ミュージアムインタビュー

vol.22取材年月:2006年8月出光美術館

クルマの試乗や洋服の試着のように、
管理システムも事前に確認できればトラブルがないですよね。
学芸課 管理・保存担当 大下 芳博さん

-大下さんには、いままさに、リニューアル作業でお付き合いいただいている最中ですね。いつもありがとうございます。

大下さん:こちらこそ。最新版は<I.B.MUSEUM 2005>という名前でしたね。項目が自由に追加できたり、他の文書を関連付けて保存できたりするんですよね。楽しみです。

-しかも、今回は弊社でも初めての試みにご協力いただいています。ちょうどいいタイミングでリニューアルのお話をいただいたので・・・。

大下さん:開発過程のシステムの実物を、Webを通じてリアルタイムに見られるサービスですよね。

-はい。大下さんにはずいぶん長く弊社システムをお使いいただいていますから、新サービスのモニターとしても適任と考えまして。いかがですか?

大下さん:こちらの要望に基づいてカスタマイズされていく様子を確認できるというのは、素晴らしいと思いますよ。これなら「使ってみないとわからない」ということもないですからね。興味深く拝見していますよ。

-ありがとうございます。作業が進むたびに実物をご覧いただくと、こちらも安心なんですよね。

大下さん:ただし、「お願いしたポイントがどのように改善されていくか」も、しっかり見させていただいていますからね(笑)。

-そうでした(笑)。宿題をたくさんいただいてますからね。あまり喜んでばかりもいられないですよね(笑)。

-さて、先にも触れました通り、大下さんにはずいぶん長くお世話になっていると聞いております。I.B.MUSEUMを初めて導入いただいた当時のこと、ご記憶ですか?

大下さん:もちろん、よく覚えていますよ。先代の社長さんが自ら営業にお見えでしたね。

-弊社の創業直後くらいだったとのことですから、15年近く前のお話ですね。当時の収蔵品管理の状況は、どんな状態だったんですか?

大下さん:紙の台帳で2万点近くを管理していて、限界を感じていました。出光美術館は九州にもありまして、収蔵品の貸出も非常に多いんです。そこで、自力でデータベース化をしようとしていました。

-自力で・・・相当切迫した状況だったようですね。

大下さん:コンピュータといっても、モニタに緑色の文字だけがチカチカ光っている、というような時代ですからね。ワープロや事務ソフト的な使い方の枠を超えようとすると、なかなか難しかったんですけど(笑)。

-そこに弊社の先代社長がタイミングよく現れた、と。

大下さん:まさにそのとおりです。すぐ飛びつきましたよ(笑)。

-では、他のシステムとの比較検討は・・・。

大下さん:比較も何も、選択肢はなかったんじゃないですか? 

-そうですよねえ(いい時代だったんだなあ、と心の声・・・)。

大下さん:貸出に関わる事務処理がスムーズになったのは、本当に助かりましたよ。ダブルブッキング予防もシステムに任せることができるんですから、画期的でしたね。

-なるほど。他によかった点は?

大下さん:いまでもそうなんですけど、早稲田さんにはシステム以外のことでも相談させてもらっていますよ。それこそパソコンの買い替えの相談にまで乗っていただいてますが、最近の早稲田さんはお忙しそうですよね。いいんですかね?(笑)

-もちろんです。弊社のできる範囲でしたら、何なりとご相談ください。それで、当時と今を比べて、I.B.MUSEUMの使いやすさはいかがですか?

大下さん:言うまでもなく、以前とは比べ物になりませんよね。ただ、機能の充実の一方で、MS-DOSでシステム開発をお願いした当時に比べて柔軟性がやや落ちたかな、という気もします。データの安全性が第一ですから、仕方がないことなのかもしれませんけど。システムが不安定になったこともありますし。

-ご迷惑をおかけしまして・・・その分、今回のリニューアル、頑張りますので・・・。

-リニューアルの最中で恐縮なのですが、恒例なのでお聞きします。I.B.MUSEUMは、百点満点で何点いただけますでしょうか?

大下さん:そうですねえ。いま使っているのは旧バージョンですから、柔軟性と安定性、それぞれ減点ということで70点くらいですかね。

-はい・・・(ガッカリ)。

大下さん:でも、Webで開発状況を拝見する限り、この2つのポイントは改善されること間違いナシですね。お越しになるタイミングが悪いですよ。来月、改めてやり直しますか?(笑)

-(実はそう思っていたりして・・・)いえいえ、問題点は問題点ですから。本音をしっかりお聞きして、今後に役立てていかないと。さて、現在リニューアル中のシステムですが、今後はどう活用されますか?

大下さん:まずは、「関連ファイル機能」をフル活用したいですね。いままでためた文書を、作品管理に活かしますよ。修復レポートの整備とかね。

-ぜひ、感想をお聞かせくださいね。では最後に、これからシステムを考える方にアドバイスをお願いします。

大下さん:どんな立派なシステムであっても、使ってみなければわかりませんし、そもそもデータが整備されていなければ意味がありません。事前にしっかり準備することが何より重要ですね。

-データを揃えようがない時代からパソコン管理に取り組んでおられただけあって、重みがありますね。

大下さん:お陰さまで、いまではデータ整備はかなり進みましたからね。そうそう、システムについては、事前にできる限り確認できればベストです。今回、Web上で確認できるサービスを使って、実感しました。考えてみれば、クルマは試乗しますし、洋服は試着しますもんね。

-リニューアル作業もいよいよ佳境に入りますので、今後とも宜しくお願いします。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

<取材年月:2006年8月>

Museum Profile
出光美術館 出光興産の創業者、出光佐三氏が収集した美術品を公開するために、1966(昭和41)年秋に開館した、わが国を代表する企業美術館。今年40周年を迎えて、館内のリニューアルなどでさらにパワーアップします。国宝「伴大納言絵巻」などの日本の書画、中国・日本の陶磁器、ルオーをはじめとするコレクションは圧巻。窓から見ることが出来る皇居の緑もすばらしく、丸の内の喧騒の中にいることを忘れさせてくれる素敵な美術館です。

ホームページ : http://www.idemitsu.co.jp/museum/
〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階(出光専用エレベーター9階)
TEL:03-5777-8600(展覧会案内)