ミュージアムインタビュー

vol.8取材年月:2006年1月千葉市美術館

「見本がなかった時代」に立ち上げたシステム。
でも、12年経った今も、I.B.MUSEUMは業務の根幹です。
学芸員 水沼 啓和さん

-千葉市美術館さんには、ずいぶん長くお付き合いいただいていますよね。

水沼さん:そうですねえ。平成5年ごろ、開館前の準備室時代にI.B.MUSEUMを導入していますから、足かけ12年くらいですか・・・長いですね(笑)。

-弊社の設立が平成4年ですから、会社が出来た直後なんですよね。改めまして、いつもありがとうございます。まずは当時の様子をお聞かせください。導入に当たって、どんなデータベースを作ろうをお考えでしたか?

水沼さん:考えるも何も、当時は早稲田さんしかなかったんですよ(笑)。国立クラスの大きな施設では、大手システム会社さんがその館専用に開発していましたし。

-ああ、選択肢が少ない時代ですしねえ・・・(ちょっとガッカリ)。

水沼さん:それ以外は、市販のデータベースソフトで作るしかなくてね。文化施設用のソフトといえば、早稲田さんが寡占状態だったんじゃないかな?

-「古きよき時代」があったとは聞いています(苦笑)。では、開館準備の多忙な時期、I.B.MUSEUMはお役に立ちましたか?

水沼さん:もちろんです。開館直前は「作品を収集してはデータを入力」の繰り返しでしたからね。ただし、職員みんなにとって本当に役立つようになったのは、少し時間が経ってからでしたね。

-・・・・・・導入時に、何かミスでも?(汗)

水沼さん:システム以前に、収蔵品データそのものが未完成だったんです。当時はデータベースのお手本もない時代でしたから、データ整備が本当に大変だったんですよ。

-(ホッ)そうですよね。開館前だから、ホントに何もない状態でしょうからね。

-その大変な時期を乗り越えられて、職員の皆様に使っていただけるようになったのは、いつごろでしょうか?

水沼さん:1回目のシステムリニューアル前後・・・導入後4〜5年を経過したころかなあ。

-・・・ちょっと時間がかかってませんか?(汗)

水沼さん:そうですねえ。みんなが情報システムの「ありがたみ」を理解して、本当に納得して使い始めるまでには、けっこうかかりましたね。個人個人で方法論がありますから。

-ああ、なるほど。当時はデータベースも現在ほどメジャーじゃなかったですしね。

水沼さん:ええ。みんな自分の分野はものすごく詳しいので、自分の知識やパソコンに蓄積した情報だけでも、仕事は進みますからね。

-データベースシステムの不可欠になったきっかけは?

水沼さん:コレクションの数が増えてきて個人レベルで管理できる量を超えたり、新しい職員が入ってきたりしたときかな。いまでは不可欠と言うより、もはや必需品ですよ

-そのお言葉、弊社の担当SEも喜びます。なにせ、12年間代わらずにずっと担当させていただいていますからね。

水沼さん:宜しくお伝えください(笑)。

-では、弊社およびI.B.MUSEUMについて、100点満点だと何点くらいでしょう?

水沼さん:導入当時の御社の対応は90点、I.B.MUSEUMは60点という感じかな?

-(!!)・・・・・・I.B.MUSEUMの減点が・・・大きいですね・・・・・・。

水沼さん:安心してください、早稲田さんのせいじゃないですよ(笑)。当時は、パソコンそのものの性能がまだまだだったでしょ?

-ああ、なるほど・・・(回復中)。

水沼さん:当時のパソコンはすぐフリーズするし、ハードディスクはすぐ容量がいっぱいになるし。最初はトラブルばかりでした。あの頃、とにかくよく来てくださったでしょう? だから会社の点数が高いんですよ(笑)。

-(当時はお客さまの数が少なかっただけだったりして・・・)なるほど、そうですよね! では、気を取り直して。最近はいかがでしょうか。

水沼さん:ご安心ください。両方とも90点以上! 順調そのものですよ。今はソフト、ハードとも安定しているので、SEさんに来ていただくこともめっきり減りましたし。

-正直、SEたちは全国を飛び回っていますので、緊急時以外はなかなかお邪魔できないんですよね。でも、ご遠慮なくご連絡くださいね。

-では、千葉市美術館さんの今後について教えてください。いまお考えの新しい動きはおありですか?

水沼さん:画像データの拡充とインターネット公開を考えています。市立の美術館ですから、館内の作品は市民の財産です。従って、情報はきちんと市民に公開されていなければなりませんからね。

-なるほど。でも、予算とか・・・大変じゃないですか?

水沼さん:そうなんですよ。市の側でも方針は理解してくれているのですが、なかなか捻出が難しいらしくて。私としては、粘り強く訴えていくのみです。

-複数の館で一緒に公開されたら、予算もつきやすいのでは? 弊社のホームページでも紹介させていただいてますが、高松市さんはそうされていますよ。

水沼さん:あれ、拝見しましたよ! 実は私も、そういう方向で案を出しているんです。その案で検討は進んでいくと思います。

-早く実現するといいですね。では、これから収蔵品管理システムの導入をお考えの館の方へ、アドバイスをお願いします。

水沼さん:そうですねえ。実際に実務を始めると分かるんですが、システム構築やデータ入力の作業そのものは、確かに大変ではありますが、何とかなるものなんですよね。肝心なのは、そのシステムで管理する情報をどう整えるかだと思います。

-導入や入力の実作業は、弊社のような外部の業者がいますしね。

水沼さん:そうなんですよ。「充実した情報を公開する」から価値があるわけで、公開する情報がなければ意味がないですから。データをどう作るかに力を入れられたほうがいいと思いますよ。要は「中身」だということですね。

-10年以上の運用実績がおありの館だけに、重みがありますね。本日はありがとうございました。

<取材年月:2006年1月>

Museum Profile
千葉市美術館 千葉市内の好立地にモダンな建物が目を引く、都会的な美術館です。中央区役所と併設で1階ロビーはいつもにぎやか。訪れた日に学校関係の行事があったようで、子供の作品をもってエレベータを行き来するお母さんの姿が見かけられました。そんな、市民に親しまれる側面の一方、同じ日に催されていた企画展は、スイスの現代アーティストの作品を集めた、おしゃれなモダンアートでした。多様な個性を持つ美術館は、昨年、開館10周年でさらにパワーアップ。発展する都市を知性で底支えする市民のオアシスとして要注目です。

ホームページ : http://www.ccma-net.jp/
〒260-8733 千葉県千葉市中央区中央3-10-8 
TEL:043-221-2311