ミュージアムインタビュー

vol.88取材年月:2013年5月かごしま近代文学館 かごしまメルヘン館

現在の作業で手いっぱいの状態でも、
気持ちは未来を向いてデータづくりを進めたいです。
学芸員 吉村 弥依子 さん

-今日は子どもたちでいっぱいですね。入り口に書かれている学校名が7つもありました。

吉村さん:今は遠足のシーズンですから。今日は特に多いみたいですね。

-お疲れさまです。さて、文学館とメルヘン館がありますが、それぞれ異なる性質の資料を扱っておられるんですよね?

吉村さん:ええ。文学館は向田邦子をはじめとする地元文学者の図書や資料を扱っていて、メルヘン館は観賞用の人形が中心ですね。

-メルヘン館の方は、子どもたちが遊べる施設という役割もあるようですね。

吉村さん:そうなんです。最近、リニューアルを行って対象年齢をぐっと下げたんですが、地元の親子連れの遊び場になっています。天候に関係なく遊べますから、リピーターも多いですよ。

-文学館と人形博物館と子育て支援施設、ということですね。皆さんの役割分担とか、仕事の流れとか、確立できるまでは大変だったのでは?

吉村さん:職員数が少ないですからね。みんな役割を持ちつつ、掛け持ちもするという感じでしょうか。私は開館の3ヶ月後、平成10年4月に着任したのですが、関東の文学館や「人形の家」を見学で回りながら、資料の分類方法なども参考にさせてもらったんです。

-昨年、I.B.MUSEUMをご導入いただきましたが、その直前まで開館当時からのシステムをお使いだったとお聞きしました。

吉村さん:そうなんです。Windows 2000で動いていたんですよ(笑)。システム自体は問題なかったのですが、保守をお願いしている会社さんが「さすがに続けるのは厳しいですよ」と。

-そうでしょうねえ(笑)。よく頑張ってこられましたね、皆さん。

吉村さん:ええ、今でも感謝しています。

-さて、そんな中でI.B.MUSEUMをご覧になって、どんな印象をお持ちですか?

吉村さん:早稲田さんにとってはきっと何でもないことが、私たちにはすごいことに感じるんだろうなあ、と。

-ほうほう? たとえば?

吉村さん:データを検索したら、その結果がサムネイル画像で出てきますよね?

-出ますね。

吉村さん:それだけでも「わあ〜、凄いな〜」と(笑)。

-なるほど(笑)。ご苦労が偲ばれます。

-今回、I.B.MUSEUMをご導入いただいたことで、業務システムが「かごしまデジタルミュージアム」と直結しました。日ごろ仕事でお使いのシステムからデジタルミュージアムにデータをダイレクトに公開できるようになったのですが、いかがですか?

吉村さん:はい、システムとしては公開しやすくなったと思います。でも、実は公開点数は増えていないんです。別の事情がありまして。

-え? つ、使いにくかった、とか?

吉村さん:いえいえ。ここ2~3年で資料が膨大に増えてしまって、整理や登録の作業を優先することになったんです。

-どれくらい増えたのですか?

吉村さん:それが、「増えた点数を把握できないくらい」なんですよ。

-そんなに…。

吉村さん:たとえば、島尾敏雄関連資料だけでも、1,300式ほど増えました。

-1,300式?「一式が1,300セット」という意味ですか?

吉村さん:そうなんです。嬉しいことなんですけどね。

-中身を確認しながら整理と台帳づくりを進めるとなると、時間がかかりそうですね…。

吉村さん:でも1~2年あれば終わると思いますが、実はもうひとつあるんです。

-まだあるんですか!

吉村さん:昨年、世田谷の「海音寺潮五郎記念館」さんが閉鎖されましたが、資料を当館でお預かりすることになったんです。

-それがどれくらい…?

吉村さん:それが、完全に把握できないくらいの量です。整理と台帳作りに5~6年はかかると思います。

-まあ、「1館分」が丸ごと増えたということですもんね…。でも、ご遺族は目録づくりを重視されますよね?

吉村さん:ええ。だからこそ、このタイミングで新しいシステムになって良かったな、と。

-業者側が意気込んでも、館側のご事情が大きくズレることがあるんですね…勉強になります。それで、整理の状況はいかがですか?

吉村さん:まず、収蔵庫で実物にあたりながらカードを作成しています。調べたり確認したりしながらですから、かなり時間がかかります。

-でしょうね…。

吉村さん:ある原稿に対して、最初の掲載雑誌がこれ、次に出たのはあれ…というところまで調べますので。

-そのカードの作成段階でシステムがお役に立たねばなりませんね。収蔵庫にネット環境を整備できれば、タブレットPCを持ち込んで直接登録できるのですが。

吉村さん:え、そうなんですか。まだ慣れていませんから、何をどうすれば使いやすくなるのか、よく分からなくて。

-疑問などが出たら、ぜひお気軽にお問い合わせくださいね。

吉村さん:保守の会社さんは月1回くらいは顔を出してくださいますし、早稲田さんにも丁寧に説明してもらっていますから、特に困るようなことはないんですけどね。

-そのシステムで、何か気になることはありますか?

吉村さん:特にないですね。どうしてもブラウザの戻るボタンを押してしまうことくらいかな?

-それ、よくご指摘を受けるのですが、技術的なハードルがあるようでして。検討しますね。ほかには?

吉村さん:そうそう、ひとつありました。当館には「数量」という項目がありますが、今は8ケタまでしか登録できないですよね。でも実際には、「原稿用紙何枚、冒頭部分のみ」といった具合に、自由に文字入力したいんです。

-なるほど。もともと文字数制限を取り払ったシステムですから、可能だと思います。SEに相談しますので、ほかにも何かあればご連絡くださいね。

-向田邦子の資料は、きっと人気があるのでしょうね。私自身も、彼女のテレビドラマで育った世代ですし。

吉村さん:ええ、今回のリニューアルでもスペースを広げたんですよ。今は林芙美子生誕110年ということで、各地の館と共同企画展を行っています。

-それはいい企画ですね。館同士でデータが共有できるようになれば、研究や企画が今以上に進んだり、一般公開用のデータベースも作れると思いますよ。

吉村さん:それはいいですね。でも、公開はちょっと大変かな? データのチェックに5~6年は必要かもしれませんし。

-できたところから少しずつで大丈夫だと思いますよ。気分的にもその方が楽でしょうし。

吉村さん:なるほど。将来的な発展のためにも、まずシステムをしっかり使いこなして、データづくりを進めたいですね。

-新収蔵資料の整理とカードづくりも大変でしょうから、そちらもうまい進め方を弊社でも考えてみますね。

吉村さん:ええ。ぜひお願いします。

-子どもたちの声、元気に聞こえてますね。本日はたくさんの来館者でお忙しい中、ありがとうございました。

<取材年月:2013年5月>
Museum Profile
かごしま近代文学館 かごしまメルヘン館 鹿児島ゆかりの作家を中心とした文学館。向田邦子、海音寺潮五郎、椋鳩十、林芙美子、島尾敏雄、梅崎春生らの直筆の原稿や愛用品の展示も行っています。もう一つの顔であるメルヘン館は、童話の主人公たちや世界各地の人形などを展示。絵本のお城、おはなしのまちといった、子どもが夢を膨らませることができる空間が多く、地元の子どもたちの遊び場としても定着。いつも笑顔があふれる、文学とメルヘンのテーマパークのような施設です。
ホームページ : http://www.k-kb.or.jp/kinmeru/
〒892-0853 鹿児島市城山町5-1
TEL:099-226-7771