ミュージアムインタビュー

vol.17取材年月:2006年5月那須野が原博物館

館運営も人生と同じで、予測不能の事態が起こるもの。
だからこそ「曖昧さ」を残すことがポイントだと思います。
学芸員 多和田 潤治さん

-はじめに、I.B.MUSEUMを導入いただいた頃のお話をお聞かせいただけますか?

多和田さん:当館は、もともと郷土資料館だったんです。三島通庸(フリー百科事典ウィキペディア参照)の別邸を利用していたのですが、被災を受けて建て直すことになって。

-それを機に、資料館から博物館へと生まれ変わったわけですね。

多和田さん:ええ、平成16年のことですね。I.B.MUSEUMの導入が決まったのは、その半年くらい前のことです。

-いまI.B.MUSEUMをお使いいただいているわけですが、使い心地はいかがですか? ご不満な点などは?

多和田さん:全く問題ないですよ。

-ありがとうございます・・・でも、何かありますよね?(笑)

多和田さん:いえ、「この機能はこうしたほうがいい」と言えればインタビューも盛り上がるんでしょうけど、本当に何も言うことがなくて(笑)。

-私の立場としては嬉しい限りなんですけどね。では、最初に点数をお聞きしてしまいます。I.B.MUSEUMおよび当社の対応を、100点満点で採点していただけますか?

多和田さん:そうですねえ。90点くらいかな?

-ホラ、10点の減点部分があるじゃないですか(笑)。ぜひお伺いしたいので、思い出してくださいね(笑)。

まず、導入の時の苦労などについて、お聞かせください。

多和田さん:いちばん大きかったのは、仕様の変更でしたね。「これで行こう」と決めた仕様が、予算の都合で縮小されてしまいまして。

-予算の問題は、皆さん、苦労なさっているようです。私たちも、予算申請に添付できるような情報提供を心がけてはいるのですが・・・。

多和田さん:来館者向けの端末やホームページとの連携で収蔵品情報を公開しようと考えていたのですが、結局はスタンドアローンで使うことになったんです。あれは、利用者の皆さんに喜んでいただけると思ったので、残念だったなあ。

-では、実際に使い始めてからのご苦労は?

多和田さん:苦労というほどではありませんが、そう言えば、出力の様式なんかはちょっと不便かな? 書式が固定されていますから、変更が大変なんですよね。私が使いこなせていないだけなのかも知れませんけど。

-なるほど。多和田さんは市町村合併を経験しておられますし、お仕事上の環境的な変化もあったと思います。ご不便が発生しているかも知れませんね。

多和田さん:まさにその通りなんですよ。当初は、歴史・民俗・美術・考古・自然という5分野でスタートしたんですが、市町村合併をきっかけに文学資料も対象になりましてね。これは予想外の変化でしたね。

-それは大変でしょう。根本的な問題ですから、資料体系もデータベースの構造も変えないと対応できないのでは?

多和田さん:まあ、現場では、コストをかけずに何とかやっている状態ですね。予算があればもっといろんなことができるんですけどね。仕方がないです。

-では、リース期間満了の時期あたりに、そのあたりを考慮してシステムのリニューアルを提案させてください。最初の仕様で導入できなかった「情報公開」の部分も。

多和田さん:実現したいですよねえ、利用者の方々のためにも。そうそう、早稲田さんはたくさんの博物館とお知り合いですから、予算申請の事例もたくさんご覧になっていますよね? そのあたりもアドバイスをいただければ。

-もちろん、私どもでお役に立てることなら、何でもご相談ください。

-というわけで、10点の減点内容も見えてきました。システムとして仕様的に固め過ぎていて、簡単に加工できない、と・・・(メモメモ)。

多和田さん:それもそうですが、あとはもう少し、今日みたいな場があれば・・・。

-「今日みたいな場」と仰いますと?

多和田さん:出力の件は、ちょっと贅沢な要望かなと思います。市町村合併は当時に予見できたものではありませんし、館員たちは満足して使っていますので減点するほどのものでもないですし。SEさんも本当に親切で、細かい相談に乗ってくださいましたしね。

-ありがとうございます。みんなに伝えますね。

多和田さん:導入にあたっての対応も、お世辞抜きで満点だったと思います。ただ、今日みたいにコミュニケーションが取れる機会があれば、私たちももっと次期システムの構想を時間をかけて考えたり、予算申請の方向性を考えたりできると思うんです。ですから、早稲田さんとは普段から密に接していきたいな、と。場所、遠いですけど(笑)。

-それは失礼しました。距離の遠さは言い訳になりませんね。これからは、情報提供の面でも頑張ります。

多和田さん: ぜひお願いします。

-最後に、これからシステムの導入を検討される方にアドバイスがあればお願いします。

多和田さん:私の経験だけで語って申し訳ないのですが、仕様を考える時は、緩やかな部分を残しておくことが大事だと思います。

-ご実感がこもっていますね。いろいろとおありでしたもんね。

多和田さん:まるで人生のようにね(笑)。導入後、運営方針の変更があっても対応できるように「曖昧な部分」を確保しておくと、あとあと便利だと思いますよ。

-実際に、大きな変更に何度も対応されているだけに、説得力を感じます。本日は本当にありがとうございました。

<取材年月:2006年5月>

Museum Profile
那須野が原博物館 すぐ近くにあるボーイスカウトのキャンプ場に象徴されるように、豊かな自然に囲まれた博物館。那須野が原の歴史・民俗・美術・考古・自然を中心に、地域に根ざした展示で地元の人々に親しまれています。那須野が原の開拓を体感できるイベントでは、那須疏水からの水汲みやモッコ担ぎ、石臼などが体験でき、子供たちが楽しみながら学ぶことができるような、暖かい気配りに満ちた博物館です。

ホームページ : http://web.city.nasushiobara.lg.jp/hakubutsukan/
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