ミュージアムインタビュー

vol.232取材年月:2026年3月小千谷市ひと・まち・文化共創拠点 ホントカ。

まずは、とにかく情報をしっかり蓄積していくこと。
そこから生まれるアイデアは、たくさんあります。
主査 (学芸員)   白井 雅明 さん

-2024年9月の開館にあたり、I.B.MUSEUM SaaSをご導入いただきました。こちらは図書館ですが、博物館クラウドをお選びになったきっかけは?

白井さん:図書、予約、郷土資料のシステムを含めた情報環境の構築について、最終的に選定させていただいた企業様のご提案に含まれていました。小千谷のことをとてもよく研究してくださっていて、ぜひ一緒に仕事をしたいと思えるご提案でしたよ。

-選んでいただいて光栄に思います。プロポーザルでは、どんなことに重点を置かれたのですか?

白井さん:学芸員として郷土資料を担当する立場としては、「人々に伝える」ことを重視しました。「客観的に情報を見せる」機能に加えて、「市民が自分で情報を蓄積できる仕組み」というのでしょうか。

-デジタルアーカイブにも市民の手を…ということでしょうか。

白井さん:はい。専門家の調査・研究による文化財情報も大切ですが、一方では市民の目線で大切だと感じるものも小千谷の文化の一部であるはずです。それらを自由に蓄積できる環境が必要だと考えているんです。

-本当に大事な視点だと思います。ただ、現実としては、市民から寄せられた情報をアーカイブに収録していくには課題も指摘されていますね。

白井さん:はい。そこで、情報を「松」「竹」「梅」に分けて考える仕組みを作りました

-3段階の情報ですか。詳しくお聞かせください。

白井さん:「松」は、市民の総意として重要性を認めて税金で守っていくもの、つまり指定文化財などですね。「竹」は、そこまでではないけれど文化資源の情報と言えるもので、ここまでを正式に「小千谷の遺伝子」として情報を公開しています。「梅」はそうしたハードルがなく市民が持ち寄るもので、公開には別途「コトノハ」という仕組みを構築しました。

-本棚や展示室で使われているカードですよね。

白井さん:はい。POPのように掲出したり、しおりのように本に挟んだり、形状はさまざまで。印刷されているQRコードから、市民の投稿情報にアクセスすることができます。

-おすすめの本のリストや感想文など、内容もいろいろですよね。とても楽しい仕掛けだと思いました。

白井さん:ありがとうございます。今後は、コトノハから「竹」へと成長して、「小千谷の遺伝子」に収録されるものが続々と生まれるような環境を作っていきたいと考えています。

-素晴らしいですね! 市民の情報をしっかり蓄積されますし、今まで注目されなかったものが文化資源としての価値を得ることもありそうです。

白井さん:実際にありますよ。たとえば、小千谷縮の商人が土産として持ち帰った浮世絵を貼り合わせ、ひな祭りの背景などに再利用した絵紙(えがみ)は、現在では市の無形民俗文化財に指定されています。あとは、こちらも地域の重要な文化である錦鯉の道具や餌についての情報とか。

-なるほど。当時なら、まさに「梅」の情報かも。面白いですね(メモ)。

白井さん:コトノハの情報は、指定文化財も、市民の投稿情報も同じ目線で並ぶのですが、時には関わる人々の情報も発信したり…ほら、こんな感じで(冊子を示しながら)。とにかく、まずは情報を蓄積していくことが大切だと思っています。

-年齢もお立場も多様な方々が関わっておられるのですね。「市民のデジタルアーカイブ」という温度感が伝わってきます。


-では、実際にデジタルアーカイブを公開してみての手応えは。

白井さん:CC-BYで公開しているので自由にお使いいただけるのですが、多くの方々が律義に「使ってもよいですか?」とご連絡をくださって。多い時期は、2日に1件くらいの頻度でお問い合わせがあります。

-おお〜、しっかり利用されていますね!

白井さん:学校では昔の写真や民具などの画像をよく使うので、先生方のご利用が多いようですね。逆に「もっとアップして欲しい」というリクエストもあったり(笑)。

-いや、本当にすごい熱量です。最近の学校が先生方もお忙しくて、なかなか手が回らないとよく耳にしますから。

白井さん:私は年間で100回ほど講座を開いているのですが、4割くらいを学校で実施して関わりを持っているからかもしれません。講座にはデジタルアーカイブのサンプルを持っていって、I.B.MUSEUM SaaSに誘導していますよ。

-発信側も利用側も活発ですね。では、逆にシステムへのご要望などは?

白井さん:画像がないデータを公開すると「NO IMAGE」の文字の画像が表示されますよね。本当に画像が公開できないものと、単に登録が追い付いていないものを、使い分けることができると嬉しいです。

-「NO IMAGE」と「COMING SOOM」みたいな。

白井さん:そうそう、まさにそれです! 工事現場の看板で作業員が頭を下げているイラストみたいに。

-面白いですね、検討しますね(メモ)。であれば、ご自身で画像を作ってみても楽しいのでは。

白井さん:あ、確かに。市のイメージキャラクター「よし太くん」を使うのもよいかも。そうそう、写真と言えば、登録の作業がもう少し簡単になるとありがたいですね。私の専門は考古なのですが、地元の写真をたくさんアップしたいので、画像の一括登録をスムーズにしたいんです。

-その点は多くの館からご要望をいただいておりまして、改善する予定です。ご不便をおかけして申し訳ございません。


-では、今後の展望や課題などはいかがでしょうか。

白井さん:まずは写真ですね。スキャンできていない写真がたくさんありますので、これも市民の皆さんと一緒に進められたらと考えています。あとは、方言のデジタルアーカイブも始めています。実際に話していただいた音声を登録して、YouTubeを使って蓄積を始めました。

-それも面白いですね! とても有意義なデジタルアーカイブになりそうです。

白井さん:誰もが気軽に楽しく取り組める歴史の継承法として、オーラルヒストリーの動画も作成を始めているんですよ。試してみたいアイデアはたくさんありますし、どんどん公開もしていきたいのですが、すべて実行するには人手が少ないのが悩ましいところですね。

-全国の博物館で共通のお悩みですよね。実現なさりたいことがこんなにおありなのですから、システム側でももっと省力化の面でお役に立てればよいのですが。

白井さん:情報の蓄積や公開の作業は順調に進んでいますので、システムにはとても満足していますよ。おかげさまで、目標に向けたスタート地点に立って、走り出すことができたわけですから。

-ありがとうございます。では、その目標についてお聞かせください。

白井さん:人口約3万1千人の小千谷市民の誰もが関わりたくなる環境づくりですね。その基盤は築くことができましたので、どんどん発展させていきたいと思います。

-まさに市民と共創するデジタルアーカイブ、本当に今後が楽しみです。本日は、とても勉強になりました。お忙しい中、本当にありがとうございました。

 

Museum Profile
小千谷市ひと・まち・文化共創拠点 ホントカ。 図書館と郷土資料館のほか、市民活動の場や子どもの遊び場までカバーする新潟県小千谷市の複合施設。大きく特徴的な屋根(ルーフ)の下、動く書架や展示台を備えた独特の資料空間(フロート)や、それぞれにテーマを持つ活動の場(アンカー)で構成。「本とか(ほかにもいろいろあるよ)」と「ホントか!?(驚き・発見)」をかけた粋な名称に相応しく、ひと・まち・文化の共創拠点として市民の毎日に寄り添う街のランドマークです。

〒947-0021 新潟県小千谷市本町1丁目13番35号電話:0258-82-2724
ホームページ:https://hontoka.city.ojiya.niigata.jp/