- vol.234取材年月:2026年3月三菱一号館美術館
コンディションレポートや貸出履歴など関連情報の管理、
外国語による検索サービスにも挑戦していきたい。上席学芸員 野口 玲一 さん

-まずは、I.B.MUSEUM SaaSのご導入前の状況からお聞かせください。
野口さん:以前に在籍していた職員がファイルメーカーで作ってくれた目録データベースを使っていました。とてもよくできていて、館所蔵の作品も1000点前後ですので、特に困ることはなかったです。
-目録のシステムとしては問題なかったわけですね。では、なぜI.B.MUSEUM SaaSへの切り替えを?
野口さん:画像が保存されていたストレージを移した際に、ファイルへのリンクが切れてしまいまして。
-あ〜、データベースから呼び出せなくなったのですね。すべてのリンクを張り直すのは大変そうです…。
野口さん:ストレージ変更が今回だけならまだしも、今後もあるかもしれませんからね。そこで、リンクの張り直しは諦めて、別の管理方法を思案していたところ、御社のクラウドシステムに出会ったんです。リンク切れの心配がないだけでなく、情報公開も一気に進めることができますし。
-ありがとうございます。元のデータがしっかり作られていたご様子で移行もしやすかったのではと思いますが、何か問題は発生しませんでしたか?
野口さん:工程としてはスムーズに進んだと思います。強いて言えば、それぞれの作品に対して画像の公開・非公開を設定する作業は、少し手間がかかりましたね。
-たくさんの画像を登録されているのですね。
野口さん:作品そのものの画像というより、コンディションレポートですね。まだ紙のデータも残っているのですが、PDF化が済んでいるものは作品データベースに登録されていますので、非公開に設定する必要があったんです。
-なるほど。I.B.MUSEUM SaaSでも書式をデザインして出力できますが、実際のコンディション確認の場では、やはり紙に書き込むということでしょうか。
野口さん:現状ではそうですね。当館は海外の美術館と作品の貸し借りを行うことがあるのですが、あちらの学芸員はタブレットで直接書き込んでいますので、当館もこうしたスタイルを参考にしたいと考えています。
-画面に作品の画像が表示されて、そこに手書きするようなアプリでしょうか。
野口さん:そうです。作品のコンディション情報は時系列で蓄積して、過去に遡れる形でなければなりません。また、作品のチェックは展覧会ごとに違う人が担当しますので、その履歴も蓄積する必要があります。そうした履歴をレイヤーのように閲覧することができれば。「そんなアプリが欲しいね」と、よく他館の方とも話しているんですよ。
-I.B.MUSEUM SaaSのWeb API経由で作品情報を取得して、そこにコンディション情報を書き込むと、手書き文字がAIで清書されてレポートが作成できるとか…(メモ)。
野口さん:そうですね、そんな感じで。実現したら、多くの学芸員が喜ぶと思いますよ。
-各館共通の仕組みにできれば便利そうです。ちなみに、レポートはその都度新しいものを作成していますか? それとも、前回のレポートに最新情報を書き足して更新していくものでしょうか。
野口さん:当館の場合は、毎回新規に作成しますね。その分、PDFファイルがたくさん登録される形になるわけです。
-イメージがつかめてきましたので、具体化を目指してみたいと思います。とてもよいヒントをありがとうございます!

-さて、ほかの機能はいかがでしょうか。作品の展示や貸出の管理機能などはご利用ですか?
野口さん:館内の作品移動、所在管理などはファイルメーカーでデータ化していたのですが、システムの移行後は、まだそこまでは辿り着けていません。
-所在の情報を管理しておられたのであれば、「クリップリスト機能で対象の作品をリスト化し、まとめて出庫操作して、その履歴を蓄積する」といった具合に、便利にお使いいただけると思いますよ。導入時の操作説明は登録や検索が中心だったかと思いますので、よろしければ業務寄りの機能の説明会を開催させていただくこともできます。
野口さん:それは便利そうですね、ぜひ当館でも試してみたいです。操作説明については、学芸員の交代などもありますので、改めて機能を学べる場が作っていただけるとありがたいです。
-かしこまりました。では、別途ご案内しますね。
野口さん:よろしくお願いします。
-それにしても、公開設定機能はとても上手に使いこなしてくださっていますよね。コレクションのページにはテーマ別の検索結果にリンクするボタンが設置されていて、全体像から個々の作品情報を辿る動線がスムーズですし。
野口さん:ありがとうございます。導入のページをもっと作り込んでおられる美術館もありますので当館も凝ってみたかったのですが、まずはI.B.MUSEUM SaaSの機能でカバーできる範囲内で、違和感なくご覧いただけることを心がけました。
-とても現実的な選択で、現時点では大成功だと思います。作品解説などはこれから追加していくご予定ですか?
野口さん:はい、そうしたいですね。今はなかなか手が回らないのですが。
-以前の図録に掲載した原稿をI.B.MUSEUM SaaSに登録して、再利用するという方法もあります。
野口さん:確かにそれもひとつの方法ですが、図録の解説はその展覧会の文脈の中で作成されるものなので、恒久的な情報としてデータベースに登録すべき内容とはやや異なることがあるんです。コレクションのカタログにある解説なら転用できるかもしれないのですが。
-失礼しました。仰る通り、そのまま使うことはできないことが多そうです。とても勉強になります(メモ)。

-では、I.B.MUSEUM SaaSへのご要望などがあればお聞かせください。
野口さん:収蔵庫内でデータにアクセスすることがありますから、スマートフォンで使えるようになるとありがたいですね。
-タブレットよりも気軽に使える環境が欲しい、ということでしょうか。先ほどのコンディションレポートにもつながるお話ですし、弊社でも検討課題として認識してはおりますので、いましばらくお待ちいただければと思います(メモ)。
野口さん:それから、当館の収蔵品は近代ヨーロッパの作品が多いことから、外国語対応を急ぎたいと考えています。他館ではどうなさっているのでしょうか。
-I.B.MUSEUM SaaSでは、ひとつのデータベースから2種類の検索ページを作成できますので、片方を英文サイトとして公開されている館が増えています。もちろん、ひとつの検索ページに日英併記されている館もありますよ。
野口さん:日本語ページと英語ページを個別に作れるのに、ひとつのページ内で併記する方法を選ぶケースもあるのですか?
-はい。もうひとつのページは館内専用にしたり、特定の利用者に向けた限定公開ページとしたりすることもありますから。
野口さん:なるほど、柔軟に使えるのですね。では、まずは先ほどの業務まわりの機能を勉強して、もっと使いこなせるように頑張ります。
-操作説明会も含めて、弊社もサポートさせていただきます。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。
- Museum Profile
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三菱一号館美術館
2010年、JR東京駅から徒歩5分の丸の内に開館した美術館。運営は三菱地所株式会社で、印象的な建物は1894年に竣工した英国人建築家ジョサイア・コンドル設計の「三菱一号館」を復元したものです。19世紀後半〜20世紀前半の近代美術をテーマとする企画展と、同館のコレクションを活用した学芸員こだわりの小企画展を年に3回開催。隣接する「一号館広場」とともに、心静かに芸術に親しむ都心のアートスポットとして観光客からも人気を集めています。
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
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