ミュージアムインタビュー

vol.202取材年月:2023年3月松本市美術館

デジタルデータで管理しつつ、手書きの記録はアナログで。
当館の場合、現状ではこの使い分けで管理しています。
学芸員  稲村 純子 さん

-こちらは開館当時から弊社システムをご利用いただいていますね。稲村さんは当時のことをご存じですか?

稲村さん:はい、よく覚えています。御社には、当時から作品と図書の管理、それに施設予約のシステムを提供していただきましたね。私はシステムの担当ではなく使う側でしたが、システムはデータの検索などでよく利用していました。

-長いお付き合いをありがとうございます。その後、2015年にI.B.MUSEUM SaaSへと移行いただきました。

稲村さん:私は、ちょうどその頃に育児休暇をいただいていました。画像の一部がうまく移行できず、前任者が対応していたのですが、その作業が終わる時期に復帰しまして。データがほぼキレイになってから引き継いだので、少し申し訳なく思いました。

-その節は弊社がご迷惑をおかけしたようで、大変申し訳ございませんでした。その後は、稲村さんがデータをメンテナンスしておられるのですね。

稲村さん:はい、そうです。作品の情報内容をもっと深く、もっと細やかに整えながら、より活用しやすいデータベースづくりを目指しています。3~4年をかけて少しずつ必要な情報を登録しましたので、いまは作品の画像まで全部システムに入っています。

-素晴らしいですね。データ整備は、ほかのお仕事の合間に行っておられるのですか?

稲村さん:はい。それに、当館では大規模改修で1年ほど休館しましたので、その期間を利用して、ほかの職員も一緒に集中的に整理を進めました。英語表記のテキストなども追加したのですが、データだけではなく項目ごと後から足せるというのは、とても柔軟な仕組みですよね。

-ありがとうございます。お話をうかがいますに、まさに弊社が意図していた活用法も実現してくださっていて、とても嬉しく思います。

稲村さん:いえいえ、逆にもっと活用できるはずと思っているんですよ。このシステムは本当はいろいろなことができるのに、私たちがまだ追いついていなくて。たとえば入出庫の情報なども一元管理しようと少し前から準備は進めているので、早く着手したいです。

-ぜひご活用いただければと思います。弊社もサポートさせていただきますので、実際に導入される際にはご連絡くださいね。

 


-さて、日常業務の中ではどんなシーンでシステムをお使いですか?

稲村さん:たとえば、データベースからコンディションレポートなどを出力して使う時とか。昔は紙の台帳からデータベースに登録していたのに、今は逆にデジタルデータから帳票を作るのですから、面白いですよね。

-それはよい工夫ですね。デジタルとアナログを併用しておられるわけですね。

稲村さん:そうですね。休館期間に全作品のコンディションレポートを作って出力してありますので、システムに登録できないような情報を書き込んだり。

-それはすごい、全作品のシートが揃っているのですか。コンディションレポートと言うと、作品画像に〇印を入れて、線を引いて「この部分がこういう状態になっている」と気付いたことを書き込んでいくような使い方ですか?

稲村さん:その通りです。手書きソフトのように、書いた文字をそのまま登録できる機能があればよいのですが。

-タブレットで手書きした情報を取り込むとか、将来的には実現できそうな気がしますので、持ち帰って検討しますね(メモ)。でも、出力したコンディションレポートに手書きで修正すると、システム内の登録データと情報が食い違ってくることはありませんか?

稲村さん:確かに不便なところはありますが、現状では、作品の状態は紙のコンディションレポート、それ以外の作品情報はI.B.MUSEUM SaaS と役割を分担させています。その代わり、コンディションレポートはPDFでも保存するようにしています。

-なるほど、それなら安心ですね。それぞれの特性をうまく使い分けておられますが、ほかに似た活用法は?

稲村さん:ラベルづくりもそうですね。今までも作品の箱に貼っていたのですが文字だけだったので、帳票機能で画像付きで作れるようになったのが嬉しくて(笑)。とても管理しやすくなりました。

-帳票出力が大活躍ですね。

稲村さん:Wordなどで画像を貼り付けるような方法では、たぶん作業が追いつきませんからね。本当に帳票機能さまさまです。

-帳票の設定作業はいかがでしたか? 難しくなかったでしょうか。

稲村さん:正直、少し大変でしたね。見本は用意されているものの当館で作りたい仕様とは違いますし、何より「できること」「できないこと」自体が分からなかったので、御社のご担当の方に電話で教わりました。

-いくつかの館から「便利だけど大変」というお声をいただいておりまして、私も自分でサンプルの帳票をいくつか作ってみたのですが、コツを覚えるまでは苦戦することを実感しました。

稲村さん:いろいろ丁寧に教えていただきましたので、今は問題なく利用できているんですけどね。画面上の作成作業もさることながら、実際に印刷した時にズレが生じることもあったりして、一連の調整には苦労しました。

-恐れ入ります。弊社でも何度か議論したのですが、技術的にいろいろ難しい面もあるようでして。現在進行中のリニューアルでの課題とさせていただいておりますので、もうしばらくお待ちくださいませ。

 


-さて、帳票以外によく使われる機能はありますか?

稲村さん:やはり展覧会の準備で作品について調べる時などには、頻繁に利用します。

-では、クリップリスト機能もお使いですか?

稲村さん:いえ、実はまだ使いこなせていなくて。以前、操作説明会で使い方を教えていただいたのですが、その後すぐに使う機会がないまま時間が経過してしまいまして。

-やはり使い慣れた機能を集中的に活用してしまいますよね。改めて、便利機能をご紹介するミニ説明会のようなものができないか、担当と相談してみますね(メモ)。

稲村さん:ありがとうございます。ぜひお願いしたいです。

-オンラインでのデータの公開についてはいかがですか?

稲村さん:公開するには画像データを中心に見直しが必要だと思いますので、もう少し時間がかかると思います。でも、ここまでデータを整えたのは公開するためでもありますし、法律も変わったことですから、早めに実現したいです。

-博物館法の第3条ですね。弊社でも、少しでも公開の作業が軽くなるよう、新しい機能を追加したところなんですよ。著作権法でデジタルによる公衆送信が認められている32,400画素以下の画像について、登録時に自動的に作成する機能なのですが。

稲村さん:それは確かに公開しやすくなりそうですね。ぜひ詳しく知りたいです。

-お知らせが十分でなくて申し訳ございません。このあたりも含めて、改めてご説明いたしますね。本日は、とても前向きなお話をうかがうことができました。お忙しい中、本当にありがとうございました。

Museum Profile
松本市美術館 平成14年4月のオープン以来、市民が心をひらく学びの森となる、地域に根ざす総合美術館として親しまれる人気の美術館。1階には市民アトリエのほか講座室や版画室、2階には企画展示室の他に多目的ホール、市民ギャラリーなど、市民のためのスペースも充実。3階には、地元出身の草間彌生氏の作品を中心とする常設展示も。同氏の巨大彫刻作品≪幻の華≫が正面に設置されるなど、観光客にもアートの魅力をアピールするランドマークです。

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