ミュージアムインタビュー

vol.62取材年月:2010年5月昭和館

「こんなはずじゃなかった」システムを避けるポイントは、
開発の際に発生する課題点をその都度管理すること。
図書情報部 図書情報課 図書係    係長 藤川 和史さん
図書情報部 図書情報課 図書係    主任 坂尻 麻子さん
図書情報部 図書情報課 情報検索係  主任 新城 敦 さん

−貴館では図書情報の管理に重点を置かれていると伺っておりましたが、結果的に収蔵品管理に特化したI.B.MUSEUMをお選びいただきましたね。

坂尻さん:そうですね。確かに図書の管理は大きな課題なのですが、かと言って図書館用のシステムですべてをまかなえる内容でもなくて。図書館システムと博物館システム、どちらをベースにしてもかなりの部分でカスタマイズが必要、ということになったんです。

藤川さん:図書館システムの業者さんにも相談させていただいたんですよ。でも、カスタマイズに対して積極的ではないようにお見受けしましたので。

−なるほど。博物館のシステムでは、パッケージ機能だけで対応できる館はむしろ少ないですからね。でも、以前は大手の業者さんが担当しておられたので、弊社に入札の機会を与えていただいたことだけでも驚きました。

藤川さん:当館のシステム構築では、図書・学芸・映像音響と、大きく分けて3つの柱がありましてね。早稲田さんは収蔵品管理システムを専門とされていますが、スタッフに図書館システム構築のご経験をお持ちの方もいらっしゃいましたよね。

−はい。他業種のシステム構築経験を持つスタッフが何人か在籍しております。

坂尻さん:当館の初代のシステムは、実は市販の図書館向けシステムだったんですよ。当時は目次データを登録して書誌データとリンクさせるという発想がなかったんですね。何かと不便だったので、その反省から2代目のシステム構築はゼロから作る方向でお願いしたのですが、今度はSEの方が図書館や博物館の業務をあまりご存じなくて、意思疎通に苦労しましてね。

藤川さん:どの業者さんにお願いしても、大規模なカスタマイズは避けられないという前提だったので、豊富な経験をお持ちという点が大きなポイントになった…というわけです。

−ありがとうございます。そう言っていただけると、スタッフも喜びます。

−さて、そんな経緯で開発を行った今回のシステムですが、使い心地はいかがですか?

新城さん:一言で言うと、新鮮でしたね。出来上がったものを見た時も、「え?」じゃなくて「おおっ!」という感じで(笑)。ただ、職員によって感じ方に違いはあるみたいですね。

−あまりご満足いただいていない方もいらっしゃるということでしょうか。

新城さん:すぐ馴染める者と、そうでない者がいますからね。システムの機能は問題ないのですが、導入後にも「使い方セミナー」みたいな機会があると、みんなもっと上手に使えるようになるかな、と思います。

−確かにそうですね。システムのお打ち合わせにご出席でない職員の皆様へのフォローアップは、弊社にとっても課題です。今後しっかり考えねば…。

坂尻さん:図書係は、慣れるのも早かったように思います。システムを使う頻度も関係しているのでしょうね。仕事で頻繁に使っていると、細かい点で「あれ?」と疑問に思うことも発生しますが、そんな時に面倒がらずに一つひとつ解決していくと、慣れ方も違いますよね。

−それで思い出しましたが、開発の際にいただいた「課題管理表」の膨大な量に驚きました。皆様のご負担も相当なものだったと思いますが、通常のお仕事をこなしながら課題点をリストアップし続けるというのは、かなり大変な作業だったのでは?

坂尻さん:確かに大変でしたが、あの作業があったからこそ、今のシステムが出来上がったわけですからね。辛く感じても、気付いたことはその場で整理して記録していかないと、時間が経ってから「何だっけ?」となってしまいますし。

藤川さん:過去のシステム構築の経験を振り返ると、気をつけていても「こんなつもりじゃなかった」という部分は必ず出るものですからね。事前に課題を抽出することは重要だと思いますよ。

−なるほど、とても勉強になります。

−今回のもうひとつの目玉である来館者向けのコンテンツですが、評判はいかがでしょう?

藤川さん:タイムトンネル風に見せたり、3Dで建物を表現したり、いろいろ工夫しましたからね。NTTソフトさんのスペースブラウザを活用したのですが、特に子どもたちには好評ですよ。ただ、これからはシンプルで汎用的な見せ方も必要かな、と思います。

−と仰いますと?

藤川さん:子どもたちを除く一般の来館者の方々は、シンプルな検索の方をお使いになることが多くなったように思うんです。前回のシステム構築時とは違って、今ではインターネットが完全に定着していますから、「検索する」という行動そのものに慣れてきたんでしょうね。

坂尻さん:確かに、来館者からの端末操作に関する質問は減ったように感じますね。

藤川さん:動画サイトも急速に普及していますからね。巻き戻しや早送りの操作性などは、スタンダードなサイトを参考にするのも良いかもしれませんね。

坂尻さん:その一方で、年配の方には画面上で誘導してあげるようなボタンの配置も考えたいですね。まだまだ研究の余地がありそうです。

−そうですね。いずれ、コンテンツや表現方法についても、改めて提案させていただきますね。それでは、恒例の質問を。今お使いのシステム、100点満点で何点でしょうか。

坂尻さん:「図書はずいぶん使いやすくなったよね」とみんなが口を揃えていますので、90点くらいでしょうか。

新城さん:う~ん、資料は80点くらいかな? 必ずしもシステムの責任ではないのですが、たとえば検索の時、キーワードと検索結果の傾向にまだ慣れていない職員もいますので。その辺をマスターしたら、きっと満足度も上がってくるのでしょう。

藤川さん:お客様にお見せするところは、まだ見せ方の工夫の余地がありそうなので80点、職員が使う部分は90点くらいですかね。

−ありがとうございます。皆さんそろって高く評価していただいて、スタッフも開発者冥利に尽きると思います。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

<取材年月:2010年5月>

Museum Profile
昭和館 戦中・戦後の国民の暮らしの労苦を後世代の人々に伝えるための博物館。当時の暮らしがわかる実物資料がずらりと並びます。常設展示室のほか、映像・写真・音声資料が鑑賞できる映像・音響室、約10万冊もの関係図書を収蔵する図書室、そして「懐かしのニュースシアター」があり、今日の日本の礎を築いた時代に想いを馳せることができます。当時を知る年配者、調べ物に訪れる研究者、修学旅行や社会科見学の小中学生など、いつも多くの人で賑わっています。

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