ミュージアムインタビュー

vol.161取材年月:2020年2月森記念秋水美術館

作ることよりも、使うことで価値が生じ、高まる。
それこそが、データベースの導入意義だと思います。
学芸員  島田 奈央子 さん

-こちらはまだ新しい美術館ですよね。島田さんはいつごろ着任されたのですか?

島田さん: 2017年4月です。開館の少し後ですね。

-開館は2016年6月でしたね。

島田さん:はい。リードケミカル株式会社の創業者が収集した200振ほどの刀剣を中心に所蔵する美術館として設立されました。重要文化財に指定されているもの、大名家伝来のものや郷土刀まで、さまざまな日本刀があります。

-素晴らしいですよね。パンフレットには絵画も載っていますね。

島田さん:ええ。近代日本画や九谷焼などもあって、それらを含めると数百点になります。

-ご着任の後、データベースを導入されましたね。

島田さん:少人数で年4回の企画展を開催するために、きちんとしたデータベースで作品情報を共有しておきたいなと思ったんです。実は、私は社内SEとしての職歴があるので、データベースの重要性は認識していまして。それで、ミュージアム用の製品を調べて、御社に辿り着きました。

-学芸員資格を持つSE! そうした人材は、手前みそながら弊社スタッフだけと思っておりました…。同志に出会った気分で、嬉しいです!

 


-ミュージアムでシステムの導入効果を実感される場面はありますか?

島田さん:ありますよ。たとえば、刀剣の場合、3か月から半年に1回ほどのスパンで定期的なメンテナンスを行います。「拭い」と言うんですけどね。

-拭い…。ゾクゾクしそうな言葉ですね(笑)。

島田さん:雰囲気ありますよね(笑)。それで、いつ拭いを行ったかについては正確な履歴を取るべきですし、その情報は全員の目の触れる場所に置くべきです。データベースは、作ることよりも使うことで価値が生じると思いますので。

-おっしゃる通りですね。私たちも日頃から「活用してこそ」という考え方をお伝えするように心がけています。

島田さん:システムの価値について言えば、当館の場合にはもうひとつ側面があります。企業が運営するミュージアムという性質上、資産台帳との照合がしやすいシステムであることが重要になるんですよ。そこで、受入情報などを積極的に活用して、登録情報の精度を上げているところです。

-さすがですね、もうそこまで行き着いているんですね。それでは、初期データも島田さんご自身で?

島田さん:ええ、少し苦労しましたが、何とか整備できました。

-どんな面で苦労されましたか?

島田さん:絵画などはデータ項目を検討しながら進められたのですが、刀剣ははじめにExcelの不完全なデータで一括登録を行いました。

-なぜですか?

島田さん:刃文(はもん)や地鉄(じがね)の種類など、「情報の深さ」を考える必要がありましたので。それには時間がかかりますので、とにかく、まずは「容れもの」を作ろうということで。

-それはよいご判断だったと思います。完璧なデータを目指すと、逆にデータ整備が止まってしまうこともよくありますので。

島田さん:まさに実感しました。そんなわけで、現在は刀剣と絵画、それに工芸の登録が終わった状態で、刀装具に取り掛かったところです。

-写真なども登録されていますか?

島田さん:ええ、刀剣ではとくに、画像データとその情報の関連性が重要になります。たとえば無銘の刀剣の写真は、絵のように誰もが見ただけで判別できる訳ではありません。間違いなく特定するために、データベース上の情報を参照することが必要なシーンがあります。

-先日、登録可能な画像データのサイズを拡大する機能改善を実施しましたが、お役に立ったのでは。

島田さん:実にありがたかったですよ。たとえば…ちょっとこの図録をご覧いただけますか?

-うわ~、写真がキレイですね〜! ここまで来ると、もう写真自体もひとつの「作品」なのでは。

島田さん:ありがとうございます。実は、刀剣の写真撮影は、とても難しいんですよ。刃に焦点を当てると鎬(しのぎ)の部分がボケたり、いい刀ほど澄んでいるので光源が映り込みます。これを技術的にクリアした上で鑑賞に堪えられるレベルの写真を撮れるカメラマンは、全国でも数人しかいないと言われています。

-は〜、本当に「作品づくり」なんですね。とすると、なおさら画像は高精細でないとダメですね。

島田さん:そうなんです。当館でも、大きいサイズでの登録も進めていきたいと思っています。あと、PDFが登録できるようになったのも嬉しいですね。実は、以前から営業担当の方にお話ししていたくらいで。

-どんな内容のPDFファイルが多いのですか?

島田さん:刀の価値を表す「折紙」や鑑定書、銃刀法の登録証などでしょうか。刀剣には紙の一次資料が多いんですよ。

-ぜひご活用ください。ほかによく使う機能はありますか?

島田さん:紙の調書やラベルなどを出力する機会が多いので、帳票作成の機能はよく使いますかね。書式をコピーする機能があるので、とても便利です。

-ありがとうございます。短期間でフル活用といった感じですが、そこまで使いこなしておられると、機能面で物足りないところもあるのでは?

島田さん:強いて言えば、調書を作る時に作品画像の順番をうまく指定できなくて…。帳票作成の段階で表示順を指定できれば助かるのですが。

-なるほど、検討いたしますね(メモ)。ご指摘の内容からも、相当に使い込んでいただいていることが伝わってきます。

 


-データベースの運用としては順風満帆とお見受けしますが、課題のようなものは?

島田さん:まずは職員全員が便利に使いこなせるようになることを目指したいですね。

-その点については、実は、最近よく耳にします。操作研修の充実は、ご要望をいただくことも増えてきましたので、複数館の合同での開催なども検討しているんですよ。

島田さん:あ、それは当館も希望します(笑)。

-かしこまりました(笑)。何とか実現できるよう準備を進めますね。あと、アプリや外部公開についてはいかがですか?

島田さん:当館には、開館の時に用意したiPodによる音声ガイドがあるんです。俳優の奥田瑛二さんがご協力くださったんですよ。

-それはすごいですね!

島田さん:でも、企画展もありますので、いずれは補足的に学芸員によるガイドも検討したいですね。

-ぜひ「ポケット学芸員」をご活用ください。情報公開については?

島田さん:公開したい情報はあります。たとえば、刀の姿や刃文を墨で描いた「押形」と呼ばれる絵があるのですが、その押形自体が作品であり、刀の特徴や魅力が解りやすくもなるので、ぜひご紹介したいですね。

-それは素晴らしい。もともと写真も美しいですし、日本刀ファンにはたまらないページになりそうです。

島田さん:最近は刀剣ブームと言われますが、一過性のファンにとどまらず、歴史的背景含め詳しくなる方がどんどん増えていらっしゃいます。インターネットで公開すれば、そうした皆さんにもお喜びいただけると思いますので、ぜひ頑張りたいです。

-弊社も精いっぱいお手伝いしたいと思います。本日はご多忙のところ、ありがとうございました。

Museum Profile
森記念秋水美術館 リードケミカル株式会社の創立者、森政雄氏が収集した美術品を公開する美術館。館名の「秋水」は、曇りの無い研ぎ澄まされた日本刀を意味する言葉だとか。その名の通り、我が国屈指の日本刀コレクションを誇ります。刀の美が映える展示室で日本刀や日本の近代美術作品を堪能できるほか、広々とした畳敷きの研修室では居合演武鑑賞会や学芸員によるギャラリートークも。これから人気が上がりそうな、日本の美を満載した美術館です。

ホームページ : https://www.mori-shusui-museum.jp/
〒930-0066 富山県富山市千石町1丁目3番6号
電話 076-425-5700