ミュージアムインタビュー

vol.182取材年月:2022年4月群馬県立土屋文明記念文学館

現行システムをそのままの形で移行できるか不安でしたが、
事前にテストできる「体験版」が役立ちました。
学芸係長(学芸員)   佐藤 直樹 さん

-I.B.MUSEUM SaaSご導入の何年か前、県立歴史博物館様での研修でお話しさせていただいたご縁で説明会を開催させていただきました。あの日、ご出席くださいましたよね。

佐藤さん:はい、参加しました。月日が経つのは早いものですね。その節はありがとうございました。

-こちらこそ、お忙しい中でご参加いただき、誠にありがとうございました。皆様、とても熱心にお聞きくださっていたように記憶しています。

佐藤さん:あの時、私は当館に着任したばかりでして。当時は館で独自に開発したシステムを使っていて、しばらくはそのまま利用を継続する予定でしたので、すぐに導入する計画はなかったんです。それでも、クラウドのシステムはとても新鮮に感じました。

-なるほど、そういう状況だったのですね。ところが、その数年後にはご導入の方向に舵を切られたことになります。このあたりのご事情をうかがってもよろしいでしょうか。

佐藤さん:あの後、しばらくはそのまま利用を続けていたのですが、実はずいぶん前から、開発を委託した会社さんのご事情で、機能改善をお願いできない状態となっていたのです。保守については別の業者さんに依頼していたのですが、システムそのもののアップデートができないとなると…。

-あ~、それは弊社も分かります。何とかして差し上げたくても、他社製のシステムは対応が困難なことがあるんですよね。保守業者の「あるある」なんですよ。

佐藤さん:何とか館内で工夫しながら利用するにしてもやはり限界がありますし、その間はずっと保守費用もかかり続けるわけですからね。そのうちに、検索まわりで不具合が生じるなど徐々に業務にも支障を来たし始めて、さらにデータの公開面でもいろいろと不都合が出てきましたので、入れ替えは不可避と判断したんです。

-そんな時に、以前に説明会を行った弊社のクラウドを思い出してくださったわけですね。

佐藤さん:仰る通りです。あの説明会を思い出して、まずは御社に相談してみることにしたんです。それ以前から、漠然とではありますが「次はクラウドかな」と考えていたこともありまして。これから新たに独自システムを構築して、それを長期間にわたって運用していくのは、やはり大変ですから。

-ご検討の際には、複数の業者の製品やサービスを比較されましたよね。

佐藤さん:ええ、もちろん。ほかにも収蔵品管理システムをクラウドで提供可能な会社さんはあったのですが、I.B.MUSEUM SaaSは体験版で事前に操作感を確認しているうちに、すでに馴染み始めてしまって(笑)。決定的だったのは、料金が…。

-安いですよね(笑)。

佐藤さん:はい(笑)。初期費用がかからないのもさることながら、何しろ前システムの保守費用と比較しても格段にローコストでしたから。「本当にこの金額でいいの?」「数字が間違ってない?」と訝しがる声も上がったくらいで(笑)。

-なるほど、コストダウンにもお役に立てたということですね。あとは、操作性や機能面でも、前システムに負けないものであればよいのですが。

 


-そんな経緯で長く親しんだシステムを離れてクラウドサービスに移行されたわけですが、使い勝手はいかがでしょうか。導入時に何か不都合などはありませんでしたか?

佐藤さん:操作性自体は、契約前に体験版を使っていましたから、特に大きな問題は感じませんでしたね。当館はデータ項目が少し特殊なのですが、項目設定の自由度についても事前にある程度は確認していました。でも、件数が多くて項目が特殊という当館のデータが、本当にそのままの状態で移行できるかについては不安があったのも事実です。

-体験版では、項目設定を実際に試されましたか?

佐藤さん:はい、サンプルデータを入れて動作を試しましたよ。結果的には、思ったよりも時間がかかってしまいましたが、無事に移行できました。

-それは何よりでした。館の皆様のご反応は?

佐藤さん:環境が大きく変わることになりましたので、最初は戸惑うスタッフもいましたが、すぐに慣れてくれました。全文検索など旧システムにはなかった機能がとても便利で、みんな喜んでくれていますよ。

-データ公開の際には、弊社のサポートもご活用いただきましたね。お役に立ちましたか?

佐藤さん:もちろんです。オンラインで図書と雑誌、館の閲覧室では自筆原稿などの特別資料も公開しているのですが、その設定などでご協力いただきました。おかげさまで作業もスムーズでしたよ。

-全体的に順調そうでホッとしました。逆に気になる点などは?

佐藤さん:特に大きなことはありませんが…。そう言えば、公開設定のヘッダ画像の調整に少し手間取りました。もう少し直感的になると嬉しいですね。

-ご指摘ありがとうございます。社に持ち帰って検討材料とさせていただきますね。

 


-最近『ポケット学芸員』もご導入いただきましたね。ご利用感はいかがですか?

佐藤さん:当館では常設展示の解説用に導入したのですが、「何を配信するか」と「誰がしゃべるのか」の2点では議論がありました。結果的には、全職員が対応できるように用意している「解説マニュアル」をもとに原稿を作成することにしました。解説アプリとして自然な内容を目指したというところですね。

-先ほど聴かせていただきましたが、素晴らしい出来栄えだと思います。ナレーションのクオリティ高いですよね。

佐藤さん:ありがとうございます。「誰がしゃべるのか」については、群馬県内在住で放送コンクール等でも活躍した大学生の方にお願いすることにしたんです。3年ほど前、『ごんぎつね』展の関連イベントとして開催した朗読会に参加してくれた高校生のひとりなんですよ。昨年に開催した朗読会でもまた参加していただきました。

-最近、地元高校の放送部や演劇部をナレーターに起用する例が増えているのですが、考えみれば卒業後にもご縁が継続することもありますよね。地元の人材発掘にも貢献しそうです。

佐藤さん:当館に限ったことではないと思いますが、来館者の年齢層では中高生くらいの世代が少ないんですよね。そこで、展覧会のテーマに合わせた謎解きイベントで高校のクイズサークルの生徒さんたちに呼びかけるなど、いろいろな形で接点を持てるよう工夫しています。今後は企画展でもポケット学芸員を使っていきたいですね。

-企画展なら、配信するコンテンツの「色」を変えてみてもよいのでは。たとえば、親子連れ向けの「解説体験ワークショップ」などでナレーションを収録して、それを配信するとか。

佐藤さん:それはよいアイデアかもしれませんね。当館で最近導入した音声合成ソフトも活用していきたいですし、トライしてみたいことがたくさんあります。

-弊社もぜひ貢献いたしたく存じます。今日は楽しみなお話をたくさんお聞かせいただき、ありがとうございました。

Museum Profile
群馬県立土屋文明記念文学館 平成8年(1996年)に開館した群馬県立の文学館です。常設展示では、この地を代表する歌人・土屋文明の作品や資料が豊富に並ぶほか、東京の南青山にあった自宅から移設された書斎や庭などの見学を通して、その業績と人となりを学ぶことができます。また、「三十六歌人」コーナーでは、万葉以来の名歌を人形で立体的に紹介。多彩な企画展やイベントの開催も活発で、上質な文学の世界に心から浸ることができる注目のミュージアムです。

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