ミュージアムインタビュー

vol.164取材年月:2020年9月くにたち郷土文化館

地域住民のくらしと想いを載せた郷土の資料たち。
ぜひ、もっと多くの方々にご覧いただける環境を。
主任学芸員  安斎 順子 さん

-昨年、従来型のI.B.MUSEUM からクラウドサービスへと移行されました。使い心地はいかがですか?

安斎さん:先日、ラベルの作成に挑戦してみたんです。画像を入れることができるのは、本当に便利ですね。ほら、こんな感じで…。

-おお〜、これはすごいですね! まだご導入いただいて間もないのに、帳票作成機能をここまでお使いとは。

安斎さん:最初は分野共通の設定で作ろうとしたのですが、民俗資料固有の項目が出なかったので、試行錯誤しながら。

-パウチされて穴もあいていますね。

安斎さん:民具に綴り紐で付けたり、箱に貼ったりして使うんですよ。以前は手書きでしたが、画像付きならひと目で中身がわかるので便利です。

-クラウドには移行されたばかりとは言え、I.B.MUSEUM シリーズはかなり長くお使いいただいていますからね。さすがの応用力です。

安斎さん:私はここで11年目になりますが、着任時にはすでに導入されていたと思います。当時は紙のカードのみでI.B.MUSEUMに登録していないものが多くありましたから、システムへの登録を定期的に御社にお願いしていたんですよ。

-なるほど。それが現在のデータの礎になっているのですね。紙のカードはどれくらいあったのですか?

安斎さん:民具だけで5,000枚くらいあったと思います。でも、いまも入力されていないもの、写真がないものもあるので、まずは整備を進めることが直近の課題ですね。それから、古い時代に作ったデータは画像が小さいので、これも差し替えたいですし。

-いまのようにスマホで気軽に撮影できたわけではありませんので、システム側も高精細な画像への対応準備が整っていなかった時代ですね。最近まで従来型のシステムで更改されていたのも、このあたりが理由ですか?

安斎さん:時代の流れだと思います。近隣の博物館が皆さん移行されていますし、『ポケット学芸員』のように完全に連携してくれるサービスもできましたし。それでは当館もクラウドに…と、ごく自然にスイッチできました。

-小さな画像は、長期のご利用の証でもありますね。ご愛顧くださり、本当にありがとうございます。

 


-弊社の歴代のシステムをご存じなわけですが、クラウドへのご感想は?

安斎さん:なんだか「ずいぶん便利になったなあ」と(笑)。

-弊社システムに限らず、最近のITやIoTにはビックリしますよね(笑)。たとえばどんな部分が便利とお感じですか?

安斎さん:たとえば、番号の桁数制限とか。以前は入らなくなると冒頭の文字を削除して新しい番号にするなどの工夫をしていたのですが、必要なくなりましたから。いまは必要に応じてアルファベットを先頭に入れたりしていますよ。

-へえ〜、これまた渋いところを使い込んでいただいていますね!

安斎さん:先ほどの画像まわりもすごいですよね。拡大表示だけでなく、回転できるのもありがたいです。欲を言えば、回転したまま上書き保存できると助かります。たくさんの画像が登録されていると、時々、倒れた状態で保存されていることもありますので。

-実は、他の館からもリクエストがありました。開発チームで検討中ですので、しばらくお時間をください。

安斎さん:そうそう、一括登録にも挑戦してみましたが、これも分かりやすくなりましたよね。最初は登録を失敗して困っていたのですが、何度かやり直すうちに数値と文字列を間違っていたことに気づきました。

-そのあたり、少し分かりにくくて申し訳ございません。弊社のスタッフもサポートできますので、お困りの時はぜひお気軽にご相談くださいね。

安斎さん:相談と言えば、次は画像の一括登録にチャレンジしたいのですが、マニュアルなどはありますか?

-もうそんなレベルにまで達しているのですか…(汗)。何とも申し訳ない限りなのですが、画像の一括アップロードは操作が非常に複雑で、ユーザ様向けの配布資料には落とし込めていないんです。説明用の手順書を使って直接ご説明させていただく方法でもよろしいですか?

安斎さん:問題ありませんので、ぜひお願いします。それから、ポケット学芸員についての質問を他の職員から預かっているのですが、いまお話ししても大丈夫ですか?

-はい、ぜひお聞かせください。

安斎さん:「VRやARなど最近の技術は採用する予定はありますか?」とのことです。来館者が近づいたらスマートフォンにコンテンツが表示されるとか…ですかね?

-先端技術にはぜひ対応したいのですが、「それぞれに環境が異なる導入館のすべてが確実に利用できること」「追加コストのご負担をかけないこと」という2つの課題がありまして。でも、研究には積極的に取り組んでいますので、いつか実現したいですね。

安斎さん:なるほど。では、楽しみにしていますね。

-それにしても、クラウドをお使いになり始めたのは昨年なのに、猛スピードで進化しておられますね。これは弊社ももっと頑張らないと…。

 


-ここまでご利用の幅が広がってくると、あとはデータベースの公開という話になりますね。 特に、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大の中では、非来館型サービスが注目を集めていますし。

安斎さん:そうなんです。毎年開催している『むかしのくらし展』での展示資料などは、ぜひ公開したいと思っています。ほかにも、遺跡の三次元データとか、わら細工教室の動画とか…。配信したいものはたくさんあるんですよ。

-さすがミュージアム、コンテンツづくりに困らなさそうですね。システムは三次元データの登録・公開にも対応していますし、動画はYouTubeをはめ込む形なら対応できます。わら細工教室のアーカイブを作るイメージで…なんて、どうでしょう?

安斎さん:それはいいかも! わら細工教室は先生がご高齢なので、感染対策を考えるといつも通りの開催が難しいものですから。

-むかしのくらし展は、知識と技術の継承だけでなく、お年寄りの回想法にも活用できそうですね。いつ頃の資料が多いんですか?

安斎さん:明治時代から昭和40年代くらいまでですね。昭和40年代後半に、PTAの方々が民具を収集してくださっていて、小学校の空き教室で展覧会を開催していたそうです。そこから『くにたちの暮らしを記録する会』ができて、いまは当館が開催する教室などにも関わってくださっているんですよ。

-素晴らしいですね。今日もはつらつとしたお年寄りをたくさん見かけました。地元の方々に距離が近いなら、なおさらデータ公開を頑張らなければなりませんね。ご自身が関わった民具をお孫さんと一緒にスマホで閲覧できれば、きっとお喜びになるのでは。

安斎さん:仰る通りです。地域の皆さんの想いを載せた資料ですから、登録点数も写真も増やして多くの人に見ていただけるように頑張りますよ。

-もちろん、弊社も精いっぱいお手伝いさせていただきます。本日はお忙しい中、元気が出るお話をたくさんお聞かせいただき、本当にありがとうございました。

Museum Profile
くにたち郷土文化館 多摩川が育んだハケ(段丘)の上、周辺には国立市古民や城山公園など散策スポットも多数。雑木林に映えるガラスを多用するデザインを採用しつつ主要施設を地下に配置したユニークな建物は、1994年の開館以降、「文教都市くにたち」のシンボルとして親しまれてきました。市域の通史を紹介する常設展、多様な切り口の企画展のほか、市内の各種団体との共催による展示イベントも活発に開催。市民との距離の近さがうかがえる人気館です。

ホームページ : https://kuzaidan.or.jp/province/
〒186-0011 国立市谷保6231番地
TEL:042-576-0211