ミュージアムインタビュー

vol.153取材年月:2019年10月ときわミュージアム(緑と花と彫刻の博物館)

情報量を増やし、検索しやすさをもっと高めて
データベースを街のPRに活かしていきたいです。
学芸員 三浦 梨絵 さん

-少し早めに到着したので、彫刻の写真を撮り始めたのですが、もう100枚を超えてしまいましたよ! いや〜、絵になるところですね!

三浦さん:ありがとうございます。満喫していただいているようで、嬉しいです(笑)。ご覧になった「UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)」は野外彫刻の公募展で、1961年から隔年で開催しているんですよ。

-すごいですね。もう50年以上も続いているわけですよね。そんな歴史のある芸術祭、ほかにないのでは?

三浦さん:彫刻を扱う芸術祭としては世界最古かもしれませんね。

-よほど地域の人たちに浸透しないと続かないですよね。作品のクオリティも凄いですし、市民の方々も誇らしく思っておられるでしょうねえ。

三浦さん:もとは戦後復興に伴って表面化した公害問題を解決しようと、産官学民が一体となって始めた緑化運動がきっかけなんです。それが「花いっぱい運動」になり、さらに街中に彫刻を置こうという運動へと発展していきました。

-街を愛する気持ちが伝わってきます。それにしても、多くの自治体では首長が交代すると政策も変更になることも多い中で、変わらず続けてこられたというのは、本当にすごいことです。

三浦さん:UBEビエンナーレの展示が終わると、作品のうち何点かが街頭に設置されるので、今では市内の野外彫刻は200点ほどになります。作家に対して作品を発表する場を提供し、それがそのまま街づくりになるという流れは、今は市民の皆様の中にも根付いていると思います。

-芸術祭の理想的な姿ですね。I.B.MUSEUM SaaSを導入されたのは、彫刻作品の情報発信が目的だったのでしょうか。

三浦さん:はい。従来もホームページ上で作品情報を公開していましたが、あくまでも市役所のホームページの一部だったので、「すべての作品を紹介するデータベースを公開しましょう」とずっと訴えていたんです。

-これだけの作品とイベントですからね。詳しく紹介しないともったいないです。

三浦さん:私たちは、それとは別に記録写真のデータベース化を進めていました。約2万点の写真に関する情報をExcelで整理できたので、公開するツールを探していたんです。そこにたまたま御社の担当の方が立ち寄ってくださって…。

-最高のタイミングだったわけですね。

 


-これだけの歴史のある芸術祭なら、作品点数の累計も相当な数になりますよね。付随する資料も含めれば、データベース化は必須だと思います。

三浦さん:私もそう思います。着任当時はシンプルなExcelリストしかなかったので、少し困る場面もあって。

-具体的には?

三浦さん:その作品の背景など詳細が分からない状態だったんです。台帳として管理するための情報はきちんと記載されていたので、主旨が違う話なんですけどね。

-付随情報はPRの材料になりますからね。

三浦さん:私自身、以前の勤務先で経験した写真資料の整理などを通して、一次資料の重要性やデータベースの効果は実感していたんです。作品を見て「これは詳細情報を一般公開する価値は十分にある」と確信したので、トライしてみようと。

-導入から公開まではずいぶん早かったですよね。画像もたくさん公開されていますし。

三浦さん:情報量としては、まだまだこれからですけどね。取得時の情報はあっても、そこに至る経緯については当時の新聞などで調べたりしなければならないので、データベースとしての充実にはまだ時間がかかりそうです。

-お仕事の合間というより、まとまった時間を取って取り組みたい作業ですよね。

三浦さん:そうなんですよね。もっと感覚的に検索できるようタグを増やしたりもしたいので。

-現時点でも設置エリアや年代、出展別にワンクリックで検索できますよね。すでになかなかの完成度とお見受けしますが。

三浦さん:ありがとうございます。でも、載せたい写真はまだたくさんありますし、拡充だけではなくてデータの抜けがないかなどの精査も必要ですし。

-写真と言うと、先ほどお話に出た記録写真とか?

三浦さん:ええ。特にシンボル的な作品には、それにまつわる記録写真がたくさんあるんです。ただ並べるだけでなく、関連性を持たせた見せ方も工夫したいので、まだまだです。

-その作品に関連する写真が次々と出てきたら、さらに興味が深まりそうです。これからが楽しみですね。

 


-さて、I.B.MUSEUM SaaSの使い勝手はいかがですか? ご不満な点とか。

三浦さん:不満と言うほどでもないのですが、いくつかあります。たとえば、当館のデータベースは日英で公開しているのですが、作家名が日英併記で表示されてしまうのは少し困りますね。

-その点については、実は、ほかのユーザ館からも同様のご要望をいただいておりまして。すでに開発現場で改善課題と認識しておりますので、少しお待ちください。申し訳ございません。

三浦さん:それから公開ページのバリエーションの件です。現在は2種類を使えますが、3つ目があるといいな…と。

-そちらもいくつかリクエストをいただいております。現在、日本語版と英語版の公開ページをお持ちですが、3つ目の用途は?

三浦さん:彫刻以外の文化財の情報も登録して公開したいのですが、彫刻とは別ページにしたいと思っていまして。

-なるほど。3つ目の公開ページの前に、Web APIの公開機能がこの年末に搭載される予定ですので、そちらをご利用いただくのもひとつの方法になるかもしれません。

三浦さん:違う仕組みなのですか?

-はい。現在は、弊社が用意する公開ページを使ってデータベースを公開していただいていますが、インターネット上の別の場所にプログラムを置くような形になります。自由度が高くなりますよ。

三浦さん:どんなことが可能になるのですか?

-3つ目、4つ目のページを、今までの形式に囚われずに作れます。たとえば、地元のホームページ業者さんなどがオリジナルのページを作ることもできるようになります。

三浦さん:それはよいですね。もともと、彫刻データベースの公開はもっと華々しいものにしたいなと思っていたんです。さまざまな表現ができるようになれば、目的であるPRの効果も高めていけそうですね。

-弊社としても積極的に活かしていただきたいので、API活用マニュアルなどもしっかり整備しますね。

三浦さん:楽しみにしています。今後もよろしくお願いします。

-こちらこそ、ご意見などはご忌憚なくおきかせくださいね。さて、せっかくですので、この後も市内の彫刻も見学させていただこうかな、と。

三浦さん:それでしたら、ぜひこちらの「彫刻ウォーキングマップ」をお持ちください。

-これは助かります。本日は心が弾むようなお話をたくさんお聞きできて、とても嬉しく思いました。お忙しいところ、本当にありがとうございました。では、行って参ります!

Museum Profile
ときわミュージアム(緑と花と彫刻の博物館) 緑と花と彫刻に彩られた宇部市民の憩いの場、ときわ公園にあるミュージアム。公園内には約90点の野外彫刻が常設展示されていて、UBEビエンナーレ彫刻の丘では2年に一度「UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)」が開催されています。また、ときわミュージアム世界を旅する植物館では、世界中の珍しい植物や花に出会うことができます。緑と花と彫刻をキーワードとした街づくりに成功した宇部のシンボルとも言える博物館です。

ホームページ : https://www.tokiwapark.jp/museum/
〒755-0001 山口県宇部市大字沖宇部254番地 UBEビエンナーレ推進課
TEL 0836-51-7282