ミュージアムインタビュー

vol.124取材年月:2017年2月多治見市モザイクタイルミュージアム

データが消えたら、資料の価値も半減しかねない。
身をもって体験したので、クラウドへの移行を決断しました。
学芸員 村山 閑 さん

-村山さんは、岐阜県現代陶芸美術館にいらっしゃった頃にも、弊社のシステムをご利用いただいていましたよね。

村山さん:そうですね、長いお付き合いですね(笑)。

-ありがとうございます。当時は、システムの切り替え時期にご担当いただきましたが、大変だったでしょう?

村山さん:ええ、自館専用のシステムからクラウド型への移行で、機能の増減などがありましたからね。

-その節はご不便をおかけいたしまして申し訳ございませんでした。機能が増えるのはともかく、なくなるのは厳しいですよね。

村山さん:入力作業を担当していたスタッフからも結構リクエストが寄せられたのですが、実現できない部分があって、歯がゆく思いました。特に、独自の書式での出力ができなくなったのは残念でした。

-そこはクラウドの一番の課題かもしれません。出力したデータを取り込んで帳票を成型する中間システムのようなものを、別に用意することもあるんですよ。

村山さん:すべての要望をカバーするって、やはり難しいものなんですね。

-恐れ入ります。もう少しいい方法が見つかればよいのですが…。ほかにご不便な点は?

村山さん:「前は入力欄はこっちにあったのに」とか、「選択肢で入力できたのが手入力になったのは不便」とか…。

-お使いになる方にしてみれば、細かい部分で違和感をお持ちになるかもしれませんね。

村山さん:でも、早稲田さんにもその都度対応してもらいましたし、できないことは別の方法を提案してくださいましたし。おかげさまで何とか運用できるようになりました…って、もしかしてかなりご無理を言ってました?(笑)

-いえいえ、大丈夫です(笑)。きちんと運用していただける状態までサポートするのが役目ですし。ご要望の実現に向けて努力することは、むしろ弊社の糧にもなりますから。

-ところで、村山さんはどんな経緯でこちらの館に移られたのですか?

村山さん:以前に所属していた館で、タイルの展覧会を企画しまして。その時、この笠原地区の方々とご縁ができたんです。

-なるほど。

村山さん:その後、新しいミュージアムを作るという話が出た時に、「手伝ってほしい」というご依頼をいただきまして。当初は、所属はそのままで会議に出席していたのですが、少し無理を感じていたところ、本格的な建設が始まり、「スタッフとして雇いたい」というお話をいただいたので、思い切って移ることにしました。

-大変なご決断だったでしょうね。

村山さん:そうかもしれません。笠原地区には「モザイク浪漫館」という施設があって、地域の方々が地場産業の資料としてタイルを集めておられたんです。タイルがある建物が取り壊されると聞くと出かけて回収したり、皆さんご熱心なお姿に心を打たれまして。

-その頃、一度ご来社くださいましたよね。すでに村山さんご自身も情熱を傾けておられるご様子でした。

村山さん:そう見えましたかね。

-I.B.MUSEUM SaaS のご導入は、開館前に決定されたんですよね。

村山さん:はい。実は、地域の方が集めてこられたタイル関係資料のデータベースは、すでにあったんですけどね。

-え、そうなんですか。

村山さん:ええ。ちゃんと写真も撮ってあって、FileMakerでアーカイブされていました。ところが、それを格納していたハードディスクが壊れてしまいまして…。

-うわぁ、それは大変でしたね。中のデータはどうされたんですか?

村山さん:少し前のバックアップやプリントアウトしたものから再現していただきました。結局、その作業に半年くらい費やすことになったというので、「これはクラウドのデータベースが絶対に必要だ」と痛感したんです。

-まさに、弊社もそうした危険性を多くの館の皆様にお伝えしています。自館内にデータを保管していると安心感もありますが、バックアップまで管理するのは大変ですし、万一の時には取り返しがつかなくなりますから。

村山さん:それを身をもって体験しましたので、導入検討時は「データベースがなくなったら、資料としての価値も半減しますよ」と訴えました。

-本当に仰る通りです。皆さんが汗を流して蓄積してこられたデータも財産ですからね…。

村山さん:そうなんです。入力したデータも大切ですが、そのプロセスを思うと、「なくなりました」では済まないですから。

-プロセスと仰いますと?

村山さん:タイルを集めながら、所蔵者や業界関係者にひとつひとつ訊いた情報も記載してデータベース化しておられるんです。美術作品と違って情報が少ないので、生産者並みに詳しい方にお訊きしたデータがないと、将来そのタイルが何なのかさえ分からなくなる恐れがありますから。

-それはすごい…。

村山さん:有志が足で集めた情報の集大成ですから、文字通り「財産」なんですよ。

-確かに素晴らしいですね。でも、それだけ熱のこもったデータだと、システムの機能面でのこだわりもあるのでは?

村山さん:やはり、出力機能ですね。ラベルやカードの印刷は欲しいところです。

-ラベルなら、データを取り込んで出力する方法を検討できるかもしれません。カードの方は、詳細画面の出力機能に項目を選んで出力できるようにすればどうだろう…。

村山さん:ぜひご検討をお願いします。

-かしこまりました。検討してみますね。

村山さん:ありがとうございます。でも、I.B.MUSEUM SaaSには、資料同士を関連付けられる機能とか、クリップリストとか、以前のシステムにはなかった便利な機能も多いですよ。もちろん、アプリも使ってみたいです。

-ぜひぜひ。こちらの館なら、「ポケット学芸員」がお役に立つと思いますよ。

-その「ポケット学芸員」は、展示室内でスマートフォンを利用するスタイルですが、抵抗はありませんか?

村山さん:当館の来館者は、実は若い方が多いので、便利にお使いいただけるのではないかと思います。

-若い方が来られるのは、心強いですね。

村山さん:ありがたいですよね。当館は、一部のエリアを除いて写真撮影ができますから、展示室で写真を撮ってSNSにアップしてくださる方も少なくないようですよ。

-こちらの展示は、いかにも「SNS映え」しそうですよね。

村山さん:そうなんですよ。ある先生が「来館者にすべてを伝えようとするよりも、ひとつのことをしっかり伝えた方が効果的だ」と仰っていたように、展示ですべての情報を伝えようとしても限界がありますので、何かひとつでもお持ち帰りいただければ…と。「ポケット学芸員」は最適かもしれません。

-なるほど、興味深いお話ですね。確かにその通りだと思います。

村山さん:そんなわけで、ぜひ使ってみたいのですが、正直、今はそこまで手が回らなくて。

-お使いになる際はお声かけくださいね。あと、まもなく地図と連動した新しいアプリもリリースしますので、そちらもぜひ。

村山さん:これ(新アプリ)も面白いですよね。タイルは建築に使われているものなので、街歩きなども提案できそうです。

-そのあたりもぜひディスカッションしたいのですが、残念ながらお時間が来てしまいました。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

<取材年月:2017年2月>
Museum Profile
多治見市モザイクタイルミュージアム 多治見市笠原町は、施釉磁器モザイクタイル発祥の地にして全国一の生産量を誇る「タイルの聖地」。2016年6月に開館した当館は、膨大な数のタイルコレクションを基盤に長く地域で培われてきた知識や技術情報を発信する、個性溢れるミュージアムです。タイルの原料である粘土を掘り出す山をイメージさせる個性的な外観は、鮮烈な印象と懐かしい感覚を同時に呼び起こすランドマーク。若者も含めて、今日も多くの人を惹きつけています。
ホームページ : http://www.mosaictile-museum.jp/
〒507-0901 岐阜県多治見市笠原町2082-5
TEL:0572-43-5101