できるようにしたいと考えています。

-一般向けとなると、いままでのお話以上に分かりやすい画面が問われますよね。特に、これだけの来館者数では、多数の方がお使いになるでしょうし。

田邉さん:そうですね、シンプルで使いやすいものがいいかもしれないですね。期待していますので、よろしくお願いしますね。

川野さん:Wさんなら、来館者のキモチがよくお分かりでしょうし(笑)。

-はい、頑張らせます(笑)。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

<取材年月:2009年6月>

Museum Profile
鉄道博物館 車両などの実物展示を柱に、時代背景を交えながら鉄道の変遷を「産業史」として保存する、鉄道ファンにはお馴染みの博物館です。2007年10月に開館し、翌年3月には早くも入館者100万人を達成するなど、毎日大変なにぎわい。プロムナードに置かれたSLをはじめとする実物の車両だけでなく、模型からシミュレーターまで、まるでテーマパークのように楽しい展示品が盛りだくさん。団体もカップルも家族連れも、老若男女の誰もが目を輝かせる新たなランドマークとして、地元でも急速に定着しています。

ホームページ : http://www.railway-museum.jp/top.html
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