ミュージアムインタビュー

vol.43取材年月:2007年10月台東区立一葉記念館

リニューアルオープン後も、日常業務に追われる毎日。
早くデータベース化を本格稼働したいですね。
館長 林 俊和さん
専門員 大西 望さん

-一葉記念館さんには、1年ほど前のリニューアルオープンの時、I.B.MUSEUMをご導入いただきましたね。それ以前はどうなさっていたのですか?

林さん:紙のカードで管理していましたよ。私はリニューアルの1年半ほど前に着任したのですが、スタッフの入れ替わりなどで全体の把握が困難になっていましてね。そこで、新館を建てる時に、データベース化の準備を始めることになったんです。

-開館準備の時の忙しさはよく耳にするのですが、その上にデータ整備のお仕事となると、皆さん相当にご苦労なさったのでは?

林さん:もちろん大変でしたが、いろいろと工夫もしましたよ。例えば、ブックカバーの業者さんからデータをいただくとか。

- ? すみません、ブックカバーに何か関係が・・・?

大西さん:資料を保存する際にカバーをかけてもらうのですが、一緒に「明細」を納品してもらうんです。ブックカバーだけではなくて、例えば書簡などの画像データの作成をお願いした業者さんにも、同じことを頼みました。いただいた「明細」を再利用すれば、そのまま「データ」になるでしょう?

-なるほど、それはいいアイデアですね! 基礎データが出来上がっちゃいますもんね。ただ、業者さんも専門知識まではお持ちでないでしょうから、細かい間違いなんかが発生しませんかね?

大西さん:確かにそうですが、そもそも江戸時代の文字など判読できないものもありますからね。修正作業は必要になりますが、ゼロから入力するよりは早いですよ。

-発想の転換ですね。他の目的で作ったリストを、データベースに活用するという方法は、参考にしていただける館も多いと思いますよ。

-さて、I.B.MUSEUMをお選びいただいた際、いろんなシステムと比較検討されたと思います。導入決定の決め手はどんな点でしたか?

林さん:やはり、実績の多さでしたね。それに、いろいろとカスタマイズもお願いできそうな雰囲気でしたし(笑)。

-他のシステムとの比較はされましたか?

林さん:ええ。大手システム会社さんのパッケージソフトと比較させてもらいました。そちらは画面のデザインはきれいだったのですが、導入後のフォローをはじめ、心配な点も少なくなくて。

-なるほど。では、実際にお使いになってみて、いかがですか? そろそろ慣れていただけましたでしょうか?

林さん:その点は、大西に。どう? 

大西さん: う〜ん…まだ慣れたとは言えない状態ですね。使うこともままならないというのが正直なところで。これからの状態ですよ。

-なるほど、お忙しそうですもんね…。1年という時間は、私たちにとっては長くても、ご多忙な館の皆さんにとってはあっという間ですよね…(反省)。

林さん:リニューアル後、学芸業務以外にもたくさんの仕事を頼んでいますからね。システムを使って作業する時間がなかなか取れないようですよ。

-ちょっと話が飛んで、来館者向けの端末のことなんですが。弊社が担当させていただく中で、デザイン面が難航したそうで…。こちらも、ご迷惑をおかけしました。

大西さん:その点については、私たち自身もなかなかイメージを固め切れなくて。使ってみると、直したくなる部分がどうしても出てきてしまうんですよね。

-例えば、どんなところでしょう?

大西さん:タッチパネルの検索画面を例に取っても良いですか?

-ええ、ぜひ具体的に。

大西さん:館内で話し合った結果、「キーワード検索でいこう」ということで決定したんです。ところが、ご利用になった方にご感想をお聞きしてみると、タッチパネルで文字を指定していくのは意外に面倒だとの声があがりまして。

-慣れておられない方には、文字を入力するようなものですもんね。

大西さん:そこで50音順の検索機能を追加したら、新字・旧字などデータ上の細かい違いのせいか、今度は同じ人物の情報が2つ表示されてしまったり。

-なるほど、確かに直したくなりますね…。では、全体的にはいかがですか? 画面の見やすさなどは?

大西さん:当館は50代、60代の女性が多いので、ボタンや文字はもっと大きいほうが良いかな。展示物の説明文も「もっと大きくしてほしい」というご意見もいただくくらいですから。

林さん:もっとご年配の方も少なくないですからね。80代くらいの方とか。

-その年代の方々は、端末そのものに馴染んでおられないかもしれませんね。

大西さん:ええ。若い方の操作を、遠巻きにご覧になっているような感じです。

-ご年配の方にももっと使いやすい端末を、弊社がしっかり考えないといけませんね…。ありがとうございます、さっそく課題とさせていただきます。

-では、勇気を持ってお聞きします。I.B.MUSEUMと弊社の対応は、100点満点で何点くらいでしょうか。

林さん:これは使ってる本人がお答えしたほうがいいかな?

大西さん:そうですね…いまは60点くらいでしょうか。

-40点分は、先ほどの画面の使い勝手あたりでしょうか。

大西さん:ええ。全体の流れをまだ理解できていなくて、マニュアルを見ながらの作業という部分もあるんですけどね。(階上の)学芸室で入力して「来館者用端末に反映されたかな」と降りてきて確認したり、まだ使いこなせていませんので。

林さん:引越ししてやっと1年が経ったところですから、当館のデータベースはまだまだこれからです。まだまだ日常業務に追われている毎日ですので、来年度中には本当の意味でのスタートを切りたいですね。

大西さん:開館時に入力したデータの見直しや、寄贈などで増えた分の入力など、これからの部分が多いですからね。

林さん:そうそう。学芸以外の職員も含めて、みんなが使いこなせる状態を、一日も早く実現したいと思っています。当初にイメージしていた通りにね。

-それはぜひ、私たちにも応援させてください。早く慣れていただけるよう、精いっぱい努力をさせていただきます。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

<取材年月:2007年10月>

Museum Profile
台東区立一葉記念館 5千円札でおなじみの樋口一葉が居をかまえ、代表作「たけくらべ」の舞台となった龍泉寺町。地元の人々の「一葉の素晴らしい文学業績を、永く後世に遺していきたい」という熱意が実って昭和36年に開館した、我が国初となる女流文学者の単独文学館です。平成18年11月にリニューアルしましたが、地域住民の思いから生まれた館らしく、今回建てられた新館もあくまで静かなたたずまい。全国から訪れるファンと、隣接する一葉記念公園で犬を散歩させる地元の人々の交流も微笑ましい、末長く見守っていきたい文学館です。

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