ミュージアムインタビュー

vol.146取材年月:2019年5月ニュースパーク(日本新聞博物館)

システム上の登録情報の充実化を図るコツは
管理項目の設定法にあるのではないかと思います。
学芸員 工藤 路江 さん

-開館時から弊社システムをご利用いただいておりますが、2013年にクラウドに移行されましたね。

工藤さん:そうですね。私は2008年に着任しましたので、以前のシステムから利用させていただいています。

-長期間、ありがとうございます。どんな作業にお使いですか?

工藤さん:新聞本紙や号外など所蔵資料の情報を登録していきます。数として多い仕事では、新聞のマイクロフィルムが毎月100本ほど入ってきますので、その登録に使っています。

-毎月ですか! 100本!

工藤さん:ええ(笑)。

-大変な作業ですが、そのマイクロフィルムは全部でどれくらいあるのですか?

工藤さん:7万本くらいですかね。新聞各社が国立国会図書館と共同で行う新聞マイクロフィルムの製作事業は、昭和20年代から続いているんですよ。毎月届くのはこの事業の一環で、大切に保管しています。

-それは凄い。資料としてのニーズも高そうですね。

工藤さん:ええ、研究者や他館の学芸員も閲覧に来られます。

-データ管理だけでも大変そうですが、どんな流れで登録しておられるのですか?

工藤さん:マイクロフィルムは、受け入れ時にバーコードを貼ります。それを読み込んで番号を登録し、そこに詳しい情報を加えていくのが基本です。

 


-オーダーメイド型のシステムからクラウドに移行されたわけですが。

工藤さん:収蔵庫の中でも、持参した端末でどこからでもデータにアクセスできますから、クラウド型は便利です。

-便利な時代になりましたよねえ(しみじみ)。逆に、不便になった点は?

工藤さん:実は、ひとつだけ困ったことがあるんです。

-詳しくお聞かせください。

工藤さん:当館では、現在、登録番号を手入力しています。以前のシステムでは、この番号が重複していないかどうかをチェックできたのですが、この機能がなくなって。

-なるほど、別に番号の管理が必要になるかもしれませんね…(メモ)。

工藤さん:そうなんです。実際に登録後に重複に気づいて、作業をし直したことがあります。自力でチェックすればよいことなのですが、そこが少し不便かな。

-ご不便をおかけして申し訳ないです。この件は、以前、弊社の担当にも直接お伝えいただいていませんか?

工藤さん:はい、確かにお伝えしました。

-弊社の社内では開発課題に上がっていたはずですので、確認しますね。

工藤さん:よろしくお願いします。

-ほかにはいかがでしょう。ご不満な点は?

工藤さん:あ、そうそう。不満ではないのですが、旧字や新字、異体字の検索などは可能なのでしょうか?

-最近、その用途に対応する機能を追加しましたので、可能です。あらかじめ文字を辞書登録しておけば検索対象になりますよ。類義語も同じ流れで、ほら、こうして…(実際に操作)。

工藤さん:…なるほど、これは便利ですね。

-お仕事の内容からすると、かなりお役に立つ機能だと思います。弊社のサポート担当に詳しくご説明する機会を設けるよう伝えますので、ぜひご活用ください。

工藤さん:ぜひお願いします。

-ところで、資料情報の管理のほかには、どんなシーンでご利用いただいていますか?

工藤さん:企画展の準備や問い合わせ対応などでは検索機能をよく使いますね。

-なるほど。問い合わせ、多そうですね…。

工藤さん:ちょっと変わったところでは、映像作品の制作現場から連絡が来ることもあります。ドラマに使いたいので、昔の新聞のサイズが知りたい…とか。

-えっ? 新聞のサイズって変わったんですか?

工藤さん:時代によって少しずつ違うようでして。データベース化されていますので、それを見ながらタテヨコの数値をお知らせしています。

-でも、それだけ細かい情報が登録されているということですよね。個別登録と一括登録の使い分けが重要になりそうです。

工藤さん:号外資料をデータベースに登録するときに、一括登録をよく使いますね。旧システムの当時は担当者が操作に苦労したようですが、新システムで使いやすくなったと聞いています。

-なるほど。

工藤さん:個人的には、資料の特性に合わせた項目を用意できていれば、データの充実は図りやすいと思います。新聞やモノ資料のほかに図書、雑誌、マイクロフィルムがありますが、それぞれ必要となる項目がまったく異なりますから。

-業務フローを確立しておられることがよく分かります。バーコードの活用法のお話もそうですが、とても勉強になります。

 


-先ほども小学生の団体を見かけましたが、子どもの姿が目立ちますね。そう言えば、入口のキャラクターも人気が出そうな雰囲気です。

工藤さん:ありがとうございます。キャラクターは「ブンぱくん」という名前なんですよ。

-学校教育との連携を重視しているのですか?

工藤さん:はい、力を入れています。それで言えば、先生方からの問い合わせの際は、教育担当者がシステムを駆使しています。こちらから画像などの資料を提供することもありました。

-そういう場面では、画像の一括ダウンロード機能が便利ですよ。

工藤さん:画像が一括でダウンロードできるんですか?

-ええ。一覧上でダウンロードしたいデータにチェックを入れて、このボタンをクリックすれば…(実際に操作)。

工藤さん:え〜! これ、便利ですね!(笑)

-ありがとうございます(笑)。実はこれも後から追加した機能ですので、別にご説明の機会を設けますね。

工藤さん:ぜひ。

-画像と言えば、近く、システムに画像を登録する際のリサイズ画像をもっと大きくしようかと考えておりまして。これについてご意見をいただけるとありがたいのですが。

工藤さん:そうですね、新聞の文字がしっかり読めるサイズがよろしいのでは。

-なるほど、端的です(メモ)。

工藤さん:あと、当館では明治・大正期に新聞社が発行した地図もたくさん所蔵しているんです。たとえば日清・日露戦争の戦局地図などがあるのですが、書かれている地名が読み取れると助かるかも。

-それは分かりやすいですね。参考になります(メモ)。

工藤さん:当館のように収蔵庫が離れていると、システムで高解像度の画像を気軽に扱える環境はとてもありがたいです。調査の効率化だけでなく、現物を広げる回数を抑えれば資料の保護にも役立ちますので、ぜひお願いしたいです。

-まさに紙モノを扱っておられますので、言葉の重みが違いますね。もっとお役に立つシステムになるよう、今後も改善を重ねます。本日は貴重なお話をありがとうございました。

Museum Profile
ニュースパーク(日本新聞博物館) 日本新聞協会が日刊新聞発祥の地・横浜で運営する、情報と新聞の博物館。ジャーナリズムの役割から情報社会の仕組みまで、幅広く学ぶことができます。新聞記者の素顔を紹介するタッチパネル展示や、横浜の街並みを再現したジオラマとタブレット端末を使った取材体験ゲーム、マイ新聞づくりなど、楽しい博物館体験を満載。2016年にリニューアル、2019年4月には歴史展示ゾーンをさらに拡充するなど、いまも進化を続ける人気館です。

ホームページ : https://newspark.jp/
〒231-8311 神奈川県横浜市中区日本大通11 横浜情報文化センター
電話:045-661-2040