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わせだマンのよりみち日記

2020.03.05

最後の最後にもサプライズが! 忘れじの流氷体験 —— 紋別市立博物館訪問記

北の大地・北海道の出張シリーズ! 今回は、紋別市を訪れています。オホーツク海に面したまちである紋別。東京都民の私としては、その名を聞くと反射的にダイナミックな流氷の絶景を思い浮かべます。

というわけで、この日は紋別市立博物館にやってきました。アポイントの時間よりも少し早めに到着したので、まずは展示を見学させていただきました。


まずはこちらの写真から。なかなか面白い構図でしょう? 北海道らしさ満点のトドがいて、まるでガイドさんのように左右の分岐点に立っています。目の前にすると、やはり迫力があります。もし彼(?)が生きていて、この場で戦いを挑んだら、1ラウンドでKOされそう。

しばし左右を見渡すと、左に「収蔵展示室」という言葉が。ちょっと気になりますので、まずはこちらから入室してみましょう。

「収蔵展示室」は、文字通り博物館の収蔵庫を一部公開するスペースとなっています。動物の剥製から生活用具、さらには農業、林業、漁業の道具などが所狭しと並びます。通常の展示とは異なる風景で、個人的には最も博物館らしいシーンに見えます。きれいに見せるための造作がないので、探検のように「分け入る気分」を味わえて、ワクワク感も倍増です。


敢えてさまようように歩いて気分が高揚したら、次はいよいよ展示室へ。

こちらの展示室は、ハマ(浜)・オカ(丘)・ヤマ(山)の3つのゾーンに分かれています。まずは、ハマの展示。ご覧の通り、天井に漁船の模型が設置されていて、そこから網を垂らすことで生々しさが演出されています。また、漁具と写真が一緒に展示されているので、威勢のいい漁の様子が目に浮かんでくる…という寸法です。

どうですか、この圧倒的な展示は! 頭上の漁師さんたちの姿には、得も言われぬ迫力を感じました。

下の写真は、漁師の作業場・兼・宿泊施設である番屋です。ニシン漁の季節には、各地からやって来た出稼ぎの人々が、ここで寝食を共にしていたのだそうです。こちらも臨場感がすごいですね。

続いては、オカの展示です。農業や林業を中心とした、かつての「丘」の暮らしが丁寧に紹介されています。雪国らしい展示に混じって、日本の古き良き時代の薫りがほんのりと。ホッと一息つける印象のコーナーでした。

そして、ヤマの展示へ。このコーナーには、個人的に一番のサプライズがありました。

不勉強なことに知らなかったのですが、ここ紋別では、かつて金が採れたのだとか。鴻之舞(こうのまい)金山と呼ばれたそうなのですが、大正5年から昭和48年まで操業していたのだとか。昭和48年と言うと、私が子どもの時代。つまり、(おじさんとしては)つい最近まで稼働していたわけですね。

そんなわけで、このヤマの展示では、北海道版のゴールドラッシュ(!)の様子が紹介されていました。映像でしっかり説明されていたので、しばし見入ってしまいました。

満腹の鑑賞と、充実の打ち合わせ。そしてもうひとつ、紋別での必須タスクと言えば…もちろん「流氷」についての学習ですね。

実は、こちらに向かう前、ホテルの窓から流氷が遠望できました。ホテルスタッフの方によれば、何とこの日に接岸したばかりとか。望外の幸運にテンションMAX状態で館を訪れたので、展示鑑賞で勢いをさらにブーストした状態で、学芸員さんを質問攻めにしてしまいました。

というわけで、ここでは流氷について触れておきましょう。

今でこそ観光資源となった流氷ですが、地元の方々にとっては、かつては「漁業を妨げる厄介者」に過ぎなかったそうです。そんな流氷を、村瀬真治という画家が絵のモチーフにしたことから、街と流氷の関係に変化が訪れます。

流氷はどちらかと言えば嫌われ者だったので、その画家の活動に、当初は街の人々も困惑していました。ところが、描き続けているうちに作品自体の魅力が伝わり、また全国でも評価を集め始めたことから、流氷をポジティブな目で見る人が増えていきます。

市民参加型の北方圏国際シンポジウム「オホーツク海と流氷」をはじめ、市民参加ができる関連イベントやお祭りが開催され、観光用の砕氷船も登場。そして、海にそびえる「オホーツクタワー」では、流氷に閉ざされた海の中の様子を見るという非日常体験まで提供されるなど、「流氷観光」は本格化の道を辿りながら今日に至るわけです。

つまり、ひとりの画家の情熱が起点となって、街の在り方が大きく変貌したのです。

経済が文化を「タニマチ」的に支えるケースは想像しやすいですが、一人の芸術家が地域経済を生み出したのであれば、それはもう地元の偉人ですよね。紋別市の流氷には、そんな素晴らしいエピソードが隠れていたわけです。

その村瀬真治の流氷絵画は、「まちなか芸術館」で鑑賞することができます。もちろん出かけたかったのですが、残念なことに、この日は北海道出張の最終日。オホーツク紋別空港発の飛行機にギリギリの時間となってしまい、見逃してしまったのです。

ここまで来ておいて、何たることか。後ろ髪を引かれる思いでタクシーに。空港へと飛ばす途中、諦め切れない私は、運転手さんに「流氷が見られる場所を経由してもらえませんか?」とお願いしました。すると…こんな素敵な場所に案内してもらえました。

ご覧ください、帰京直前のプレゼントのような流氷体験。これぞサプライズ!

肌を刺すように感じる寒さでしたが、震えながらも目に焼き付けます。青空とのコントラストが本当に美しく、忘れじのワンシーンとなりました。この光景が鮮明に脳裏に残っている間に必ず再訪し、紋別を変えた流氷絵画をじっくり見てみたい…と、次の出張の算段に余念のない私です。

 


●紋別市立博物館 https://mombetsu.jp/sisetu/bunkasisetu/hakubutukan/
●まちなか芸術館 https://mombetsu.jp/sisetu/bunkasisetu/hakubutukan/