ミュージアムリサーチャー

ミュージアムレポート

まずはホームページの多言語化から始めたい…多くの館で聞く話ですが、県立館でも英語ページを用意しているのは4割だけ。それだけ大変ということですが、逆に、今実施すれば対応力が際立つかも。

 

6割が英語ページなし
全ページ・バイリンガルは2%しかない

都道府県立博物館のホームページを巡回し、外国語への対応状況を調べてみました。
「外国語」の対象は、英語、中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語、ロシア語、フランス語、ドイツ語。すべてのページをその言語で作っているか、一部のページのみ対応しているか、その言語のリーフレットをPDFで掲載しているか、まったく対応していないか…の4種類に分けてカウントした結果、多言語対応をしっかり推進していると言える館は、なんと「ほとんどない」ことがわかりました。英語ですら、全ページを用意しているところはわずか2%。中国語・韓国語が全ページあるのは1館、8割の館はリーフレットすら掲載していません。

 

無理せず、できる範囲で。

いかがですか? 「外国語対応率」は想像以上に「低い」とお感じになったのではないでしょうか。限られた予算と人員で複数言語の情報発信を行うことがいかに難しいか、雄弁に物語っていると言ってよいでしょう。
では、どう対応すればよいのか。比較的実施しやすい方法を、データから探ってみます。次のグラフは、前ページの調査のうち英語で対応している館の対応方法を表示したものです。その結果…

 

7割が「一部のページのみ」の英語対応

としていることがわかりました。これらのサイトでは、運用の手間と費用を考えてか、更新が発生しないページを英語にしているケースが目立ちます。ホームページ構築費用は一時的に捻出した予算で対応できても、翻訳費用が継続的に発生するとランニングコストが著しく増大し、予算の確保が難しくなります。また、英文校正などの手間も常に発生し続けるでしょう。予算と手間の両面で負担を考えると、展覧会やイベント情報といった日々更新するページを多言語化することは至難の業となります。

 


 

【提案】多言語ホームページのミニマムプラン

「外国人向けの日本語原稿」を用意する

「ページを限定して他言語化する」のは、手間とコストの抑制の面でも非常に有効です。少ないページ数であれば、外国人の立場に立って別原稿を用意することも難しくないでしょう。たとえば、アクセスマップもそのひとつです。見知らぬ異国の地では電車に乗るだけでも一苦労なので、外国人向けの地図を用意してはいかがでしょうか。日本人には周辺地図だけで十分な場合でも、地域によっては羽田や成田からの経路を解説付きで示せば、好感度も向上するはず。同様に、常設展示を紹介する場合では、日本における自館収蔵品の位置づけなどの説明を追加するだけでも、印象は大きく変わるのではないでしょうか。

 


この記事は小冊子「博物館のための外国人おもてなしITプランブック」からの抜粋です。
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