製品&ソリューション

クラウド型収蔵品管理システムI.B.MUSEUM SaaS

大切なのは、予算よりも「おもてなし」の心 ポケット学芸員の上手な活用法

博物館クラウド<I.B.MUSEUMSaaS>の一機能で、システム内に登録済み、あるいは新規で登録したテキストや画像、音声や動画といったデータを来館者のスマートフォンに配信できる展示ガイドアプリ「ポケット学芸員」。4月15日にサービス開始、同月中に24館が運用を開始したおもてなしツールのユーザレポート、今回は福井市立郷土歴史博物館様を取材しました。

同館は、福井市春嶽公記念文庫をはじめとする福井藩、越前松平家に関する資料が充実しています。平成16年に現在の場所に移転、リニューアルオープン時に音声ガイドサービスを導入済みですが、「ポケット学芸員」のサービス開始にあたっては、この時に制作したデータを再利用されたのだそうです。

それにしても、極めて短期間で準備を整え、スタートからいきなり4か国語対応という充実ぶりは見事のひとこと。しかも特別な予算をかけることなく、これだけのコンテンツをほぼ手作りで制作されたというのですから、驚きです。実際にお話を伺ってみると、「素材があったから」という理由だけではなく、さまざまな工夫が組み合わされていることが分かりました。

ボランティア、市の設備、手づくりマップ、屋外案内、機械翻訳…
工夫次第でここまでできるというお手本のような、見事な「おもてなし」でした

手づくりの温かみと心配りが光るガイドサービスでした! ポケット学芸員 体験取材プチレポート

原稿作成・翻訳・音声収録…すべて手づくり!
お金をかけなくても、ここまで充実したコンテンツが作れる!

「ポケット学芸員」を使っての音声ガイドには、すでに存在するデータをお使いになったとのこと。制作当時はハードウェアの予算しか確保できなかったため、原稿作成からナレーションの録音まで、ボランティアの方々が大活躍されたとか。翻訳と外国語原稿を読み上げたのは、国際交流会館に所属していた外国人。録音の設備は市の広報広聴課で借りるという「完全手弁当体制」での制作だったそうです。

翻訳は、日本語も堪能なネイティブの方とはいえ、本職ではありません。ましてや、郷土史の知識が求められる内容なので、日本語の原稿を渡すだけでは翻訳者に負担がかかります。そこで、実際に会ってコミュニケーションを深めながら、丁寧に話をしながら進めたそうです。

なお、コンテンツは、来館者と学芸員の掛け合い方式となっていました。実際に聞いてみると、結構長めの原稿なのですが、会話調なので意外と気にせず耳を傾けることができます。来館者の立場で…という配慮が伝わってくる工夫です。

館内だけでなく、日本庭園も音声でガイド!
パネルが掲出できない場所では、簡易マップで案内を

「ポケット学芸員」による音声ガイドは、ミュージアム館内だけでなく、隣接する養浩館庭園でも活用されています。美観を重視する庭園では番号パネルの掲出が難しいため、ガイドが聞ける場所をプロットしたマップが配布されていました。PCでデータを作ってプリントアウトすればOKなので、ぜひお試しを。

機械翻訳を上手に使いこなせば、簡単な案内くらいは今すぐ「他言語化」できる…!?

弊社では、アプリの使い方などを説明したリーフレットをPDFデータで提供していますが、こちらではそれをもとにA1サイズのパネルを作っておられました。提供データを加工し、英語と中国語、韓国語の説明文が加えられていますが、この原稿づくりにはGoogleなどが展開中の機械翻訳をお使いになったそうです。

学芸員の松村知也様によれば、機械翻訳では精度が不安なため、日本語原稿を英語に翻訳し、その英文を中国語などに翻訳。その上で再度英訳して「変な英語」になっていないか確認することで精度を上げたのだそうです。

機械翻訳は躊躇しがちですが、この工夫は参考になるのではないでしょうか。