ミュージアムリサーチャー

ミュージアムレポート

北海道博物館協会学芸員部会の研修会に参加してきました。平成23年9月8日、場所は北海道余市町。9月というのに東京を出るときには汗だくになるような残暑だったのですが、こちらに着くと夏物のスーツでは朝夕は寒いくらい。北国であることを実感しつつ会場入りしたわけですが、この会自体は、「寒い地方の熱い会」といった感じの、熱気あふれる場でした。研修内容はまさに「現場の会」で、実践的な事例報告ばかりでしたので、他地域の館の皆様にもお知らせしたく、簡単ではありますが、このページで報告します。

基調講演は、小樽市の観光振興に活躍されている小河原 格さんから、「おもてなしの場として活用される博物館」という題で、市の観光ボランティアの活動についての話がありました。この話の中で、「博物館はその町の歴史、文化、産業、人情を表現する拠点だ」と言われました。「人情」という、日頃博物館ではあまり耳にしない言葉がとても印象的です。プロのガイドではない地元の掃除のおばさんの何気ない、でも心のこもった案内に訪れた人は感動し、その町のファンになる事例もある、とか。あちこち出張する私は、出会った人の印象がその町の印象になる、という経験をいつもしていますので、深く同意。博物館が人情の拠点とは、目からうろこです。博物館がより元気になっていく方法はいろいろあると思いますが、多くの人が訪れる施設である以上、訪れた人が満足する「おもてなし」はとても大切で、それがまた次の来訪者を呼ぶのですね。いつもたくさんの観光客でにぎわう小樽市の方の話だけに、とても説得力がありました。

事例報告では、余市町教育委員会の文化財ボランティア説明員制度、小樽市総合博物館のボランティア、北海道開拓の村のボランティアと、3つの事例が発表されました。ボランティアであっても接客の大変さは仕事と同じ。余市町では「心得」に基づいて市の方が応対を指導され、小樽市の現場ボランティアの方は「現役で働いていたころより勉強するようになった」とか。次に小樽に行くときには、プライベートで博物館を訪ねて、このボランティアさんのガイドで見学してみたいと思いました。

私がもっともびっくりしたのは北海道開拓の村の事例。なんと200人が組織化され(名前だけ、という人はいなくて、全員が活動中)、キャビンアテンダントを招いての応対研修まで行っているそうです。元・銀行員の私ですが、私がいたころの銀行よりボランティアの皆さんの方が「おもてなし」への本気度はずっと上だと、一日中脱帽しっぱなしでした。それぞれ形態は違いますが、「本気であること」「心を込めて応対すること」はすべての事例に共通するポイント。本気で、心を込めて応対された来館者の満足そうな顔が目に浮かびます。

厚かましくも、夜の部・交流会までお邪魔しました。皆さん、とてもいい方ばかりで、いろんな話を聞かせていただきました。さすがに現場の情報交換の場。皆さん積極的に名刺交換され、交流を図っておられました。こうしてできた人脈が、興味深い展覧会につながったりするんですね。北海道はとても広く、土地勘のない私は、「どの辺ですか?」と聞いてばかり。失礼な質問にも丁寧にお答えくださった皆様、ありがとうございました。集まった名刺は30枚近くになりました。いつの日か、全部の町を回りたいと思いますので、そのときはよろしくお願いします。