ミュージアムインタビュー

vol.235取材年月:2026年7月東京都庭園美術館

作品情報の公開では、ご覧になる方への配慮とともに
遊び心ある工夫にも挑戦していきたいですね。
学芸員 方波見 瑠璃子 さん
司書 三澤 庸子 さん

東京都庭園美術館 本館 正面外観

-まずはシステム導入のきっかけをお聞かせください。

方波見さん:私が着任した時点でもう導入が決まっていたのですが、前任者の話では、東京都立のミュージアムが収蔵する資料・作品の横断検索(Tokyo Museum Collection)を構築することになり、各館でコレクション情報の公開がミッションのひとつとなったようです。

-導入前は作品情報をどう管理していたのですか?

方波見さん:市販のデータベースのソフトを使っていました。導入を機に、散らばっていた画像や情報をいったん整理して、より体系的な形でI.B.MUSEUM SaaSに登録することになりました。

-画像データはかなりの量だったのですか?

方波見さん:作品数はそれほど多くないのですが、それ以外の写真もけっこうな数になりますね。たとえば、当館は建物そのものが文化財ですので、それにまつわる古い写真も多くて。

-建物の写真と言うと、内部であれば作品が映り込んでいたりするのでしょうか。映り込んだ調度品からデータベース内のその調度品の情報にアクセスできると、きっと楽しいでしょうね。

方波見さん:あ〜、それは面白いですね! そういう遊び心はトライしてみたいです。

-導入後は、どんなシーンでデータベースをご利用になっていますか?

方波見さん:展示を考える時に検索機能を使うことが多いですね。その作品を扱う上での注意点なども登録していますので、何かするたびに情報を見るようになりましたよ。

-館内の情報共有にお役に立っているようで、とても嬉しく思います。


東京都庭園美術館 本館 正面外観

-ほかの機能はいかがでしょうか。たとえば、クリップリストとか。

方波見さん:最近、使い始めました。各担当に作品をまとめてもらえば、チーム内で把握の把握が容易になりますし。

-ホームページには展示中の作品を検索できるボタンが設置されていますが、展示や貸出の管理にもお使いですか?

方波見さん:使ってはいますが、ウェブサイトは手動で更新されるので、連携はしていないですね。

-資料利用の機能で出庫操作をすると所在場所の情報が「展示中」に更新されますので、それを公開ページの検索対象にして抽出すれば自動化できますよ。

方波見さん:それも便利そうです! 期間と言えば、当館のコレクションには1点だけドレスがあって、展覧会で引っ張りだこになるので、お休み期間を設けたいんです。これをシステムで設定することはできますか?

-現在の機能で対応するなら、「展示停止期間」という名前の架空の展覧会データを作って、予約を入れておくというのはいかがでしょうか。出庫操作をしなければ出品歴は作成されませんので。

方波見さん:なるほど、さっそく試してみます。

-帳票作成の機能はいかがでしょうか。

方波見さん:作品管理のカードや収集資料の作成に使っています。

三澤さん:図書の管理に使う三段ラベルも帳票機能で出力しているんですよ。印刷時にズレないように調整するのがちょっと大変なので、貴社の担当の方にも手伝っていただきながら。

-図書のデータベースもしっかり公開されていますね。

東京都庭園美術館 本館 大客室と香水塔

三澤さん:はい。アール・デコ期に活躍した作家の典拠データの作成で手間がかかりましたが、完成できて良かったです。今年度は、美術図書館横断検索にも参加予定なので、頑張ります。

-三澤さんは司書のお立場ですが、図書管理の専用システムに比べると、使い勝手では及ばないのでは。

三澤さん:確かに、自分で項目を考える必要があるところなどは一般的な図書管理システムより少し大変ではありますが、当館のように小規模な施設では、ほかのデジタル化資料と同じ仕組みで管理できる利点の方が大きいと思います。大規模館との差別化を考える上でも、I.B.MUSEUM SaaSのように自由度が高い方が館の個性を活かしたシステムづくりができますし。

-なるほど、勉強になります(メモ)。では、美術館の図書管理という視点から見て、ほかに足りない機能などは?

三澤さん:Nacsis(目録所在情報サービス)と連携できたり、Marc(機械可読目録)データベースが使えたりすると、利用の幅が一気に広がると思います。

-収蔵品管理システムとしてはややハードルが高いのですが、図書管理でお使いくださるお客様も増えていますので、前向きに検討して参ります。


-では、作品管理側でご希望などはありますか?

方波見さん:そうですね、イタリック体での入力ができるようになるとありがたいのですが…。

-自然史系の博物館では学名の表記に用いることが多いようで、ご要望としてよくうかがいます。美術作品ではどのような場面でお使いになるのでしょうか。

方波見さん:作品名に使うことがあります。たとえば、『花瓶《オラン》』という作品名を英語で表記する際、「オラン」をイタリックで表記したいのですが、難しいでしょうか。

-なるほど、斜体ですか…。大変申し訳ないのですが、おそらく意外に難題だと思いますので、改めて技術者に最新の状況を確認してみますね(メモ)。

方波見さん:ご検討いただければ嬉しいですが、こちらでも工夫してみます。あと、親子関係のデータはどのように管理したらよいでしょうか。グループで1点として扱うべきか、それとも1点ずつ登録する方がよいのか…。

-最近は、両方を登録して関連資料として紐付ける館が多いように思います。

方波見さん:そうなると、全体では数が合わなくなるのでは?

-はい、それを避けるために「件数カウント対象」という項目を作っておられるケースもありますよ。設定の方法はいくつかありますので、詳しい操作は改めてご説明させていただきます。

方波見さん:ぜひお願いします。あと、機能に関する要望ではないのですが、時々でよいので今回のようにご相談できる場があると嬉しいです。今のお話も参考になりましたし。

-もちろんです。逆に、こちらから教えていただきたいことがありますよ。たとえば、こちらのコレクションのページはよくできていると社内でも評判になったのですが、これはどなたがお考えになったのですか?

方波見さん:コレクションページに関しては私が担当しておりまして、制作会社さんにお願いしました。まず、「アール・デコってなに?」という方のために作品のハイライトで魅力を伝えて、マイコレクション機能ではお気に入りの作品をブックマークしてもらえるようにして。

-検索にもお勧めのキーワードが表示されていたり、先ほどのように展示中の作品も抽出できたりと、細やかな気遣いを感じます。デザインも、とても見やすいですし。

東京都庭園美術館 本館 ベランダ

方波見さん:嬉しいです、ありがとうございます。

-では最後に、今後の展望をお聞かせください。

方波見さん:先ほどの「写真をクリックしたら情報が表示される」という表現は、ぜひ挑戦してみたいですね。室内の写真を見て、映っているラリックのシャンデリアの情報を閲覧できたりすると楽しそうです。

-写真に加えて、建物内部の3D データを使う方法もありますね。弊社でもサポートさせていただきます。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

 


本文中画像提供:東京都庭園美術館

Museum Profile
東京都庭園美術館 建築と美術、庭園が調和する都立美術館。宮邸時代の面影を残す敷地には、開放的な前庭や池を備えた日本庭園が広がります。1933年(昭和8年)竣工の旧朝香宮邸を利用した本館はアール・デコスタイルの内装が美しい国の重要文化財で、2013年(平成25年)には展示室や庭園を望むガラス張りのロビー、カフェなどを備えた新館も完成。特色ある展覧会や教育普及事業に注力し、文化的な都市空間を支える憩いのアートスポットです。

〒108-0071 東京都港区白金台5-21-9
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