ミュージアムインタビュー

vol.230取材年月:2025年12月佐賀県立九州陶磁文化館

館内で実際に展示できる点数が限られる以上、
オンラインでの公開もしっかり進めていきたい。
学芸員  宮木 貴史 さん

-宮木さんは、いつ頃こちらに着任されたのですか?

宮木さん:2018年です。もともとは専門は考古で、前職では発掘調査なども担当していたのですが、美術はまったく初めてで。扱う対象が1000年くらい新しくなった感じですね(笑)。

-そんなに極端な振れ幅でも対応できるものなのですか?

宮木さん:頑張って慣れました。でも、本当に自分の仕事に自信を持てるまでには、やはり5年くらいかかりましたよ。

-大変なお仕事です。その間、2021年のI.B.MUSEUM SaaS導入と2022年の運用開始に携わられたわけですね。

宮木さん:はい。当時はファイルメーカーを使っていたのですが、そろそろ切り替え時期ということで県立博物館の学芸員に相談したりしました。

-すでにI.B.MUSEUM SaaSをお使いの館ですね。

宮木さん:ええ。県の施設に導入実績があるのは、大きな後押しになりました。県立館の中で人事異動があっても、同一のシステムなら安心ですしね。

-導入にあたり、ファイルメーカーからの移行は順調でしたか?

宮木さん:いえ、そこは大変でした。

-詳しくお聞かせいただけますか?

宮木さん:当館は規模の大きなコレクションがいくつかあるのですが、コレクションごとに管理していたのでデータも別で、横断して検索することができなかったんです。それを一本化することになったことで、データベースごとにバラバラだった項目を統一するのに苦労しました。

-それはかなり手間がかかりそうですね。

宮木さん:受け入れの時に作る目録は、数が膨大になると最低限の情報を整えるのが精一杯になって、どうしても項目の偏りが生じますからね。実は、今でもまだ完全ではないんです。

-少しずつ整備していくしか方法がないですよね…。お疲れ様でございます。


-日常業務では、どんな場面でシステムをお使いですか?

宮木さん:一番は検索ですね。産地や時代、釉薬の種類で検索したり、陶器か磁器かで絞り込んだり。クリップリストを作って特別展や常設展示の準備に使っていますよ。あとは帳票作成も。

-どんな帳票ですか?

宮木さん:たとえば、箱に差して使える横長のラベルとか。展示室に持っていく人が場所がわかるように、展示場所の情報を出力したり。収蔵庫に戻す時も重宝しますよ。

-それはいいアイデアですね、参考になります(メモ)。逆に、何か気になることは?

宮木さん:履歴をしっかり残したいので資料利用の画面をよく使うのですが、展示作品のリストの順番を入れ替えることができますよね。あれをそのままクリップリストに戻せたらいいなと思います。

-検索結果のブックマークであるクリップリストでは順番を変更できないので、展示順を考える時には資料利用画面をお使いですが、順番を決めた後の作業はクリップリストの方がやりやすい…という理解でよろしいでしょうか。

宮木さん:そうです! 具体的にはキャプションを作成する作業などですね。

-なるほど、確かに仰る通りなので、社内で議論してみますね(メモ)。ほかにはございますか?

宮木さん:1件に数点が含まれる組み物では、件数と点数が異なりますよね。でも、画面上で表示されるのはデータの数なので、たとえば80件100点が寄贈された場合は、どちらかの数字しか分かりません。そこで、検索結果に表示された項目内に数値が入っていれば、その合計が画面に表示された時に寄贈点数がすぐに分かるのでは。

-それも検討課題とさせていただきますね(メモ)。まとまった点数の寄贈は多いのですか?

宮木さん:はい。今でこそ当館には万単位の所蔵品がありますが、もともとは100点以下からスタートしたんですよ。これは、まとまった数のご寄贈が多いからなんです。たとえば、当館で一番大きな「柴田夫妻コレクション」だけで1万点以上ありますよ。有田焼の始まりから幕末・明治まで体系的に集めたコレクションで、図録には年代も掲載しています。

-すごい数ですね。

宮木さん:余談ですが、当館の図録等の研究成果は海外での発掘調査にも活用されていたりするんですよ。

-えっ? 海外の発掘現場で使われているのですか?

宮木さん:発掘現場から有田焼が出土した際、年代の特定に参考になるんです。有田焼は江戸時代から輸出もされていましたから、実はヨーロッパでも発掘されているんですよ。

-へえ~! 勉強になります。


蒲原コレクション(有田町所蔵)

-ポケット学芸員もご利用いただいていますね。

宮木さん:焼き物好きの方は裏面を見たいという方が多いので、ポケット学芸員はピッタリなんです。ただ、アプリをダウンロードしてインストールする必要がありますので、もう少し楽にお使いいただけるとよいのですが。

-それについては多くの館からご要望いただいておりまして、ダウンロード不要なWebアプリへのリニューアルを計画しています。

宮木さん:それはありがたいですね。アクセス数の集計機能なども付きますか?

-はい、集計も可能と思いますので、しばらくお待ちください。ほかに改善をご希望の点などはありますか?

宮木さん:次の作品を見る時に、前の画面に戻らなくてもよいように「次へ」というボタンが欲しいですね。あとは、画像を拡大しやすくしていただけるとありがたいです。

-リニューアル時の機能として検討します(メモ)。では今後、館として強化していきたい点などは?

宮木さん:多言語対応ですね。有田町とドイツ・マイセン市が姉妹都市ということもあってか、当館の来館者の2割ほどが外国の方なんです。

-2割というのはすごいですね! では、ポケット学芸員も多言語で配信したいところですよね。

宮木さん:そうですね。ただ、英語はなんとかなるのですが、展示替えのたびにほかの言語もすべて用意するのは、なかなか難しくて。そうそう、多言語対応の場合のポケット学芸員の表示方法で質問があるのですが、よろしいですか?

-もちろんです。

宮木さん:たとえば日本語と英語はすべて対応し、中国語は一部の作品のみに解説がある場合、ポケット学芸員のリスト画面では中国語のコンテンツがないはずの作品も番号が出てしまいますよね。これを非表示にしたいのですが、言語ごとにオン/オフを切り替えることはできますか?

-大変申し訳ございません、現在のところ言語や作品ごとの細かな設定はできない仕様となっておりまして。こちらも今後の課題とさせていただきますね(メモ)。

宮木さん:ぜひお願いします。

-では、今後の展望をお聞かせください。

宮木さん:インターネット上での作品データベースの公開を進めていきたいと考えています。館内はスペースの制約から展示できるのはごく一部ですので、ネットではできるだけ多くの作品をご覧いただけるようにしたいですね。そのあたりは、また改めて相談させてください。

-ちょうどデジタルミュージアムの事例データベースを公開したところですので、ぜひお手伝いさせてください。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

 

 

 

 

Museum Profile
佐賀県立九州陶磁文化館 佐賀をはじめ九州各地のやきもの約3万点を収蔵する博物館です。古陶磁から現代陶芸まで各時代の名品の展示とともに、特別展では国内外の研究成果も紹介。有田焼の誕生から発展の歴史まで体系的に学ぶことができ、中でも江戸時代の有田磁器が中心の『柴田夫妻コレクション』は、1万点を超える寄贈品から厳選された展示が圧巻のひとこと。歴史と美の深みに触れられるスポットとして、海外の方々の姿も目立つ人気ミュージアムです。

〒844-8585 佐賀県西松浦郡有田町戸杓乙3100-1
TEL:0955-43-3681
ホームページ:https://saga-museum.jp/ceramic/