ミュージアムインタビュー

vol.242取材年月:2026年10月豊島区立熊谷守一美術館

個人美術館としての作品データの管理と公開はもちろん
周辺の情報の一元化も検討してみたいと思います。
学芸員 高崎 真樹 さん
学芸員 西野 萌 さん

-I.B.MUSEUM SaaSをご導入いただいたのは2024年でしたが、すでに作品データの公開も実現されて、順調そのものですね。まずは導入前のご様子からお聞かせください。

高崎さん:私は2018年4月に着任したのですが、当時はインターネットの接続環境が老朽化していて、職員の間でのデータのやり取りはExcelのファイルとUSBメモリを使っていました。何をするにも不便だったので、「クラウドサービスでデータを一元化したいな」とずっと思っていたんです。

-実際の導入はご着任から6年後という計算になりますが、きっかけは?

高崎さん:2021年頃に体制が変わって、20代の職員で現場を回さなければならなくなったのがきっかけでした。経験が少ない私たちで仕事の方法論を考えるのは大変な作業ではありましたが、ようやくクラウドサービスの準備ができるという期待もあって。そんな中で、御社から資料が届いたんです。

-素晴らしいタイミングだったわけですね。それにしても、情報管理にはかなり苦労されていたのですね。

高崎さん:ちょうど過渡期でもありましたので、みんなで情報を共有しようにも「どれが最新のデータなのか」を把握しにくい状態で。御社の資料を見て「あぁ、これがあれば現状から脱却できる」と思いました(笑)。

-ただ、区立の施設ですから、行政としての調達の手続きも必要だったのでは。

高崎さん:当館は1985年、自宅兼アトリエの跡地に熊谷守一の次女・榧(かや)が私設美術館として創立したのが始まりです。2007年に豊島区立となった際、従業員とともに株式会社榧を創業したのですが、2022年に榧さんが亡くなった後も指定管理者として運営に携わっています。

-では、皆さんは社員というお立場なのでしょうか。

高崎さん:はい、私たち職員は全員この会社の社員で、私は生前の榧さんともご一緒にお仕事をさせていただきました。そんなわけで、I.B.MUSEUM SaaSの導入は「会社の内部手続き」という位置づけだったんです。

-なるほど。入館した時から、何となく温かな雰囲気を感じていたのですが、そんな背景があったのですね。西野さんは、いつメンバーに加入されたのですか?

西野さん: 2023年4月です。ちょうどI.B.MUSEUM SaaSの導入を検討していた頃だったんですよ。

高崎さん:学芸員としての仕事に集中してもらおうということで、その一環として作品情報の管理も含まれていました。開館40周年の関連業務もお任せすることになったので、大変だったと思います。

-いきなり大仕事を託されたわけですね。

西野さん:そうなんです。そんな状況でしたので、当時は余裕がなくて、システムを使いこなすところまでは辿り着けませんでした。

-弊社がもっとうまくサポートしなければなりませんでしたね。申し訳なく思います。


-元データがExcelファイルだったということは、一括登録で登録されたのでしょうか。

西野さん:その前に、まず前段階のExcelの整理が大変でした。やっと終わって一括登録を使おうとしたのですが、実はうまくいかなくて。

-やはり操作説明が不十分だったのですね。お問い合わせはいただきましたか?

西野さん:いえ、点数が少ないので、一括登録ではなく1点ずつ登録することにしました。

-え! お手数をおかけしてしまったのですね。それは申し訳ございませんでした。

西野さん:いえいえ、こちらが問い合わせをしませんでしたから。

高崎さん:ひとまず1点ずつ登録するのが確実でしたしね。項目のレイアウトをシステム任せにしてしまったのも、一括登録がうまくいかない原因だったのかもしれません。

-項目体系が違いすぎていたということでしょうか。もしそうであれば、ご導入時に弊社からもっときちんとご説明すべきだったと思います。

高崎さん:でも、画面のリニューアル以降は、しっかり使えるようになりました。

西野さん:リニューアルのタイミングで、サポートの方が説明に来てくださったのがきっかけで、使いこなせるようになったと思います。しかも、2回も来ていただきましたし、助かりました。

-恐れ入ります。でも、そこから公開までは、とても早かったですよね。

高崎さん:作品数が少ないですからね。おかげさまでスムーズに進みましたので、設定をいろいろ試したりしてみました。

-ヘッダーにロゴを入れたり、色も指定したりと、使いこなしてくださっていますね。内部業務でのご利用はいかがですか?

高崎さん:修復や借用など、作品に動きがあった時にはそのつど入力するようにしています。検索機能も使いますが、公開ページを見る方が多いですね。

-え! 検索機能に何か問題が?

高崎さん:いえ、動きが軽いこともありますが、一般の方向けに作られている分、公開画面の方が手軽に探せるんですよ。

-なるほど。でも、管理システム上なら詳しい条件を使って的確に絞り込めると思いますが、そうした機能はあまりお使いにならないのでしょうか。

西野さん:作品数が234点ですから、場合によっては紙の作品集を開いて確認する方が早かったり(笑)。どのあたりに載っているか、だいたい頭に入っていますから。

高崎さん:なんだか申し訳ないですね(笑)。

-とんでもないです(笑)。業務上で必要な部分だけをお使いいただくのがベストですので。ただ、作品数が少ないのであれば、検索以外でもっとお役に立てるサービスにしていかなければなりませんね。


-では、何か気になる点などはございませんか?

高崎さん:特にありませんが、強いて言えばスマートフォンでの使い勝手がよくなると、使う場面が増えると思います。

-たとえば、どんな点でしょう?

高崎さん:画面が小さいので、入力する時は見やすいパネルがポップアップするとか。収蔵庫だけでなく、館内にいない時に気づいたことを気軽に入力できるとよいですね。

-なるほど、確かに入力パネルだけをポップアップさせるのはよいアイデアですね。さっそく検討してみます(メモ)。では、今後の展望などお聞かせいただけますでしょうか。

西野さん:作品情報をアーカイブ化することができたので、次はそれをどう活用していくかについて考えたいです。

-外部への発信だけでなく、作品のラベル出力やコンディションチェックなどの館内業務でもご活用の幅を広げていただけると思います。

高崎さん:館内業務と言えば、守一の作品情報はもちろんですが、榧さんの作品や遺品、書籍などの登録も進めてみたいですね。今もExcelを使っていますので、一括して管理できたら便利だろうな、と。

-個人美術館でも、作品以外の資料をアーカイブするケースは増えていますよ。その作家の魅力の発信する研究材料として活用できますので、文学館などでもよくお見かけします。

高崎さん:なるほど。当館も検討してみたいですね。

-弊社にお手伝いできることがあれば、ぜひお声掛けくださいね。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

Museum Profile
豊島区立熊谷守一美術館 その強烈な個性で知られる画家・熊谷守一が45年間暮らした旧宅跡に建つ美術館。次女の熊谷榧が私設美術館として開館し、2007年に区立美術館となりました。館内では、油彩画や墨絵、書、オイルパステルなど多彩な作品を展示。初期から晩年までの画風の変遷を通して、唯一無二の芸術世界に浸ることができます。愛用のイーゼルやチェロなどの遺品も見どころで、暮らしぶりや人柄まで伝わるアートファン必見のミュージアムです。

〒171-0044 東京都豊島区千早2-27-6
電話 03-3957-3779
ホームページ:https://kumagai-morikazu.jp/