ミュージアムインタビュー

vol.155取材年月:2019年10月鹿児島県立博物館

データベースがあれば、着任直後から仕事ができる。
「どこに何があるか」を知るだけでも全然違います。
館長  鈴木 敏之 さん
主任学芸主事  池 俊人 さん

-2014年にご導入いただいたI.B.MUSEUM SaaSでは、現在、13万件以上のデータを公開されていますね。これだけの量のデータの内容整えられるのは、大変なことだと思います。

鈴木さん:昔はExcelの簡単なリストしかありませんでしたからね。よくここまで来たものです。

-では、当時から現在へと至る道のりをお聞かせください。まず、これだけの点数のデータを、どう整備されたのですか?

鈴木さん:私は一時的に館から離れていたのですが、あるタイミングで、雇用対策の事業の一環としてアルバイトの方に来ていただくことになったんです。実物の資料と照合しながらのデータづくりをお願いしていたようですね。

-恐らく、当時のシステムも、かなりしっかりと運用されていたと思います。クラウドベースに移行された理由は?

鈴木さん:システムが入っていたPC環境の老朽化が進んでいたからだと思います。

-端末の切り替えのタイミングで、仕組みから見直されたということですね。

鈴木さん:当時のシステムは専用の端末にインストールされていて、自分の席からはデータベースにアクセスできませんでしたしね。

-なるほど。かなり不便な状態から、現在では膨大な数の資料データを公開する先進館へとステップアップされたわけですね。言葉で言うのは簡単ですが、ものすごい進展です。

鈴木さん:ありがとうございます。確かに、当時を思うと別世界のようですね。私は館長として戻ってきたので、システムを実際に運用してくれている現場の奮闘の賜物です。ね?(笑)

池さん:ありがとうございます(笑)。でも、私もI.B.MUSEUM SaaSを導入してから約1年後に着任しましたので。データ登録を頑張ってくださった方々のおかげですね。

-導入1年と言うと、池さんがご着任の時点では、活用スタイルも固まった頃でしょうか。

池さん:当時は「これから本格的に固める」という感じでしたね。ちょうど導入前後に3人ほど異動が重なって、すぐにデータベースに向き合う時間が取れなかったようです。

-同時期に3人ですか。それは大変だったでしょうね。

池さん:ですので、私が着任した年に改めて御社の方にお越しいただいて、レクチャーをお願いしたんです。

-そこからが快進撃でしたね。短期間でこれだけの件数の公開を実現されたことは、社内でも話題になったんですよ。

池さん:データの登録を頑張ってくださった方々のおかげですね。思い切って公開に踏み切ってよかったです。

-毎度のことながら、博物館職員の皆様のご奮闘には頭が下がる思いです。

 


-さて、データベースの公開以外では、どんなシーンでシステムを多くご利用になりますか?

池さん:まずは、もちろん新しい資料のデータ登録ですね。特に昆虫や植物については、ボランティアの方々が作製してくださった標本をはじめ、毎年1,000点、2,000点と増加しますので、学芸員がExcelデータを作って一括登録するようにしています。

-更新作業も絶えず発生しているわけですね。

鈴木さん:当館の職員は数年で異動しますから、データベースにきちんと情報が登録されていること自体がとても重要になるんです。

池さん:私自身も、着任時点にデータベースがあって、本当に助かりましたし。

-なるほど。先ほど「本格稼働はこれからの段階だった」と仰っていましたが、それよりも「まず情報基盤があるかどうか」が大切だったわけですね。

池さん:ええ。なにぶんこの数ですから、「何があるのか」「だいたいどのあたりにあるのか」といった話を大づかみできるだけでも全然違うんです。

-これだけの数ですもんね…。もし、ご着任当時にデータベースが存在しなかったらと考えると、ちょっと怖くなりますね。

池さん:それが今や、収蔵庫の中からでもタブレットでデータベースにアクセスできるんですから、凄いですよね。先ほどの話通り、昔は専用のパソコンでしか閲覧もできなかったわけですから、進化を実感します。

-進歩と言えば、I.B.MUSEUM SaaSは新しい機能を続々と追加しているのですが、この12月にはまた新機能がお使いいただけるようになります。

池さん:どんな機能ですか?

-PDFファイルを登録できるようになります。お役に立ちそうですか?

池さん:それは助かります! 先日、大変貴重なクビナガリュウの化石を寄託していただいたばかりなのですが、こうした大型資料は文献も多くなりがちですから、直接紐づけて登録・整理できるなら大歓迎です。

-ぜひご活用ください。逆に、システムを使っていて気になることは? ご不満な点とか、お困りの点とか。

池さん:不満ですか、特に思い当たることはありませんが…。そうそう、以前、データを重複して一括登録してしまったことがあるのですが、一括で削除することはできない仕様なんですね。やはりリスクがあるからでしょうか?

-仰る通りです。一覧からチェックを付けたデータをまとめて削除することはできるのですが、もっとたくさんのデータを一括で削除できるようにすると、誤って削除してしまう可能性もありますので、最初から「できない」仕様とさせていただいております。

池さん:OSのような使い勝手ではどうでしょう? いったんゴミ箱に入れて、「ゴミ箱を空にする」という操作をしない限り、いつでも復旧できる仕組みとか。

-なるほど、それならリスクを回避できますね。では、持ち帰って社内で検討してみますね。

 


-ところで、音声ガイドアプリの「ポケット学芸員」もご活用いただいていますよね。

鈴木さん:はい、昨年に3階の展示室をリニューアルしたのをきっかけに。

池さん:当館ではタッチペン方式の音声ガイドを従来から導入していたのですが、職員がコンテンツの入れ替えをすることができない仕様だったので、展示のリニューアルに対応できなかったんです。

-ポケット学芸員をお選びいただいた理由は?

池さん:従来の音源をそのまま活用できることも大きかったのですが、やはりコストゼロで導入できるというのは魅力でしたね。

-ありがとうございます。ご来館の皆様の反応はいかがですか?

鈴木さん:展示をじっくりご覧になっている方の姿は明らかに増えましたね。

池さん:アプリで解説をお聞きになっているからですね。

-あ〜なるほど、立ち止まる時間が長くなったわけですね。

鈴木さん:御社にご用意いただいたアプリのパンフレットも設置していますし。

池さん:受付で職員がダウンロードとインストールをお手伝いしている姿もよく見かけますよ。

-パンフもご活用いただけているなら何よりです。

池さん:今回は展示のリニューアルのタイミングで、ちょうどガイドの重要度は増していたさなかですからね。今後は、アプリで配信できるコンテンツを増やしていきたいです。

-弊社もぜひお手伝いしたいと思います。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

Museum Profile
鹿児島県立博物館 昭和28年3月の開館から65年以上の歴史を重ねる自然史系博物館。地域の自然を紹介する展示室には触れて学べるディスカバリールームがあったり、産業を学べる展示の横には3D劇場&学習情報室が用意されていたり。そのほか、プラネタリウムや天文展示室、恐竜化石展示室など、文化施設が集積する「かごしま文化ゾーン」でもひときわ目を惹く建物の各フロアにはワクワク感がたっぷり。連日子どもたちの元気な声が響き渡る人気館です。

ホームページ : https://www.pref.kagoshima.jp/hakubutsukan/
〒892-0853鹿児島市城山町1番1号
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