ミュージアムインタビュー

vol.154取材年月:2019年10月お札と切手の博物館

せっかく情報公開機能を持つクラウドシステムなのだから
サイト利用者の皆様が喜んでくださるデータにしたいです。
学芸員 松村 記代子 さん

-こちらの展示室は、小さな子どもたちからキャリア数十年のマニアの皆さんまで、誰もが一緒に過ごせる空間。これぞまさしくミュージアムの魅力そのものですよね。

松村さん:ありがとうございます。老若男女、本当にさまざまな方々がご利用くださっているんですよ。

-素晴らしいですね。さて、いきなり個人的なお話で恐縮ですが、松村さんにはかなり昔の全国博物館大会でお目にかかったことがあります。ご記憶でしょうか。

松村さん:もちろんです。確か平成22年、奈良で開催された時ですよね。

-すごい記憶力ですね! 仰る通り、あの時です。

松村さん:当時はデータベースをどうしようかと考え始めていた頃で、御社のブースに立ち寄らせていただきました。

-その節はありがとうございました。では、当時の状況からお聞かせください。

松村さん:当館には、私が着任する前からオーダーメイドのシステムがあったんです。ただ、使い勝手がいまひとつだったのか、Excelのシートを使っていましたね。

-システム開発側も試行錯誤の時代ですからね…。でも、Excelだけだと限界があるのでは。

松村さん:そうなんです。それでAccessでデータベースを作ったのですが、それがちょうどあの博物館大会の頃で。

-なるほど。あの時、もっと詳しくお話をうかがえる時間があればよかったですね。

松村さん:使って見ると、Accessは意外によくできていたのですが、さすがにI.B.MUSEUM のようにはいかなくて。履歴や画像まで登録しながら柔軟にデータを出し入れできるなんて、「こんな便利なものがあるんだな~」と感心したのを覚えています。

-その後、平成26年にI.B.MUSEUM SaaS をご導入いただきました。踏み切ったきっかけは?

松村さん:画像データの管理を含めたデータベースの構築を検討し始めていたのが転機でしたね。広報用に撮り溜めた画像がたくさんあったのですが、Accessではうまく管理できないということで、別に保管していたんです。でも、2つの場所で管理することになって、ひとつの画像を確認するのにいちいち両方を開かなければならなくなって。

-こちらの資料だと名称が同じものも多いでしょうから、画像がないと識別しにくいですよね。

松村さん:資料名を見ても画像のイメージは湧きませんからね。そういう意味では、いまのデータベースでも「もう少しかな」と思う部分もあります。

-それは気になりますね。ぜひとも詳しくお聞かせください。

 


-「もう少し」とお感じになるのは、主にどんな点でしょう?

松村さん:まず、共通の情報を持つ膨大な数量と種類の資料をデータで個別に管理しようとする場合、共通情報と個別情報の両方が必要となります。現状では、個別資料のカードを作成して、備考や解説欄に共通情報を登録せざるを得なくて…。

-となると、共通情報は同じことを何度も登録するようになってしまいませんか?

松村さん:そうなりますね。

-ならば、共通情報用の大分類を作ってみてはいかがでしょうか。I.B.MUSEUM SaaS には、互いに上下の階層関係にあるデータ同士を関連付けることが可能でして。逐次刊行物の「巻」と「号」の管理ニーズから生まれた機能ですが、応用できます。

松村さん:それは使えそうですね。巻と号…他館の皆さんもいろいろとお悩みなのですね。

-性質の似た施設の方に聞いてみますね。ところで、現在お使いになっているデータの精度はいかがですか? 入力・登録はかなり大変な作業になりそうですが。

松村さん:もとのオーダーメイドのシステムを導入した時に、入力作業を外注したようです。無理もないことですが、内容の間違いだけでなく、文言の揺れやブレが多いですね。

-担当の方が入れ替わるだけでも、記述方法が変わったりしますからね。多くの館の共通する難題だと思います。

松村さん:最近では、外部への情報公開を意識したデータの見直しも進めています。せっかくクラウド型で、データも簡単に公開できるシステムなのですから、検索してくださる方々が喜んでくださる形で情報を整えなきゃ…と思いまして。

-それは素晴らしいですね! ライトなファンからディープなマニアまで多様ですし、皆さんお喜びになるのでは。

松村さん:お札や切手と一口に言っても多用な形状のものがありますので、寸法情報として正確にお伝えしたいですよね。そこで、今回のシステム導入を機に、ひとつひとつ測りながら登録を進めているんです。

-すごいですね…。でも、なにしろこの点数です。私なら心が折れそうですが…。

松村さん:いま外国の紙幣を登録しているのですが、1か国分が進むたびに達成感を噛みしめています(笑)。国が変わるとデザインも変わるので、新鮮な気分で楽しいんですけどね。

-ミュージアムは人の力に支えられていることを、改めて思い知りますね。本当にお疲れさまです…。

 


-ほかに、システムのご利用でお困りのことなどはありませんか。ご不満な点とか。

松村さん:特にないですね…あ、そう言えば。

-ご忌憚なくお聞かせください。

松村さん:とても細かい話になるんですが、中分類コード、小分類コードのところに「×」のマークがありますよね。画面の一番目立つ場所に、あんなに大きく「×」があると、何となく気になります。

-申し訳ございません。確かに、モチベーションにも影響しますよね。検討してみますね(メモ)。

松村さん:そうそう、この機会にご相談しようと思っていたことがあって。棚卸の作業にバーコードを利用したいのですが、システムと連携させることは可能ですか?

-はい、可能です。I.B.MUSEUM SaaS の中だけで完結するものではないのですが、方法はありますよ。

松村さん:どんな方法ですか?

-まず、バーコードを読み取るハンディターミナルにデータを蓄積して、CSVで出力します。I.B.MUSEUM SaaS 側では、棚卸の対象リストをExcelで出力しておきます。

松村さん:ふむふむ。

-その後、ターミナル側のCSVとI.B.MUSEUM SaaS 側のExcelデータを取り込む簡単なプログラムを作って、双方を突き合わせる…という手順になります。実際にこの方法で棚卸作業をなさっている館もあります。

松村さん:なるほど、さほど難しくはなさそうですね。ぜひ詳しくお聞きしたいです。

-では、改めて提案させていただきますね。今回は特に「コレクション」のデータ管理方法とバーコードを利用した棚卸作業を主な課題として持ち帰らせていただいて、また改めてお邪魔したいと思います。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

Museum Profile
お札と切手の博物館 昭和46年、国立印刷局の創立100年を記念し開設した博物館。当初は新宿区市ヶ谷にありましたが、平成23年に現在の北区王子に移転しました。内外の貴重なコレクションのほか、「日本近代紙幣の父」キヨッソーネの銅版画など珍しい資料がズラリ。印刷機の構造から偽造防止技術の変遷まで、製造者側の視点を学べるのもポイントです。「1億円の重さ」をはじめ、体感系の展示も多数。家族連れの休日にも最適な大人気のミュージアムです。

ホームページ : https://www.npb.go.jp/ja/museum/index.html
〒114-0002 東京都北区王子1-6-1
Tel:03-5390-5194