ミュージアムインタビュー

vol.189取材年月:2022年8月嘉麻市立織田廣喜美術館

早期の情報公開というミッションは、おかげさまで成功。
次はいろいろなアイデアに挑戦してみたいです。
学芸員   松尾 梨沙 さん

-I.B.MUSEUM SaaSのご導入から作品情報の公開まで、とても早かったですよね。まずは当時の状況からお聞かせください。

松尾さん:作品情報は、カード型の紙の台帳とExcelでの管理を併用していました。システムの導入時点で作品全点分のデータが整っていましたし、写真も揃っていましたね。カードの裏面には、作品の細部や額装を外した写真を貼ったり。

-管理手法がしっかり確立されていたのですね。データベースシステムへと移行されたきっかけは?

松尾さん:当初は、展示ガイドアプリの『ポケット学芸員』の導入、それにコレクション情報の公開そのものも目的だったと聞いています。

-導入検討の時点では、松尾さんご自身はまだ着任されていなかったのですね。

松尾さん:はい、導入は2020年の秋でしたが、私はその半年ほど前に着任したばかりでしたから。検討と言っても、すんなりI.B.MUSEUM SaaSに決まったようですよ。他館の事例を見ても、とにかく実績が豊富で安心ですしね。

-ありがとうございます。それにしても、すごいタイミングで導入されましたよね。新型コロナウイルスが猛威をふるっていて、各館が休館を余儀なくされた頃ですし。

松尾さん:展覧会を開催できないなら、普段やれないことをやろうという時期でしたね。私はExcelのデータ整備を任せていただきました。

-データベースに移行するための元データですから、情報公開を素早く実現できた立役者ですね。お疲れさまでございます。

松尾さん:自分の作業が役に立ったのであれば嬉しいです。作業はスムーズで、おかげさまでコレクションも全点公開できましたので、休館中の目標は達成できました。

-織田作品は画像もすべて公開されていますね。とても順調なご様子で、素晴らしいです。

 


-並行して、ポケット学芸員での展示ガイドもスタートしましたね。こちらの準備作業はいかがでしたか?

松尾さん:問題ありませんでしたが、強いて言えば公開設定の操作で少し苦戦しました。マニュアルを見ながらトライアンドエラーを繰り返して、何とか漕ぎ着けたという感じで。

-分かりにくかったようで申し訳ございません。そんな時は、ぜひ弊社担当までお気軽にご質問くださいね。サービス開始後の反応はいかがですか?

松尾さん:おかげさまで、ご好評をいただいていますよ。ただ、ご高齢の方などはインストール方法が分かりにくいようで、ダウンロードするところから当館スタッフがお手伝いすることもあります。

-お手数をおかけいたしましてすみません。インストール方法の告知方法については、今後も改善を検討していきますね。さて、外部公開の機能については理想的なご活用ぶりですが、内部の業務利用はいかがでしょうか。

松尾さん:特に展覧会まわりでは利用度が高いと思います。開催情報の登録のほか、出品歴や在庫・入庫の状況をシステムで管理しています。当館では常設展を年2回入れ替えるのですが、そこでは必ず使います。

-展覧会情報であれば、出品作品を選ぶ時にもお使いいただいていますか?

松尾さん:クリップリストですよね。まずは候補をたくさんピックアップして、ドラフトを作って、絞り込んで…とフル活用していますよ。

-言うことナシですね。使いこなしていただいて、弊社としても嬉しい限りです。

 


-さて、日々システムを運用する中で、何かお困りのことなどはございませんか?

松尾さん:毎日が試行錯誤の連続なんですけど、今のところはシステムの運用での困りごとはありません。まだまだ手探りの状態ですので、システムの細かい機能は日々学びながら運用させていただいております。たとえば、展覧会の作品選びでも、若輩の私は予備知識が少ないですから、「この方法でいいのかな」「もっと効率的な方法があるんじゃないかな」と迷いながら取り組んでいます。

-先ほどのクリップリストのお話で「まずたくさんピックアップする」と仰ったのも、そのあたりに理由があるのですね。順調なように見えるのは、見えない部分でのご苦労があってのことですよね。大変失礼しました。

松尾さん:とんでもないです、周囲に助けていただきながら取り組んでいますから、大丈夫です。学芸員は私のほかに教育普及担当がいて、SNSの情報発信なども頑張ってくださっていますし。

-そう言えば、ホームページが新しくなりましたね。とても見やすいと社内でも好評でした。

松尾さん:それは嬉しいです、ありがとうございます。ポケット学芸員の方は、今は画像とテキストだけですので、今後はナレーションも配信できたらと思っているんですよ。

-それはよいですね。ぜひおすすめします。

松尾さん:ほかの館の配信を拝見すると、プロのアナウンサーの方が読んでおられたりしますよね。音質もよいですし、何かノウハウがあるのでしょうか。

-スタジオ収録が一番ですが、コストがかけられない場合は、学芸員がスマートフォンで録音する館が多いですよ。ノイズなどの処理は音声編集系のフリーソフトがありますし、ホールをお持ちの館の方は備え付けのマイクがノイズが入りにくいと仰っていました。

松尾さん:なるほど。皆さん工夫されているんですね。

-最近は各館独自のアイデアがたくさん実現していますよ。もしご興味がおありなら事例をご案内できますし、先行館のご担当をご紹介することもできます。ナレーションに高校生の放送部員を起用する方法もそうして全国に広まりましたから、ご遠慮なくお声掛けください。

松尾さん:ありがとうございます。学校との連携といえば、小学校の先生に来ていただいて作品データベースの使い方を説明したことがあります。子どもたちに作品の検索方法を教えたり。

-理想的な博学連携ですね。I.B.MUSEUM SaaSは公開ページをふたつ運営できますから、ひとつを子どもたち専用に作成しておられる館もありますよ。ほら、こんな感じで…(事例をパソコン画面で映しながら)。

松尾さん:これはいいですね。項目名を平易な言葉に置き換えることもできるんですね。

-その代わり、解説の文章を子ども向けに作り直す必要がありますから、少し手間はかかりますけどね。たくさんの点数を用意するのは難しいと思いますので、数を絞って特集コンテンツのように仕上げる方法もあります。

松尾さん:アイデア次第なんですね。落ち着いたらぜひ取り組んでみたいです。

-ぜひぜひ。その時は、どうぞお気軽にご相談くださいね。本日はお忙しいところありがとうございました。

Museum Profile
嘉麻市立織田廣喜美術館 嘉麻市で生まれ育った洋画家、織田廣喜の作品を常設展示する美術館。館内は企画展示室と4つの常設展示室で構成され、大理石を効果的に活用したインテリアが上質で穏やかな雰囲気を醸し出します。イベントや創作を楽しむ市民アトリエや寛ぎのサロンなど思い思いのミュージアム体験を味わえる空間もあり、資料閲覧室からは芝生に彫刻作品が並ぶ広々とした公園を一望。美しい作品とともに癒しの時を過ごせる人気アートスポットです。

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