ミュージアムインタビュー

vol.197取材年月:2023年1月千代田区立日比谷図書文化館

その施設がどんな文化財を保有しているのかについて
地域の皆様に開示することは、大切な使命だと思います。
文化財事務室 学芸員  篠原 杏奈 さん

-篠原さんは、いつ頃こちらに着任されたのですか?

篠原さん:2019年です。I.B.MUSEUM SaaSの導入が決まった年で、収蔵庫の整理やデータの整備が区の課題として議論されていた時期ですね。

-現在は区立の図書文化館という位置づけですが、もともとは東京都立日比谷図書館だったんですよね。

篠原さん:はい、平成23年に図書館と歴史民俗資料館が統合されて、現在の組織になりました。日比谷図書館が千代田区に移管された後、館の4階に収蔵庫などを整備して、資料館が引っ越して来た形ですね。

-丸ごとお引っ越しとなると、作業も半端ではなかったのでしょうね。

篠原さん:3万7000点の資料のうち2万点ほどを民具が占めているのですが、大型のものは移動するだけでも大変ですからね。加えて、前任者も、そのまた前任者も、移転後に資料を整理してはExcelのリストを作るという作業を延々と続けていたようです。

-しかもそのつど展覧会もありますし、さらに担当者の交代まで重れば…。

篠原さん:私の着任時もそうでしたが、そのたびに「何がどこにあるのか」を把握するところからやり直すような状況になります。

-なるほど、それで情報の整備が課題になったわけですね。

篠原さん:はい。正確で効率的な管理には、まず共有できるプラットフォームが不可欠という結論になったんです。

-数ある製品・サービスからI.B.MUSEUM SaaSをお選びくださった理由は?

篠原さん:私と同時に着任した同僚が、前職で上司とともに導入を検討していたそうなんです。最終的には実現できなかったものの、かなり具体化していたらしく、機能なども熟知していましたのですんなりと決まりました。

-比較検討はなさいましたか?

篠原さん:もちろんです。御社のシステムは都内での導入事例も豊富ですから、足立区さんや北区さん、それに墨田区さんなどには実際にお話をうかがいました。

-書類上の検討だけでなく、ヒアリングも実施されたのですね。お客様の輪が広がるようで、本当に嬉しく思います。

 


-2020年度のご導入の際には、データ移行もお手伝いさせていただきました。約3万5千点のデータが入った状態でスタートとなりましたが、その後のご利用状況はいかがですか?

篠原さん:おかげさまで快適です。ただ、元データからして表記の揺れはありますし、収蔵庫内の実物との不一致が見つかることもありますので、完全なデータに仕上げるにはもう少し時間がかかりそうです。

-すべてではなくても、データはすぐに公開されましたよね。

篠原さん:まずは指定文化財について公開を行いました。実物と照合しやすいものが多くて、データ内容の確認作業が早く終わりましたので。あくまで現在の見込みではありますが、来年度末にはすべて公開することを目指しているんですよ。

-えっ、それはすごい! でも、かなり大変じゃないですか?

篠原さん:正直、大変です(笑)。展示や各種計画策定などもあって、収蔵庫に入る時間が徐々に少なくなってきたのが気になりますが、それも折り込んだ計画で導入したわけですから。アルバイトさんにもお手伝いいただきながら頑張っています。

-本当に頭が下がる思いです。どうぞご無理はなさらず、何かありましたらご遠慮なくご相談くださいね。

篠原さん:ありがとうございます。でも、システムの導入で、作業が随分楽になったのは確かです。必要な資料情報をすぐ取り出せて、問い合わせ対応も劇的にスムーズになりました。Excelのファイルから探し回った頃に比べればスピードが違います。

-お役に立っているなら嬉しいです。逆に、操作が難しいと感じることは?

篠原さん:もしかしたら、入力作業に慣れていない方は初めは戸惑うこともあるかもしれません。でも、たとえば収蔵庫内でのデータチェックは出力したExcel上で行いますし、システムに一括登録するのは私が担当していますので、大きな混乱はないですね。

-一括更新は比較的高度な機能なのですが、さっそく使いこなしていただいているのですね。

篠原さん:慣れればすごく便利だと思いますよ。あとは、検索条件を保存できる機能もよく使いますね。展覧会を企画する時などには、本当に助かります。

-データの公開といい、機能の使いこなしといい、順調そのものですね。

 


-以前はポケット学芸員も以前はご利用いただいていましたよね。

篠原さん:はい。当館に寄託されている浮世絵を紹介する展覧会で、多言語解説を行うために導入しました。これまで音声ガイドなどを導入した経験がなく、開催準備にも追われていましたので、手軽に導入することができました。

-なるほど。展覧会が終わって現在は非公開となっていますが、今後のご予定は?

篠原さん:常設展示でも利用したいのはやまやまなのですが、準備の時間が取れなくて。

-確かに、ここまでのご奮闘ぶりをお聞きすると、もう少し落ち着いてからでないと厳しいかもしれませんね。

篠原さん:ただ、来館者の方々の間では、解説を耳で聞いたり、見終わってから文字で振り返りたいというご要望もあるようなので、何とか早めに実現したいと考えています。

-本当に大変なお仕事ですが、ぜひ頑張ってください。ところで、インターネットでデータを公開された後、反応などはいかがでしたか?

篠原さん:まずは「区がどんな文化財を持っているか」という情報を区民の皆様に開示できたことは、大きな前進だと思います。さまざまな形でお声が届いていますし、お電話をいただく時も事前に公開ページをご覧になる方が増えたので、問い合わせの対応もスムーズになってきました。

-実務にも好影響があるのですね。

篠原さん:はい。千代田区と言えば江戸城をイメージされる方も多いかもしれませんが、それ以外にも様々な資料や作品を扱っています。今までそれらの情報を十分に発信できていなかったので、反響はとても嬉しいです。データ整備は地道な作業ですが、区民の皆様のお声を励みとして着実に続けていきたいです。

-公開情報は段階的に増やすことになるかと思いますが、更新の時期や頻度は決めておられるのですか?

篠原さん:年2回ということで、次回はこの3月に行う予定です。文化財のホームページもリニューアルしましたので、そこでもPRするつもりです。

-それなら、「2023年3月公開資料」という項目を作って、検索結果一覧ページとしての誘導リンクをサイト側に用意しておくと、どんな資料が公開されたかをご覧いただきやすくなりますよ。

篠原さん:それはよいアイデアですね! ぜひ実施したいです。

-項目の追加や公開の設定などの方法については弊社でサポートできますので、ぜひお申し付けくださいね。本日は前向きな話をたくさん聞かせていただき、とても元気づけられました。ご多忙の中、本当にありがとうございました。

Museum Profile
千代田区立日比谷図書文化館 2011年、百余年の歴史を誇る都立日比谷図書館が千代田区に移管されて誕生した施設です。図書館に加えて、千代田区の歴史や文化を展示する「ミュージアム」と、講座やイベントが開催される「カレッジ」の機能が一体化。1階で常設展や企画展を楽しみ、4階にある明治大正期の古書に触れるという文化体験を満喫した後は、日比谷公園の木漏れ日の中でゆっくり過ごす贅沢な時間を堪能。大都会の知的な癒しスポットとして人気を集めています。

〒100-0012
東京都千代田区日比谷公園1-4
電話番号:03-3502-3348(文化財事務室)
ホームページ:https://www.edo-chiyoda.jp/