ミュージアムリサーチャー

ミュージアムレポート

今回も前回に引き続きスペインのマドリッドから。
マドリッドには数多くのミュージアムがありますが、なかでも絶対外せないのがアート・トライアングルといわれる地区にある、次の3つの美術館です。それは、ティッセン・ボルネミッサ美術館、国立ソフィア王妃芸術センターと、前回、前々回でご紹介したプラド美術館です。3館はプラド通り(Paseo del Prado)を中心にまとまっていて、すべて徒歩圏内にあるため、効率よくまわることができます。また、プラド美術館以外の2館も近年増改築を終えたばかり。展示スペースの拡張とともに、レストランやミュージアムショップなどの施設も充実したものとなっていて、それぞれの美術館にさらなる魅力を与えています。
今回は、プラド美術館以外の2館についてご紹介します。

ティッセン・ボルネミッサ美術館 Museo Thyssen-Bornemisza

左がビリャエルモサ館、
右が2004年に増築された新館

収蔵作品は、ティッセン・ボルネミッサ家が2代にわたって収集したもの。800点にものぼるそのコレクションは、中世の宗教画から20世紀のポップアートまで、西洋絵画史の全体をカバーするもので、個人が収集したものとは思えないほどの幅の広さ。イギリスのエリザベス女王についで、世界で二番目の規模の個人コレクションになるそうです。1992年にこのコレクションをスペイン政府が買い取り、以来、美術館として一般公開されています。

建物は、18世紀末マドリッドの新古典主義建築を代表するビリャエルモサ館を、スペイン人建築家ラファエル・モネオが美術館として改築したものです。2004年にさらなる拡張工事が行われ、常設展示室16室と企画展示室2室、そしてガラス張りの現代的なレストランが増設されました。ちなみにレストランのメニューはお手頃な値段のわりにおいしく、今まで利用したことのある美術館のレストランのなかでも、屈指のコスト・パフォーマンスでした。

新館1階のレストラン
晴れた日はテラス席でランチを

展示室は3フロアからなり、上階から時代の古い順に展示されています。時代、様式ごとにわかりやすく部屋分けされているので、広い館内にもかかわらずスムーズにまわることができます。コレクションについてはまさに網羅的、という印象。個人的には、特に3階の初期フランドル絵画からルネサンス絵画のコーナに惹きつけられる作品が多かったです。この時代の有名な画家の作品はひととおりカバーされています。また、ヨーロッパではなかなか目にする機会の少ない、アメリカ近代絵画をまとめて観ることができたのも収穫でした。

 国立ソフィア王妃芸術センター Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofia

美術館正面入口
壁面に取り付けられた
ガラスのエレベーターが斬新

パブロ・ピカソの代表作《ゲルニカ》を所蔵する美術館として有名ですが、そのほかにもミロ、タピエス、ダリなど現代スペイン美術の充実したコレクションを鑑賞することができます。プラド美術館とティッセン・ボルネミッサ美術館が、中世~近代絵画全般を網羅的に集めているのにたいして、こちらは20世紀以降の現代美術が中心です。

もともとは王立病院として建てられた建物が、美術館として生まれ変わったのは1986年とつい最近のこと。2005年にジャン・ヌーベルによる新館が増築されたことで、また新しい顔を与えられました。新館におさめられているのは企画展示室や多目的ホールのほか、ブックショップやレストラン、そして図書館など。ジャン・ヌーベルのファンであれば、これだけでも訪れる価値があるでしょう。特に、ブックショップは充実の品揃えで、スペイン語で美術書をお探しの方はぜひ(ブックショップとレストランには、入館チケット無しで入れます)。

赤が印象的な新館入口
天窓から光が差し込み
天然のスポットライトに

現代スペイン美術以外のコレクションで特に充実していたのは、シュール・レアリズム派の絵画。パリのポンピドゥー・センターとくらべてもひけをとらないコレクションです。かつての大病院のおもかげをかすかに残し、中庭に面した大きな回廊には陽光がふりそそぐ美術館で、現代絵画とゆっくり向き合う機会は、ほかではえられないものでしょう。

 

 

 

【ティッセン・ボルネミッサ美術館 Museo Thyssen-Bornemisza 】

http://www.museothyssen.org/thyssen/  (スペイン語・英語・※一部日本語あり)
※「INFORMATION」>「TICKETING」> のInformation leaflets in flash: Japanese より日本語のパンフレットをみることができます。

●所在地
Paseo del Prado, 8. 28014 Madrid

●アクセス
地下鉄:2号線 Banco de Espana(バンコ・デ・エスパーニャ)駅
バス:路線1, 2, 5, 9, 10, 14, 15, 20, 27, 34, 37, 45, 51, 52, 53, 74, 146 , 150.
電車:Atocha(アトーチャ)駅、Recoletos(レコート)駅

●開館時間
火~日曜日 10:00~19:00、
12月24日及び31日は10:00~15:00
(チケット販売は閉館30分前まで)

●休館日
月曜日、1/1、5/1、12/25

●入館料
一般6ユーロ
割引4ユーロ(学生、65歳以上)
特別展は別途
同伴の12歳以下の子供は無料

【国立ソフィア王妃芸術センター Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofia 】

http://www.museoreinasofia.es/  (スペイン語・英語)

●所在地
Santa Isabel 52, 28012 Madrid

●アクセス
地下鉄:1号線 Atocha(アトーチャ)駅、1番線
バス:6,10,14,18,19,26,27,32,34,36,37,41,45,46,55,57,59,68,86,119番とCircular(循環バス)
電車:Atocha(アトーチャ)駅

●開館時間
月~土曜日 10:00~21:00、
日曜日10:00~14:30

●休館日
火曜日、1/1、1/6、5/1、5/15、11/9、12/24、12/25、12/31

●入館料
一般6ユーロ
割引3ユーロ(学生)
特別展は別途
18歳以下、65歳以上無料

●無料入館日
土曜日14:30~21:00
日曜日10:00~14:30
5/18、10/12、12/6

【芸術の散歩道(3館共通)チケット Paseo del Arte Card 】 
芸術の散歩道(3館共通)チケット:14.40ユーロ
(プラド美術館、ティッセン・ボルネミッサ美術館、ソフィア王妃芸術センターにそれぞれ一回ずつ入場できる共通チケット。一年間有効。企画展の中には入場できないものもあるので、別途チケットを購入する必要があります。)