ミュージアムインタビュー

vol.114取材年月:2016年1月パナソニック 汐留ミュージアム

システムをさらに活用できるように
履歴の詳細までデータ化していきたいと思っています。
学芸員 宮内 真理子 さん

-I.B.MUSEUM SaaSのご導入は2年前ですね。きっかけを教えてください。

宮内さん:全国博物館大会で、当館の事務長が御社のプレゼンを拝見したのがきっかけです。お話を聞いて、御社で開発されたシステムの導入を当館スタッフみんなで検討する機会を持ちたいと感じて、スタッフミーティングにお招きしたことが始まりだったと思います。

-プレゼンした甲斐がありました。その後、館内での再プレゼンのお声掛けをいただきましたよね。その節はありがとうございました。

宮内さん:こちらこそありがとうございました。当館の所蔵作品は250点ほどですが、「このシステムがあれば、きっと仕事の環境を改善できる」と確信できました。コストも月々3万円ということで、比較的すんなりクリアできました。

-ご導入前のデータの状況は?

宮内さん:当館の作品データの元になっているのは、開館記念展の出品作品リストでした。そこから所蔵作品でないものを外して、開館後に収蔵された作品を追加していました。

-Excelのデータをお持ちでしたよね。元になっているのは、あのデータですか?

宮内さん:そうです。データの体裁をどう整えるか試行錯誤中のもので、荒削りな状態だったのですけどね(笑)。

-館内用のデータですから。当然のことです。

宮内さん:それに加えて、作品の事情もありまして。

-ほう? たとえば?

宮内さん:まずは、作品タイトルですね。当館の収蔵作家であるルオーの作品は、「花」など一文字のタイトルもあれば、フランス語の詩がそのまま作品タイトルになっているような長いものもあるんです。

-なるほど、それはExcelで管理するのは厳しそうですね…。

宮内さん:そうなんです。長いタイトルの作品は、シート上の別のセルに分割して登録していましたから。システムの導入後は、検索も管理も簡単にできるようになりました。

-データの移行はスムーズに行きましたか?

宮内さん:御社のご担当の方が助けてくださいました。Excel上でデータを整理、整備する段階からサポートしてくださったので、助かりましたよ。

-それは何よりでした。

宮内さん:システムの導入が、そのままデータの中身を見直すきっかけにもなったので、よい経験だったと思います。

-お役に立てたようであれば嬉しいです。

-さて、システムを導入して、現場ではどんな使い方をされていますか?

宮内さん:たとえば、作品を他館に貸し出す時なんかに。検索して、チェックを付けて、Excelに出力したものをお渡ししたり。そんな時は、「データベースって便利だなあ」と(笑)。

-実感が篭っていますね(笑)。作品貸出の機会は多いのですか?

宮内さん:割と多い方だと思いますよ。一昨年、昨年と、当館の収蔵作品による「ルオー展」として、北海道から九州まで全国7館の巡回展を行いましたし。

-おお〜、それは素晴らしいですね。

宮内さん:1953年に東京国立博物館で「ルオー展」が開催されたんですが、その展示が、まだ戦争の傷が癒えていない多くの日本人を元気づけたと言われているんです。根強いファンが多い作家ですね。

-作品が人々を癒した…いい話ですねえ(しみじみ)。

宮内さん:全国の方々にルオーの作品を知っていただく機会が提供できるのは、本当に嬉しいです。ルオーやルオー作品のファンを増やすことが当館の役割のひとつとも言えますし、収蔵作品を皆様にご覧いただくということも企業としての社会貢献活動のひとつでもありますから、これからも積極的に取り組んでいきたいと思っています。

-ぜひ頑張ってください。ところで、作品の貸出の際に役立ちそうな機能として、画像データの一括ダウンロードができるようになったのですが…ご存知ですか?

宮内さん:いえ? 何か便利な機能なんですか?

-検索結果の一覧で画像が必要な作品にチェックを入れて、画像出力ボタンをクリックすると、ZIPファイルにまとまって画像がダウンロードされるんです。

宮内さん:へえ〜! 便利そうですね!

-ファイル名に、作品名を付けることもできるんですよ。相手方に画像をお貸しする時に便利なんじゃかな、と…。

宮内さん:それ、いいですね! 次回はぜひ使ってみたいと思います。

-(ホッ)ぜひどうぞ。

宮内さん:貸出と言えば、巡回展の出張先で収蔵作品のデータにスマートフォンを使ってアクセスできるのはすごく助かりました。当館は会社の方針で、仕事のデータを私用電子機器に接続させることはできないんですが、I.B.MUSEUM SaaS は私共の本社のセキュリティチェックをパスしていますから、安心してアクセスできます。

-(胸を張って)クラウドならではのメリットです。

宮内さん:あとは、ルオーギャラリーの展示替えなどでのリスト作成にも使っています。おかげさまで、順調だと思いますよ。

-それをお聞きして安心いたしました。

-では、今後の課題は?

宮内さん:そうですね、職員全員で使いこなせるようになることでしょうか?

-それは、ほかの館でもお聞きします。

宮内さん:やはりそうなのですか。 担当者が変わっても大丈夫なようにデータを整備しているのですが、全員で使えるようになるのはもう少し先かなあ、と。

-作品数が多くない館では、皆さんの記憶で業務を進めるケースも多いですよ。

宮内さん:その他には、データ項目について悩むこともあります。

-たとえばどんなことでしょう?

宮内さん:当館が他館から作品をお借りすることも多いのですが、借用作品は所蔵作品のようにジャンルが定まっているわけではなくて。

-なるほど、管理の範疇外ということですね?

宮内さん:ええ。建築資料や工芸など、データ項目が違うものも少なくないんです。借用作品による展覧会は、展覧会事務局がExcelの作品リストを提供してくださる場合もあるんですけどね。

-そのシートを加工するのは、結構なご負担になりそうですね。

宮内さん:でも、すべて登録しないと、展覧会のデータになりませんから。

-そのあたりは、弊社でも検討してみますね(メモ)。ところで、現在のデータの登録状況はいかがでしょうか。

宮内さん:基礎情報や作品解説は、ひと通り入っています。

-それは素晴らしい! 大変だったでしょう?

宮内さん:ええ、でも数がそれほど多くないですからね。これからは、出品歴や修復歴などの情報も充実させたいと思っています。

-作品のカルテづくりですね。

宮内さん:そうですね。どの工房にどんな修復を依頼したかとか、修復前後の状態を撮った写真とか。細かい部分まで記録できると活用範囲も広がると思います。

-まもなく展示ガイドアプリが搭載されますので、そちらもご利用になってくださいね。

宮内さん:それも便利そうですね。当館でも音声ガイドは検討したことがあるのですが、スペースの問題もあって、機器の貸出場所などを確保するのは難しくて。

-来館者ご本人のスマートフォンを使うスタイルだと、そういう心配がないですから。

宮内さん:それは、利用を検討したいです。

-ぜひぜひ。データづくりのところと併せて、サポートさせていただきます。本日はご多忙な中、本当にありがとうございました。

 

<取材年月:2016年1月>
Museum Profile
パナソニック 汐留ミュージアム 汐留という新しいビジネス街に立地する都市型美術館。20世紀フランスを代表する画家ジョルジュ・ルオーの作品を約250点所蔵。その中から順次常設展示するほか、国内外からの出品を含むルオーに関連した企画展を開催。「建築・住まい」「工芸・デザイン」をテーマとする企画展や各種イベントも実施。パナソニックの社会貢献活動の一環として作られた美術館ですが、その目的通り、忙しいビジネスパーソンにとってはオアシスのような存在となっている様子。いつも多くの人で賑わっている人気のミュージアムです。
ホームページ : http://panasonic.co.jp/es/museum/
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