ミュージアムインタビュー

vol.205取材年月:2023年5月白根記念渋谷区郷土博物館・文学館

次の世代の学芸員たちがパフォーマンスを発揮できる
環境づくりとして、資料データの拡充を急ぎたいです。
主査 学芸員    粕谷 崇 さん

-I.B.MUSEUM SaaSのご導入は、別のシステムからの入れ替えだったそうですね。もしお差し支えなければ、当時の状況などをお聞かせいただけますか?

粕谷さん:当館は2005年にリニューアルオープンしたのですが、その時に収蔵品データベースを作る話が持ち上がり、いろいろな製品を比較検討したんです。

-その時に、弊社製品は候補に入っていましたか?

粕谷さん:もちろんです。収蔵品管理システムとしては御社の製品の評価が高かったのですが、その時はデータベースだけではなく遊びの要素を加えたいという希望がありましたので、そうした作り込みが得意な業者さんにお願いすることになったんです。

-なるほど。遊びの要素とは、どんな内容ですか?

粕谷さん:クイズやパズルなどですね。採用した製品は、そうした要素が収蔵品管理システムとセットになっていて、都内の博物館でも導入実績をお持ちだったと記憶しています。

-来館者に気軽に楽しんでいただくために、館内端末でエンタテイメント色の強いコンテンツを提供するケースは多いですよね。実際にクイズやパズルは定番で、特に子どもたちから大人気ですし。

粕谷さん:当館でも来館者でもとてもご好評をいただいて、かれこれ10年くらいは使っていました。それが古くなったので、新しいコンテンツに入れ替えようということで、その業者さんにご相談したんです。すると、思いのほか高額になってしまい、これでは予算が通らないと。

-仮にエンタメコンテンツを諦めたとしても、蓄積してこられたデータベースは継続しなければなりませんね。

粕谷さん:そうなんです。そこで、実績のあるデータベースシステムを探し始めたら、すぐに御社のクラウドシステムに行き着きました。予算面も問題ありませんでしたし、導入後はデータ移行も順調に進んだのですが、やはりクイズやパズルは廃止となりました。

-それは残念ですね。大事にお使いだったコンテンツでしたのに、申し訳ございません。汎用的なクラウドサービスということで、エンタメ的な機能は付加していなくて…。

粕谷さん:とんでもないです。こちらの事情ですので。

-でも、今ならさまざまな補助財源のメニューがありますから、うまく活用すればデータベースと連携させる形で復活できるかもしれません。

粕谷さん:そうなんですね。当館も、区の直営から財団の運営に代わって予算面での柔軟性は高まりましたので、以前よりは取り組みやすくなりました。

-渋谷区の歴史と文化に関するクイズやパズルでしたら、区内のさまざまな施設に設置されてもおかしくないですよね。I.B.MUSEUM SaaSの登録データも活用できますので、もしご検討の際にはぜひご相談くださいね。

 


-さて、現在の来館者向けの端末では、資料の検索ページが設けられていますね。

粕谷さん:はい、I.B.MUSEUM SaaSのふたつ目の検索ページを使っています。その件でひとつ質問があるのですが、よろしいですか?

-もちろんです。どんなことでしょう?

粕谷さん:端末では地図も表示できるのですが、拡大した時にぼやけてしまって。もう少し解像度の高い画像を公開できるとよいのですが。

-改めて高解像度画像をご登録いただくと、きれいな画像になります。高精細な画像の登録・表示は比較的最近実装された機能でして。お手数をおかけいたします。

粕谷さん:そうなんですか。では、後で詳しく教えていただけますか?

-かしこまりました。ご導入時に間に合わず、申し訳ございません。

粕谷さん:いえいえ。画像と言えばインターネット公開も始めているのですが、それ以前に登録データがまだ十分とは言えないので、後進のことを考えて思い切った見直しを行おうかと考えています。

-それは大事業ですね。どんなデータが不十分なのですか?

粕谷さん:基本情報は問題ないのですが、特に収蔵場所の情報がまだまだですね。学芸員はそれぞれに自分の記憶を頼りに動きますし、その方が正確だったりすることもあって。

-他館でもよくうかがいます。何かご事情がおありなのですか?

粕谷さん:以前は資料の一部を学校の空き教室などに保管していたのですが、新たな用途が決まったということで、資料を大移動したことがあるんです。その時、収蔵場所のデータの修正も行ったのですが、作業が追い付かなかったんです。

-あー、なるほど。そうなると、現地で実物をチェックしながらデータを修正することになりますね。気が遠くなる作業ですよね…。

粕谷さん:そうなんですよね。でも、次の世代の学芸員が迷わない環境を作るために、5年くらいを目処にやり遂げたいと考えています。

-もしも来年度に開始されるのでしたら、I.B.MUSEUM SaaSのリニューアルでスマートフォンやタブレットでの使い勝手が改善されますので、収蔵庫での作業にお役に立てると思います。ほかにいま見えている課題などはありますか?

粕谷さん:インターネットで公開するデータの拡充ですね。ホームページはさまざまなジャンルの資料情報の活用を想定して作ってありますので、ぜひ実現したいです。

-ホームページはデザインがとてもモダンでキレイですよね。あのページから多様な資料データを閲覧できるようになると、若い方々にも情報が届くのではないかと思います。

粕谷さん:まさにそれを目指しているんですよ。とは言え、少人数で業務にあたっていますので、なかなか思うように進まなくて。まずは公開できるだけのデータを整える時間の確保が課題となります。

-実施予定のリニューアルでは、作業の効率化が大きなテーマですので、きっとお役に立つと思います。

 


-最近はまた観光客が増えましたが、ポケット学芸員のご利用はいかがでしょうか。

粕谷さん:はい、ぜひ利用したいと思っています。すでに外国人観光客向けのサービスにはI.B.MUSEUM SaaSの機能を利用しているんですよ。

-どんな機能をご利用ですか?

粕谷さん:区内の文化財に掲出している説明板があるのですが、そこから英語の解説ページに誘導しているんです。説明板のQRコードから解説を英訳したページに…ほら、こんな感じで(スマホを見ながら)。

-なるほど、これなら予算もかからず、段階的に増やしていくこともできますよね。

粕谷さん:現状では30点ほどあって、お陰様で好評のようですので、今年もいくつか増やす予定なんですよ。

-それは素晴らしいですね。手軽なのにとても効果的なシステム活用法ですので、他館にもご紹介したいと思います。実際に体験したいので現場に行きたいのですが、この近くに説明板はありますか?

粕谷さん:ここから渋谷駅に向かう途中に、金王八幡宮という神社があります。その門の左にQRコードを貼った説明板がありますので、ぜひお立ち寄りください。

-とてもよいことをうかがいました、さっそく帰りに試してみます。本日はご多忙な中、本当にありがとうございました。

Museum Profile
白根記念渋谷区郷土博物館・文学館 旧渋谷区立白根記念郷土文化館を改修し、2005年に開館。世界的な流行発信地となった渋谷の足跡を通史的に紐解く展示が楽しめます。昭和初期の渋谷駅前や、ナウマン象の化石が発掘された地下鉄工事などの再現模型から、主に江戸時代の文献から集めた驚きのエピソードの数々まで、知らなかった姿がズラリ。旧白根邸の面影を残す空間でゆかりの作家・作品を紹介する文学館も併設され、満ち足りた気分で渋谷を学べる都会のオアシスです。

〒150-0011
渋谷区東4-9-1
ホームページ:https://shibuya-muse.jp/