ミュージアムインタビュー

vol.108取材年月:2015年3月青梅市郷土博物館

今後の機能の発展も楽しみですが、
「システムを使って何をするか」が重要だと思います。
課長補佐兼管理係長 加藤 博之 さん
主事 学芸員 小林 弘 さん

-9年前にパッケージ版のI.B.MUSEUMをご導入いただいた後、2年半前にはI.B.MUSEUM SaaSに移行してお使いいただいていますが、まずは初代システムの導入経緯からお聞かせください。

小林さん:当時、アルバイトの方を雇用して、棚から出して1点1点チェックしては棚に戻すという作業を行っていましてね。その時に、棚に番号を振ってExcelのリストを作って写真を撮影する…という、基本的なデータ整備を行ったんです。

-それはかなり大変な作業ですよね?

加藤さん:そうですね。このデータをシステムに登録することになっていたので、製品選びは同時進行で行いました。Excelへの登録は、事前整備のようなものですね。

-パッケージシステムの時代は、パソコン1台でしか使えませんでしたから、データベースにアクセスするたびに席を移るのはご不便でしたね。

小林さん:今から思えばそうかもしれませんね。でも、当時はそれでも画期的だったんですよ。「パソコンを開くと資料が見つかるって、すごいね」って(笑)。

-今となっては懐かしい感覚ですよね(笑)。

小林さん:昔は、「ある資料を探す」というのは、1日がかりの仕事だったんですよ。まず当館の場合、本館収蔵庫、別館と、保管場所が分かれているんです。この辺には漆、このあたりは電化製品、本館収蔵庫には古文書と衣類、別館には大型の収蔵品…という具合ですね。

-それで、先ほどのお話の「棚番号」が出てくるんですね。

小林さん:そうなんです。それまでは、たとえば「蓄音機はありますか?」という問い合わせがあった時、覚えていない限り、何日かお待ちいただくことになってしまっていたんです。その間に、「探索隊、出発!」という感じで(笑)。

-うわぁ、それは大変そうですね(笑)。でも、「だいたいこの辺のはず」というあたりがついていないと、どこから探していいのかわからないですよね。

加藤さん:それは、まあ、経験ですよね。

小林さん:そうそう。記憶がモノを言うんですよ。

-覚えていない場合は、紙の台帳が頼りということになりますね。

小林さん:そうですね。当館では、寄贈を受けた時などの受付簿として作った台帳でした。

-受付簿…ということは、もしかして日付順ですか…?

小林さん:ええ、そうですよ。

-日付順の台帳から目的の資料を見つけるというのは、もはや神業の域では…。

加藤さん:それが、システム導入で検索したら見つかるようになった、というわけです。

小林さん:そう考えると画期的な出来事でしょう? 今のシステムは、初めて触れる方でも簡単に見つけることができますからね。

-確かに。本当に画期的ですね。今では当たり前のことですが、そういう時代で奮闘されていたことを忘れてはいけませんね…。

-では、2代目のシステムとなるクラウド型への移行のきっかけは?

加藤さん:私が着任して間もなく、旧システムがリースアップで更新しなければならない時期が来たんです。その時に、当時のシステムの問題点を整理しましてね。

-やはり、解決すべき課題はあったんですね。

加藤さん:そうですね。さっきの話通り、職員には大変役立つシステムだったんですけどね。

-具体的には?

加藤さん:たとえば、市民に向けての情報開示ができていなかった点とか。情報発信のためのツールではなかったので当然ですが、そこを改善したいと思いました。

-なるほど。それで、クラウド移行後いち早くインターネットで公開されたんですね。製品比較はされましたか?

加藤さん:ええ。私の前任者が3社ほど製品を調べまして、比較表を作って検討した結果、御社にお願いすることになったんです。

-どんな点が決め手になったのでしょうか?

加藤さん:費用が圧倒的に安いということも大きかったですが、同じシリーズならデータの移行も円滑にできるだろうという期待もありました。あと、確か福生市さんですでに導入済みということで、参考にしたり。

-多摩地区は、弊社のお客様が特に多い地域なんですよ。

加藤さん:羽村市さんもクラウドへの移行を検討中と耳にしたり。近隣での実績があったことは追い風でしたね。

-ありがたい話です。

加藤さん:実際、すごくいいシステムだと思いますよ。

-ありがとうございます! 小林さんは、旧システムと比べていかがですか?

小林さん:私はいったん異動で離れて、戻って来たらシステムが新しくなっていたんですが、快適ですよ。

-ありがとうございます。

小林さん:特に検索がすごく早くなっていたことには、驚きましたね。クラウドですからどこにいてもアクセスできますし、インターネット公開の部分も改善できましたし

加藤さん:指定文化財などになっていなくても、面白い資料や珍しいものはたくさんあって、市民の皆さんに何とか知っていただきたいとずっと思ってきたんですよ。

-情報公開のお話は、かなり大きな課題だったんですね。

加藤さん:ええ。展示以外でお伝えする手段は、市の広報や文化財ニュースくらいしかなかったですからね。インターネットで資料情報を発信するのは、本当に念願だったんですよ。

-お褒めいただくのは本当にうれしいのですが、このインタビュー企画は、むしろ問題点をご指摘いただくのが主旨でして…。気になることはございませんか?

加藤さん:どうですか?(笑)

小林さん:う~ん(笑)。今使っている分にはとても快適ですしねえ。何かあったかな…(お二方ともしばし沈黙)。

-なんか、ご無理をお願いしているようになってきましたね。すみません(笑)。

-それでは、「将来に向けてこんな機能が欲しい」という視点ならいかがでしょう?

小林さん:そうですね…。そうそう、これからは3Dプリンタのデータなんかも必要になるかもしれませんね。

-確かに、注目の技術ですよね。

小林さん:機能の進化も楽しみですが、システムで仕事の進め方をどう変えるかが大切かな、と思います。

-と仰いますと?

小林さん:たとえば、「資料を取り出す」という業務の流れは大きく変わってたでしょう? これは年間の時間の使い方が変わるくらいの劇的な変化だったわけで。

加藤さん:インターネットでお見せすることが前提だと、写真の撮り方ひとつをとっても大きく変わりますしね。今後は、もっと見せ方を考えないと。

-見せ方や伝え方は、事例もたくさんありますから、また提案させていただきますね。

加藤さん:ぜひお願いします。

-では、最後にひとこと。

加藤さん:先ほども言いましたが、当館には、まだあまり知られていない「面白いもの」がたくさんあります。ゆっくりでもいいのでデータを増やしていって、市民の皆さんにお伝えしていきたいですね。

-最も大切なことですものね。私たちもお手伝いしていきたいと思います。本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

 

<取材年月:2015年3月>
Museum Profile
青梅市郷土博物館 多摩川の清流と豊かな緑に恵まれた東京都青梅市・釜の淵公園に、梅の巨木に見守られるように建つ博物館です。40年の歴史を有し、市内の遺跡からの出土品や古文書、地機や青梅縞など、多岐にわたる資料が展示されています。お隣には、昭和54年に移築された国の重要文化財・旧宮崎家住宅が。囲炉裏や民具類からは、当時の生活をうかがい知ることができます。地元を学び、歴史に触れ、水と緑で心も体も元気に。とても充実した博物館です。
ホームページ : http://www.ome-tky.ed.jp/shakai/kyodo/
〒198-0053 東京都青梅市駒木町1-684(釜の淵公園内)
TEL:0428-23-6859