ミュージアムインタビュー

vol.179取材年月:2022年2月練馬区総務部情報公開課

「区民みんなのアルバム」として使える
温かなデータベースサイトへと育てていきたいですね。
情報公開担当係  高橋 かおる さん

-Webサイト『練馬わがまち資料館』が大好評ですね。まずは事業化のきっかけからお聞かせください。

高橋さん:平成21年11月に練馬区区政資料管理整備計画ができて、歴史的文書を積極的に残していこうという活動が始まったのが発端ですね。公文書や写真を集めようと全庁に声をかけながら、じっくりと準備を進めてきました。

-外からはあっという間に出来上がったように見えますが、舞台裏では長い蓄積があったのですね。それにしても、あの量はすごいですね。

高橋さん:ありがとうございます。写真だけで2万枚近くを公開しているケースは、23区でもあまり例がないのではと思います。せっかくこれだけのものがあるなら、残すだけでなく、多くの方にご覧いただきたいですからね。これまで丁寧に作ってきた目録が大いに役立ってくれました。

-写真以外の資料も豊富ですよね。

高橋さん:そうですね。一緒にほかのジャンルの資料も集まったので、後で追加するよりも、まとめて一気に公開した方がよいかな、と考えまして。

-勢いを重視されたわけですね。それにしても、これだけの量となると、内容の確認などが大変だったのでは。

高橋さん:データ整備については、区のOBが専門調査員としてアドバイスをくださっているんですよ。職員としての長い経験と幅広い知見をお持ちですので、本当に助かります。

-それは頼もしいですね。具体的にはどんな助言を?

高橋さん:たとえば「この写真は昭和9年に撮影されたものか、昭和10年か」を判別したり、 似た写真が2枚ある場合にどちらをパネル展に出すべきかについて明確な根拠をもとに判断したり…。

-それはすごい、本当に「まちの専門家」なんですね。トップに表示されている「今日はなんの日?」も、相当お詳しい方がいないと作れない内容ですよね。

高橋さん:そうなんです。練馬わがまち資料館は、人に恵まれ、環境に恵まれたおかげで実現できたものだと思っています。

-まさに地元愛あっての完成度ですね。素晴らしいと思います。

 


-一気に仕上げたとは言え、データはサイトの公開後も追加されていますよね。

高橋さん:ええ。庁内の各部署から刊行物や文書が届くと、まず非常勤スタッフが仮番号を付けて基本的なデータを作り、専門調査員の確認後にExcelに落とし込んでI.B.MUSEUM に一括登録する流れで対応しています。

-もうワークフローが確立しているんですね。

高橋さん:そうですね。ただ、最後の登録の部分については、いまは私が一人で対応していますので、ほかのスタッフも作業できるように内部の手順書を作らなければなりませんね。

-公開ページもオリジナルのデザインで、楽しく閲覧できますよね。評判がよいのも納得です。

高橋さん:ありがとうございます。ぜひ多くの方々にご覧いただきたかったので、その点はこだわりました。キーボードでの入力を最低限に留めて、分かりやすいアイコンを作って、直感的に使えるようにしたいな、と。デザインしてくださった会社さんが意図を的確にくみ取ってくださったので、本当にありがたかったですね。

-一見、行政のデジタルアーカイブには見えませんよね(笑)。

高橋さん:そうなんです(笑)。内部では「少し派手すぎない?」という声もあったのですが、一般の方々はいろいろなサイトで多様なデザインに接しておられますので、このくらい賑やかな方がよいだろうということになりました。

-特にご苦労なさった点などはありますか?

高橋さん:やはり個人情報には気を遣いましたね。タイトルなどに個人名が出ている写真や、町会長や校長のお名前の一覧が載っている昔の刊行物などは、修正したり公開分から外したりするなど個別に対応しました。それもあって、実はサイトは3月までに仕上がっていたのですが、敢えて公開を半年ずらしてチェック作業に充てたんです。

-本当に丁寧なお仕事ですね。頭が下がる思いです。

 


-ここまでしっかりと仕上げられると、利用者や区民の皆さんからの反応が気になりますよね。全体的には大好評ですが、何か印象的なご感想などはありましたか?

高橋さん:妊娠中の女性が写っている写真を指して、「このお腹の中にいるのが私です」と仰る方がいらっしゃいました。今回は写真のダウンロードボタンを用意せず、直接お申し込みいただくスタイルを採用しましたので、サイトを通じて新たな出会いが生まれていることを実感します。ゆくゆくは「区民みんなのアルバム」のような存在に育てていきたいですね。

-「区民みんなのアルバム」って、とてもよいフレーズですね。デジタルサービスなのに、とても温かみがあって。画像データの活用例は?

高橋さん:節目の年を迎えられた飲食店の記念カレンダーとか、ビルの建設現場の仮囲いとか。なかなか幅広いシーンでお使いいただいています。壁一面に写真を使ってくださっているラーメン屋さんもありますよ。

-なるほど。中でもビルの活用例が興味深いですね。これから新しいビルが建つ場所に昔の写真があると、時代の流れがはっきりと分かって、地元の方にとっては感慨深いのでは。

高橋さん:最近、引っ越して来られた方にとっても、地元の歴史を気軽に知る機会になりますからね。とてもよいアイデアだと思いました。

-デジタルアーカイブが多様な場面で役立つのだなあ、と改めて実感します。そんな役立ち方があるのだと思うと、本当に大切な事業だと実感します。ところで、システムについて、何か気になることなどはありませんか?

高橋さん:システム側の問題ではないのですが、資料の見せ方をもっと検討したいなと思っています。たとえば、ブックページャーの機能は「見る」「読む」には楽しいのですが、分厚い区史の中身を探したり調べたりするには、きっとほかに適した方法があるのだろうな、と。たとえば、区史から職員が昔の事業を探す時などは…。

-向いていませんね(笑)。今は電子書籍も身近になってきましたし、スピーディに見せたい時には別の方法を選べるようにできれば…(メモ)。今後の展望はいかがですか?

高橋さん:区の広報映像がかなりありますので、こちらも公開していきたいですね。写真のダウンロードサービスの導入については、権利や個人情報のこともあって少しハードルが高いのですが、それ以外の資料なら検討できるものもあるかもしれません。

-これだけしっかりした基盤があれば、いろいろなことにチャレンジできそうですよね。

高橋さん:サイトの制作会社の皆さん、それに御社のご担当も含めて、私たちの想いをくみ取ってくださる皆さんと出会えたおかげだと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いします。

-ありがとうございます、こちらこそよろしくお願いいたします。担当も喜ぶと思いますので、さっそくお伝えしておきますね。本日はお忙しい中、こちらまで勇気が出るお話をありがとうございました。

Museum Profile
練馬区総務部情報公開課 2020年9月に開設した『練馬わがまち資料館』は、区が所蔵する記録写真や資料を公開する検索サイト。幅広い利用者に向けて、充実したデータベースを親しみやすいインターフェイスで提供しています。また、区政情報の公表・提供を担う資料室である「区民情報ひろば」では多様な資料を閲覧できるほか、一部は貸出サービスも実施。晴れた日には富士山も見えるフロアで区の歴史に浸りながら、落ち着いたひとときを過ごすことができます。

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区民情報ひろば https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/johokokai/hiroba/gaiyo.html