ミュージアムインタビュー

vol.94取材年月:2013年12月関西大学博物館

データベースを知らない方も大丈夫なシステム。
まずはトライしてみることが重要だと思います。
事務長補佐 学芸員 石立 弥生子 さん

-緑が多くて広々としていて、とてもいい環境ですね。一般の方も入ることができるんですか?

石立さん:ええ、桜や紅葉の季節には学生気分に戻れるという方も結構いらっしゃいますよ。

-地域に開かれた大学博物館なんですね。

石立さん:当館で開催している「博物館なんでも相談会」というイベントでは、地元の子どもたちにいろいろな体験の場を提供しているのですが、学生スタッフの皆さんがいろいろと手伝ってくれているんですよ。

-素晴らしいですね。学芸員を目指す学生さんにとっても、いい経験になりそうですね。

石立さん:そうですね。本学の学芸員養成課程には、毎年70名ほどが履修する博物館実習という科目がありまして、学生が自分たちで展覧会を開催しているんです。テーマ選びはもちろんですが、資料の借用などの実務もこなしているんですよ。

-そこまでなさっているんですか。

石立さん:借用を断られることもありますけど、それも含めていい経験ですよね。早く学生向けのデータベースを公開することができれば、もっと展示活動の幅を広げてあげられるんですが…。

-幅を広げる、とは?

石立さん:なにぶん学生の人数が多いので全員を収蔵庫に入れてあげることはできないのですが、データベースを閲覧できれば実習展のテーマを考える材料が増えたり、今よりもっといろんなことができるようになると思うんです。

-なるほど。となると、システムの役割は大きいですね。

-システムの検討を開始されたきっかけは?

石立さん:館の考古資料が登録有形文化財になって、学芸員が目録づくりで手いっぱいになったので、企画展を事務方が担当することになりまして。それで整理を兼ねて、所蔵資料を調べ始めたんです。

-うわぁ、それは大変でしょうね。

石立さん:学生スタッフにも担当を割り振って、手伝ってもらいました。少しずつ情報が増えてきて、「データベースが必要だね」という話になったんです。

-なるほど。今回、クラウドシステムのI.B.MUSEUM SaaSをセレクトされたわけですが、独自のシステムの構築は検討されなかったんですか?

石立さん:はじめは考えたんですけどね。でも、たとえば「考古資料」として扱っていたものが実は「工芸品」かもしれないとか、当時の私の知識では判断が付かないことが多かったので。その状態でシステムを作りこんでしまうと、後で困るかもしれないという不安もあったんです。

-それで自由度が高いI.B.MUSEUM SaaSをお選びいただいたんですね。

石立さん:そうなんです。またタイミングよく、ちょうど御社からお知らせが届きまして。

-導入はスムーズに進みましたか?

石立さん:ええ。体験版を1年ほど使わせていただいて、その頃から御社の担当の方には随分お世話になっています。お試しとしてはかなり長期間だったと思いますが、特に急かされることもなく、じっくり検討できました。

-弊社スタッフは、きちんとサポートできましたでしょうか?

石立さん:ええ、もちろん。何か困ることがあると「こういう方法がありますよ」とアドバイスをくださったり、複数の課題が生じた時には「ちょっと確認してみましょうか」とジャッジが必要な要素を整理してくださったり。

-それは何よりです。元のデータは揃っていた状態だったんですか?

石立さん:ええ、主にExcelでリスト化されていました。でも、別々に作られたシートがいくつもあって、項目がバラバラでした。私はスナップ写真を撮って、文字情報を加えて収納する箱に貼るといった作業をしていましたので、そのデータも。

-それをひとつのデータにまとめるのは大変な作業ですね。

石立さん:そうですね。項目の再検討も必要になりましたが、I.B.MUSEUM SaaSには分野ごとに項目のテンプレートが用意されていますね。あれをもとに担当の方が一緒に考えてくださって、何とか登録できる状態になったんです。

-順調なスタートだったようで何よりです。

石立さん:でも、本格稼働までには、もう少しクリアしなければならない課題もありますね。

-何か問題が?

石立さん:まとめて登録したExcelデータに少し間違いがありまして、その点検中なんです。職員みんなで使いこなすのは、それが終わってからですね。

-大変な作業ですが、ぜひ頑張ってください。完了したら、皆さんでお使いただけるように、操作講習会を開きましょうか。

石立さん:いいですね! ぜひお願いします。

-あと、画像の登録はいかがですか?

石立さん:iPadで写真を撮影してダイレクトに画像登録ができるので、順調に増えていますよ。特に学生スタッフは、喜んで使っているみたいです。新しい機能には敏感ですからね(笑)。

-すごい! タブレットで場所を選ばず使えるのもクラウドの特徴ですから、ぜひ使いこなしていただきたいです。

-ほぼ順調に進めてこられたわけですが、これからシステム導入を検討される館の方々にアドバイスはありますか?

石立さん:そうですね。私は当初、データベースについて専門知識を持っていませんでしたが、I.B.MUSEUM SaaSはそういう方でも大丈夫だと思います。しっかり使い込んで理解しておけば、将来的に独自システムに移行する可能性だって芽生えますし。御社には申し訳ないですけど(笑)。

-いえ、ぜんぜん問題ありません(笑)。いずれにしても「まずはトライしてみよう」ということでしょうか。

石立さん:ええ。ハードとネットワーク以外は、初期コストもかかりませんしね。そうそう、先日も、当館にシステムの見学に来られた方にそんなお話をしたところなんですよ(笑)。

-そうなんですか。弊社システムがご参考になったならよいのですが。

石立さん:資料全体の検索とか、写真を見て判断するとか、いろいろな使い方をお見せしておきましたよ。バラバラのExcelだった頃には考えられなかったことですね。

-これからの発展が楽しみですね。これからは学生や子どもがアクセスできるデータベースを目指されるわけですが、私たちも教育に役立つ新機能を計画しているところなんですよ。

石立さん:それは嬉しいですね。そうして情報に触れた子どもたちが将来、学芸員の道を目指してくれるかもしれないですね。

-夢が広がりますよね。ところで、いま展示室をリニューアルされていますね。展示方法が変わるのですか?

石立さん:幅15メートルの展示ケースが入る予定なんです。完成後は、これまで展示できなかったものも見ていただけるようになりますよ。本学の図書館で所蔵している近世近代に活躍した大坂画壇の絵画などは、きっと楽しんでいただけると思います。

-へえ〜、そちらも楽しみですね! では、その頃にまたお邪魔して、今日の続きをお聞かせいただければと思います。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

<取材年月:2013年12月>
Museum Profile
関西大学博物館 千里丘陵の豊かな緑に囲まれた博物館。昭和29年、末永雅雄名誉教授が設立した考古学資料室を前身に平成6年4月、博物館相当施設として開館しました。考古学、歴史学、民俗学、美術・工芸史学などの分野における重要文化財16点、重要美術品12点を含む膨大な資料を収集・展示、公開講座などを行っています。また、夏休み期間には、地域の子どもたちに施設を開放する体験型イベント「なんでも相談会」を開催。学生だけでなく地元の人たちにも愛される博物館です。
ホームページ : http://www.kansai-u.ac.jp/Museum/
〒564-8680 大阪府吹田市山手町3-3-35 関西大学千里山キャンパス簡文館内
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