ミュージアムインタビュー

vol.168取材年月:2021年4月都城市立美術館

公開機能を「入選作発表」に使えたのは新たな発見。
アイデア次第で、もっと幅広く活用できるはずです。
学芸員(副館長)  原田 正俊 さん
学芸員  祝迫 眞澄 さん

-I.B.MUSEUM SaaSをご導入いただいたのは2014年ですよね。それ以前から、長く弊社スタッフがお邪魔していたとか。

原田さん:かれこれ20年くらい前からご訪問くださっていますね。いや、もっと前かな?

-そんなに前なんですか!

原田さん:ええ、当時から熱心にご提案くださって。当館が印刷物の目録を作った頃で、当時はいろんな美術館でデータベースの共通化の話題が出ていましたね。

-その当時、作品情報はどう管理しておられたのですか?

原田さん:汎用データベースソフトを使っていました。「桐」やMicrosoft Accessですが、なかなか苦戦しましたね。目録を制作した時に印刷業者から納品していただいた原稿のデジタルデータを活用する形でスタートしたんです。

-なるほど、その後、専用システムの導入検討へと移られたわけですね。

原田さん:御社からカタログを送ってもらって、実際にご提案いただいたのですが、当時は金額的にも難しいかなという判断でした。でも、もちろん必要性は感じていましたので、その後も継続して検討していたんですけどね。

-当時のシステム構築費用は大変な金額でしたからね。時代も変わったものです(しみじみ)。

 


-そこから十数年の時を経て、I.B.MUSEUM SaaSのご導入へと至るわけですが。

祝迫さん:御社から送られてきた資料を見て、当時の職員が「これなら実現可能なのでは」と予算要求にチャレンジしてくれたんです。「何とか専用データベースを」という熱意が実を結んだのですが、導入の翌年に異動があって。

-それは残念だったでしょうね。後に公開された作品データをご覧になって、達成感をご一緒に味わっておられればよいのですが。システムの移行は順調でしたか?

原田さん:運用が本格化したのは、画像データが揃い始めた頃からですね。作品を点検するためにデータをカードに出力することがよくありますが、そこに書き込むとシステムの外での更新になってシステム上の登録情報が古くなってしまったりして、最初は戸惑いました。

-なるほど、散らばる情報を統合するためにもひと目で分かる画像データが重要になるわけですね(メモ)。でも、公開されているデータベースでは、画像が付いているデータも多いですよね。

祝迫さん:あれは、データベースの一般公開に向けて、フィルムからスキャンしたんです。それを機に画像データを蓄積できると、自然にシステムの活用が進みました。

-なるほど、画像の有無でそこまで大きく変わるものなのですね。

原田さん:もうひとつ、利用が活発になった契機として、帳票機能も大きかったように思います。先ほどの点検カード、コンディションレポートなどがシステムから出力できるようになって、魅力が倍増したという感じで(笑)。

-ありがとうございます。コンディションレポートはご利用になるところが多いようですね。帳票機能については、ほかの館からも細かなリクエストをよくいただきます。

原田さん:デジタル時代とは言え、紙の使い勝手も捨てたものではありませんからね。あとは、市美展の作品情報公開が大きかったかな。

-市民から作品を募集する展覧会ですね。確か、「ふたつ目の公開ページ」の機能を使って、期間限定で入選作品データベースとして公開されていましたよね。

原田さん:ええ、御社の担当の方が『公募ガイド』のサイトを紹介してくださったのがきっかけで。募集は公募ガイドで、入選作発表はI.B.MUSEUM SaaSで行ったので、とても効率的に運営できました。公開方法も担当の方に相談して、項目をいろいろと工夫したんですよ。

-どんな工夫ですか?

原田さん:作品の画像をズラリとタイル状に表示しつつ、作品名と作者名とお住まいの市町村名まで載せたかったのですが、タイル表示ではテキストデータの表示項目はひとつだけですよね。

-はい、そうなりますね。

原田さん:そこで御社の担当の方に相談して、「市美展<題名><出品者><住所>」という項目を新たに作って、そこに3つのデータをつなげて登録する形で公開することにしたんです。

-なるほど、それなら3種類以上でも可能になりますね。これは、もう少しスマートに対応できる方法を弊社でも検討しないと…(メモ)。

原田さん:データベースを入選作発表のツールにするという使い方は盲点だったので、今後はさらに工夫できるかもしれませんね。

-いや、本当に仰る通りです。弊社が言うのもおかしな話ですが、館によっていろいろな使い方ができるものなんだなあと実感できました(笑)。

 


-ここまでは順調なお話ばかりですが、気になることなどはございませんか?

原田さん:項目を自由に変更できるのは素晴らしいと思うのですが、実は消してはいけない項目を消してしまったらしくて。

-え! どうなさったのですか?

原田さん:御社に連絡して、サポート担当の方に復旧していただきました。本当に助かりました。

-それはよかった、解決したのですね。削ると他の分野に影響する項目もありますから、慎重に行う必要があるのですが、弊社の説明不足もありますよね。

原田さん:いえいえ。Access時代のクセだと思います(笑)。

-項目にはそれぞれ定義が付き物ですので、変更なさるのであれば、本当はそれを隅々までご理解の上で作業いただかなければならないんですよね。実はいま、インターフェイスの全面リニューアルを準備していますので、そのあたりも一緒にクリアできるとよいのですが。

原田さん:そうなんですか、いつ頃に?

-すみません。1年半以上は先になるかと…(汗)。

原田さん:あ~、それは残念、私は今年度いっぱいで定年でして(笑)。

-そうなんですか! 申し訳ございません…(大汗)。

原田さん:いえ、それは仕方がないですよ。後を継いでくれる若いスタッフたちに任せます。

-では、原田さんが長年にわたって管理してこられた大労作の作品データベースは、祝迫さんたちが引き継がれるのですね。

祝迫さん:はい。私は窓口を担当することになると思いますが、スタッフみんなで受け継いでいきます。

-システムはお使いになっていますか?

祝迫さん:ええ、この1年でかなり使い込みましたので、かなり慣れました。最近では企画展検討用のデータを作ったりしていますし。

-それは頼もしいですね。あとは、原田さんのご後任も着任されますよね。

祝迫さん:来年、若手学芸員が新たに加わってくれます。原田さんを除く今の3人のスタッフはみんな若手ですから、ベテランが不在になるんですけどね。

原田さん:一気に若返るね(笑)。

-では、新任の方が来られるタイミングで操作説明会を開催してはいかがでしょうか。

原田さん:それはいいですね。ぜひ実施してあげてください。

祝迫さん:ぜひお願いします。

-では、開催時期などを改めてご相談いたしますね。本日は具体的なアイデアなどもうかがえて、とても参考になりました。お忙しいところ、本当にありがとうございました。

Museum Profile
都城市立美術館 宮崎県初の公立美術館として開館し、今年で40周年を迎えた人気のミュージアム。日本画家の山内多門、益田玉城、洋画家の山田新一など地元ゆかりの作家の充実したコレクションのほか、若手作家による映像作品やインスタレーションなどにも積極的で、幅広いジャンル、幅広い時代の美術を堪能できます。常設展は入館料無料で、市中心部にあるのでアクセスも良好。県のアートシーンの中心地としてさらなる飛躍が注目される美術館です。

ホームページ :
https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/site/artmuseum/
〒885-0073 宮崎県都城市姫城町7-18
電話:0986-25-1447