ミュージアムインタビュー

vol.196取材年月:2023年1月向日市文化資料館

先人たちから私たちへ、そして次の世代の方々へ。
資料とともに、情報も受け継がれるべきだと思います。
担当課長 里見 徳太郎 さん

-前回にお邪魔したのは、システムご導入の前でしたね。大変ご無沙汰いたしまして…。

里見さん:「小さいとこサミット」でご一緒した後にご来館いただいたんでしたよね。

-お懐かしいですね。ただ、あの時はまだ導入のご予定もなかったと記憶しています。

里見さん:そうでしたね。でも、平成28年度に私が着任した時には、I.B.MUSEUM SaaSの資料は館内で保管していたんですよ。前任者が請求してくれたようで。

-なるほど、情報は収集しておられた、と。

里見さん:はい。館長も大いに評価していたのですが、月3万円と低額とは言え、新規の予算を獲得するのはなかなか大変でして。

-予算の壁のお話は、あらゆる館で耳にします。それでも通ったのは、何か特別な理由が?

里見さん:新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、非接触による情報提供法が課題になったんです。インターネットで資料情報を公開して、アプリでも配信していこうと。

-ご導入から間を置かずに情報公開を実現されましたが、そんな背景があったのですね。反響はいかがですか?

里見さん:当館の資料で昔の食事の模型があるのですが、先日、公開ページを見た出版社の方から「写真を使わせてほしい」というお問い合わせがありました。狙い通りの成果につながっているという手応えはありますね。

-それは素晴らしいですね。弊社としても嬉しい限りです。

 


-とは言え、ここまで迅速に公開できたということは、システムご導入の前に、すでにデータが整っていたのですよね? 一部は弊社でも移行をお手伝いいたしましたが、内容の点検などはお済みだったわけで。

里見さん:基本情報と画像で構成するデータが多かったですからね。解説の文章などはさほど多くはありませんでしたし。

-解説などはこれから拡充していくご予定ですか?

里見さん:はい。毎年開催している『くらしの道具展』の解説の題箋などから登録していこうと思っています。もちろん、人名などは確認しながらの登録となりますので、少し時間がかかりますけどね。

-先行して基礎情報を公開して、後から肉付けしていくわけですね。最近はこうした手法で公開される館が増えましたが、それでも導入段階で画像がきちんと整っていたのはすごいと思います。

里見さん:ありがとうございます。平成25年度に実施した緊急雇用創出事業で、写真とExcelデータはかなり整ったんです。まさに先人が残してくださった財産が活きたわけですから、私たちも次代に継がなければなりませんね

-資料はもちろんですが、情報も財産ということですね。本当に素晴らしいことだと思います。しかも、それを発展させていくわけですからね。

里見さん:そうですね。たとえば、これまで数回にわたって、市内にお住まいの画家の方から水彩画約180点と油彩画約30点をご寄贈いただいているのですが、館の性質上、美術をテーマにした展覧会を年間通して開催するのは難しいので、データベースで公開させていただこうと考えています。

-なるほど、館のサービスとしても幅が出ますね。

里見さん:市内の風景をお描きになった作品もあるので、「にっぽん風景なび」でも一部公開しているんですよ。ほら、こんな感じで…(アプリを開いて)。

-あ〜、これはよいですね! へ〜、市内には石碑が結構あるんですね…。街歩きが楽しくなりそうです。

里見さん:ありがとうございます。当市は日本で3番目に面積が狭いコンパクトなまちなので、地図にピンを立てて文化財巡りを提供するには向いていると思うんです。そんな観点でも、もっとデータを増やしていきたいんですよ。

-アプリも使いこなしていただいていて、本当に嬉しいです。でも、ここまで来るには、操作面などいろいろと難しくはありませんでしたか?

里見さん:実は、導入前から見学に行っていたんです。和束町さんが導入されていましたので、お邪魔して。

-え? 本当ですか! 知りませんでした!(驚)

里見さん:そうなんです(笑)。館長と二人で画面を見せていただいていたので、「システムはこういうものなんだ」というイメージは早くからつかむことができたんです。割と難しい機能まで見せていただいたんですよ、一括登録とか。

-それはすごい、弊社の操作説明を代行していただいたようなものじゃないですか。このインタビューが終わったら、すぐお礼を申し上げないと…。

里見さん:よろしくお伝えください(笑)。

-それにしても、データがしっかり登録されていて、公開も短期間で実現されて、「ポケット学芸員」も「にっぽん風景なび」もご利用とは。もう先進事例ですね。

里見さん:とんでもないです、まだまだこれからですから。

-今後の展望をぜひお聞かせいただきたいです。

 


-ほかにご利用になりたい機能などは?

里見さん:今は登録や公開の機能を使っていますが、ゆくゆくは入出庫機能で出品歴を蓄積できればと思っています。先ほどお話しした『くらしの道具展』は、年によって展示する資料が少しずつ異なりますので、正確な履歴も残せますし。

-そうした情報は、将来の展覧会の企画に役立ちますからね。

里見さん:そうなんですよね。あとは、やはり未登録の資料情報ですね。以前に利用していたデータベースソフトなどに残っているデータもありますので、こちらの移行も済ませないと。

-古いデータを扱うのであれば、分類や項目の設定が必要になる可能性もありそうですね。項目体系の検討段階からでもサポートいたしますので、ぜひご相談くださいね。一方の公開データについてはいかがですか? YouTubeとの連携で動画も公開されていますね。

里見さん:ええ、たとえば一昨年に開催した紙に関する国際シンポジウムの映像とか。コロナ禍で海外の専門家の渡航が困難だったのでオンラインで開催したのですが、同時接続が320人、当館研修室の大型スクリーンにリアルタイムで映像を投映する視聴会場にご来場いただいた方が40人の計360人で、海外からのご参加もかなりありましたよ。館のホームページよりもI.B.MUSEUM SaaSでの公開の方が自由度が高いですし、データを関連付けて見せることもできるのもよいですよね。

-ありがとうございます。でも、ここまで使いこなしていただくと、逆に機能面で物足りなさもおありでは?

里見さん:いえいえ、そこまでは。でも、敢えて挙げるとしたら、公開ページにキャラクターを載せるとかができないかな、と。当館には「都ひき麻呂(みやこのひきまろ)」というマスコットキャラクターがいまして。この子なんですが。

-ポケット学芸員でも公開されていますよね。とてもかわいいので、検索画面などに顔を出していると子どもたちも楽しめそうです。課題とさせていただきますね(メモ)。

里見さん:ぜひお願いします。あとは、Googleアナリティクスでアクセス解析を行っているのですが、間もなく旧バージョンのサポートが終了するようですので、引き続き使えるようにしたいですね。

-そこは重要ですので、もちろん対応させていただきます。本日は元気が出るお話をたくさん聞けました。お忙しいところ、本当にありがとうございました。

Museum Profile
向日市文化資料館 平城京から遷都されて平安京に至るまでの10年間、乙訓の地で営まれた長岡京。昭和59年、遷都1200 年を記念して古都の宮跡の一角に開館した資料館です。常設展示では出土遺物や当時の食事を再現した模型、復元画など当時の息吹を感じることができるほか、各時代やテーマの展覧会やイベントも多数。知識を仕入れて西国街道の歴史探訪に繰り出す人、隣接する図書館にも訪れて知的な時間を満喫する人…と、いつも賑わう文化スポットです。

〒617-0002
京都府向日市寺戸町南垣内40-1
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