ミュージアムインタビュー

vol.36取材年月:2007年5月札幌市写真ライブラリー

私たちの使いやすさと、利用者の使いやすさはイコールか。
そんな視点から、もっと良いシステムを考えていきたいですね。
ギャラリー課 振興係 小塩 亮平さん
ギャラリー課 振興係 文屋 沙耶香さん

-こちらは写真ライブラリーとのことですが、所蔵作品には何かテーマを設定されているのですか? どんな写真がメインなんでしょう?

小塩さん:札幌市の写真資料を3万点ほどストックしています。市の広報写真として蓄積してきたものが中心になっているんですよ。

-先ほど、少し展示物を見せていただいたのですが、古き良き昭和を思い起こさせるノスタルジックな写真が多くて、とてもいい感じですね。やはり高齢者層を意識しておられるのですか?

文屋さん:いえ、利用者層はむしろ幅広いんですよ。年配の方々はもちろんですが、市内のスタンプラリーのコースになっているので、週末は子供もたくさん来館しますよ。その他、学生さんならレポートの資料として、先生なら教材として、学習の教材的にお使いいただくことも多いようです。嬉しいことですよね。

小塩さん:当館の写真は「市民の財産」ですから、いつでも複写サービスをご利用いただけるようなサービスを用意しているんです。電話やネットの問合せは高齢者の方が中心かな、と思っていたら、意外に新聞社・雑誌社の記者の方が多いんですよ。

-へえ、プロの皆さんのライブラリともなっているんですか。まさに「写真バンク」というイメージで、博物館と言うより写真図書館といった印象ですね。さて、そんな中で、ご利用中のI.B.MUSEUMについてのお話なんですが。

小塩さん:そうでしたね。でも、ご参考になるかどうか…(顔を見合わせて)。

文屋さん:ちょっと困っていたんですよ。特にお話しするようなことがなくて。

-えっ? 話がない…?

-もしかして、I.B.MUSEUMがまったく使えない状態になっているとか…。

小塩さん:いえ、まったく逆です。よく使っていますよ。

- ? それなら、お話は伺えますよね?

小塩さん:う〜ん、なんと言えばいいのか、私たちにとってはもう空気のような状態とでも言いますか…。I.B.MUSEUMで業務を行うことが当たり前になっているので、特に不満もなければ、改善を希望する点もないという。

文屋さん:私たちは2年ほど前にここに来たんですが、他のシステムをまったく知らなくて。文句はまったくないんですよ。

-(ホッ)ふだん、どんな使い方をされていますか?

小塩さん:先ほどの電話問合せへの対応なら、例えば「昭和20年ごろの二条市場付近の写真ありますか?」と訊かれれば、その場でI.B.MUSEUMで検索するといった感じで。ごく自然に身に付いていますね。

文屋さん:最近、複数のパソコンでI.B.MUSEUMを使えるようになりまして。それまでは使える台数が限られていたので、これが唯一の不満でしたね。で、解決して、何も言うことがなくなったと(笑)。

-なるほど、スムーズにお使いいただいているなら、何よりです。では、恒例の質問をば。I.B.MUSEUMは、100点満点で何点くらいいただけますか?

文屋さん:そうですね…80点くらいかな?

- ? 先ほどからのお話からでは、減点要素が見当たらないのですが…。

小塩さん:あ、当館には来館者向けの端末が1台設置されているんですが、あれもI.B.MUSEUMに含めて考える、ということですね。「改善しないとね」という話は、館内でよく話題になるんですよ。

文屋さん:そうそう。職員向けのシステムがよくできているので、「これをそのまま市民の皆さんにご覧いただけないかなあ」って(笑)。

-来館者向け端末ですか。どんな点を改善したいとお考えなんですか?

小塩さん:それが、考えがまとまっていないんですよ。子供やお年寄りの方にお使いいただく場合と、新聞記者のようなプロが目的を持って調べるケースを両立させなければならなくて。難しいんですよね、方向性を決めるのが。

-なるほど、小学生と大学生が同じ教科書を使うようなものですもんね。では、こちらでも、ちょっと考えてみることにしますね。

-そう言えば、システムのリニューアル時期が近づいているとお聞きしています。来館者向けコンテンツの件も含めて、追加したい機能などはありますか?

文屋さん:う〜ん、このままでいいんですけど(笑)、強いて言えば写真素材をもっとアップで表示できるようになると面白いと思います。来館者向けのサービスとして、端末でも拡大表示できると楽しいんじゃないかな、と。

小塩さん:うん、来館者サービスのための機能改善は、ぜひ考えたいですね。写真の「ボキャブラリーを増やす」こともできないかな、と思います。

-ほう? 写真のボキャブラリーって?

小塩さん:例えば、「あの建物の周辺を遠くから写した写真」とか、今の検索ワードでは引っかからないようなご質問が時々あるんです。近そうなキーワードである程度絞ってから、候補を出して探すような方法を採っているんですけどね。

-言われてみると、利用者としては「郷愁をそそる写真はないですか?」とか、曖昧なイメージで問い合わせすることも多いですよね。思いついた時にタグを増やしていける仕様にすれば、実現可能だと思いますよ。

小塩さん:それは楽しみです。あと、来館者向け端末で気付いたことがあります。操作していない時、スクリーンセーバーのように写真のスライドショーが流れるんですが、それを眺めている方も意外に多くて。何かヒントのような気がします。

-なるほど。番組的なコンテンツを載せるのもアリかもしれませんね。

文屋さん:来館者端末と言えば、高齢者向けに条件選択で先に進むようにしていますが、フリーワード検索にも対応したいですね。

-それも対応可能ですよ。プロの方には必須ですもんね。

文屋さん:話しているうちに、どんどん欲が出てきてしますね(笑)。

小塩さん:ほんと。でも、私たちのことより、利用者の使い勝手を考えるべきなので、もっと改善できる点があるのかもしれませんね。いまの使いやすさを維持できるなら柔軟に考えたいので、また改めて提案していただけますか?

文屋さん:うん、こういうディスカッションの機会は、ぜひ今後も欲しいですね。具体的に案を出していきたいです、予算にも配慮していただきながら(笑)。

-もちろんです(笑)。こちらこそよろしくお願いします。本日は初めてお聞きする話が多くて、私も勉強になりました。ありがとうございました。

<取材年月:2007年5月>

Museum Profile
札幌市写真ライブラリー 札幌の歴史・風俗などを記録した写真を収集・整理・保存するとともに、広く市民に公開する、全国的にも珍しい写真専門施設です。3万点以上にのぼる所蔵写真は、うち約5000点もの作品ホームページで閲覧可能ですが、大ヒット映画「Always 3丁目の夕日」 を思わせるノスタルジックな作品の数々だけに、ぜひ館内の展示で見たいところ。札幌の中心部に近いショッピングモール「札幌ファクトリー」の一角に入居しているため、最新のショップ群との対比によって、古き良き「昭和」のイメージがより鮮烈に伝わってくることもポイントです。
◆札幌市写真ライブラリーは、平成22年1月31日で閉館いたしました。◆